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鍛練篇

第15話・優しい人

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歴坊がこの”偉人世界”に来て約一ヶ月。歴坊は成長し、”偉能力”を持つことになった。歴坊の”偉能力”は坂本龍馬以外にも繋がる可能性を示していた。
またその”偉能力”は元々”異能力”として偉人の間で知られていたが、歴坊の影響からか書類等には”異能力”ではなく”偉能力”と明記する事になった。
「僕がこの世界に影響を与えている……」

歴坊が元々いた世界と”偉人世界”とは全く別の結末があった。
また、歴坊が元々いた世界の事を無闇に”偉人世界”の住人に教えてはいけなかった。知られば、この”偉人世界”が無くなってしまうからだ。
「まだやるべき事が山積み……」
歴坊が考え事をしながら歩いていると、一人の少女にぶつかってしまった。

「すいません!大丈夫ですか?」
歴坊は少女に向けて話しかけた。
「……いえ、大丈夫です。」
少女の声に何故か懐かしさを感じた。少女はさっさとこの場を離れていった。
「一体、あの子は?」

 

「歴坊君!随分遅かったじゃないの。」
「すいません。道に迷ってしまって。」
歴坊とヤマトタケルは待ち合わせをしていて、今丁度待ち合わせ場所の時計台まで来ていた。
「久しぶりだね。なんかこう、凛々しくなったね。」
「いえ、そんな事ありません。」
歴坊とタケルは一ヶ月と一日ぶりの再開となった。
「体は大丈夫かい?」
「はい。ゲールちゃんの”看護覚え書”(マスターヒール)で体を治癒して貰ったんで。」
「そうか。でもあまり無理しないでね。今から仕事なんだから。」



「ここが奴らが住処にしている所らしい。」
歴坊とタケルは街外れの地下洞窟の入口にいた。二人は武器の密売の噂を聞きつけ、情報を元にこの場所まで来ていた。
「準備はいいね?」
「はい。」
二人は慎重に地下洞窟の中に入っていた。

中は暗い通路が続いていた。
「人の気配がしませんね。」
「奥まで進もう。」
二人は変に拓けた場所まで来ていた。すると、タケルは気づいた。
「小さなトンネル?」
気づいたと同時に子供達が小さなトンネルから出てきた。しかも銃や刀を持っていた。
「子供たち……しかも武器を持っている。」
「……ここのボスの指示か。神経腐ってる。」
子供達は震えている子、無表情の子と二つのタイプに分かれていた。と、タケルは腰につけていた剣を手に取った。錆てる様に緑がかった剣だ。
「タケルさん?子供たち相手に剣は不味いですよ!」
「大丈夫。”偉能力”使うから。

「”日本武尊・草薙の剣”!!」
タケルの声に反応して剣は奇妙に光る。
「”蛇助!!」
すると剣は蛇に変わった。
「蛇!?なんで蛇!?」
「蛇は嫌いかい?歴坊君。」
歴坊とタケルが話していると、子供達が叫びながら、武器を使おうとすると、タケルは動いた。
「”蛇助・殺意喰!!」
蛇は銃を持つ子供の頭を喰らいつくと、頭を貫通し、順々に子供達の頭を喰らいつき、頭を貫通して、タケルの元に戻った。

「タケルさん!!何やってるんですか!!流石に殺してはいけませんよ!!」
歴坊はタケルを責めたが、タケルは安堵の笑みを浮かべた。
「殺してはいないよ。血が一滴も出てないでしょ。」
タケルの言う通り血が一滴も出てない。が、歴坊はまだ不安顔だ。
「安心してよ。”蛇助・殺意喰”は対象の人物の殺意をこの蛇、蛇助が食べてくれる技だよ。今はこうして気を失ってるだけ。」
 


二人は歩く。更に奥へ。子供達は電話でナイチンゲールに任せる事にした。
「臭くないですか?」
「確かにね。こんな所長くいたら、神経イカれそうだよ。」
ドブネズミの死体、タバコや食べ物のゴミなどが通路や横の水路に散乱していた。
「もう、神経イカれた奴がここに一人おるぜぇ。」
二人の目の前にはガタイの良い男が現れた。

「お前さんがボスか?」
「ボス~?俺、こう見えてここの幹部やってマース!」
男は目が定まっておらず、口元は血で汚れていた。
「やりますかーい?」
「歴坊君。悪いけど、ここも僕一人でやってみるよ、見てて。」
タケルは再び腰につけていた剣を手に取った。
「武器使うデス~?俺は素手で充分デース!」

「”日本武尊・草薙の剣”」
再びタケルの声に反応して剣は奇妙に光った。
「”蛇助・殺意喰”!!」
タケルはすぐさま、剣を蛇に変えて男に向けて放つ。
「遅いデース!」
男は軽く避けて、距離を詰めた。すると咄嗟にタケルは距離を取る。
「”蛇夫・蛇睨み”!!」
蛇が別の蛇に変わり、男を睨みつけた。
「動けないデース!?何やったお前?」
今度はタケルが徐々に男との距離を詰めていく。
「蛇睨みも知らないのか?蛇に睨まれたら体が動けなくなる。」
「お前の望聞いてヤール!だから、止めろ!」
「ボスは何処だ?」
「奥にいるデース!だから……」
タケルは笑みを浮かべた。

「”蛇美・石化……少し五月蝿いから静かに。」
蛇がまた別の蛇に変わった。男の体は手足から徐々に石化し始めた。
「おい、何やるデース!?ちょ、ちょっと待つデース!」
「本当は殺したいけど、今は石化しておいて、いざと言う時に石化を解除してあげるよ。本当は殺したいけど。」
その言葉と裏腹にタケルは笑みを浮かべていた。やがて男は完全に全身石化してしまった。

「あの……タケルさん……」
歴坊は震えていた。
「大丈夫なんですよね?僕……タケルさんは良い人だと。信じてますから。」
「僕が怖いかい?」
タケルは歴坊に質問する。歴坊は未だに震えている。
「誰だって裏表あると思うし、優しい人なんて本当はいないのかもしれないね……」
その後、二人での会話は途絶えた。



奥に進むが、二人での会話は無い。
「きゃあぁぁぁ!!」
急に少女らしき悲鳴が二人の耳に届いた。
「悲鳴!?助けないと!!」
二人は急いで悲鳴が聞こえた場所に向かった。二人の目の前に大きな扉が現れた。二人は大きな扉を押し、扉を開けた。すると神殿のような造りの部屋が現れ、部屋の中心に少女、沢山の男共がいた。
「滅茶苦茶盛り上がってる……」
タケルは静かに様子を見ていた。横をチラッと見ると、横にいたはずの歴坊がいなかった。
「歴坊君!?どこに?……えっ!?」
歴坊は既に部屋の中に入り、そして、

「その少女を解放しろ!!」
歴坊のその一言に盛り上がっていた男共は一斉に歴坊の方へ振り向いた。
「誰だおめぇ!!」
「部外者だ!!」
「子供だろうが殺せ!!」
男共は各々の武器を取り出し、歴坊に向けて武器を使おうとした。
「止めろ!!ゴミ共!!」
その一言に男共の動きが止まった。すると奥の隠し通路より、一人の大男が現れた。
「儂がここのボスだ。」

その男は体がムキムキだが、白髪頭、髭もぼおぼおで真っ白の年寄りだった。
「儂の名は豊臣秀吉。お前達に頼みがある。」
そう秀吉が歴坊、後ろで様子を見ていたタケルに話した。


~おまけギャラリー~

雑ですが、今回初公開したヤマトタケルの偉能力のまとめです。
今後も蛇は増える予定です。
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