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刹那高校二年夏休み編・後編

第32話・束の間の一時

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東城風とうじょうふうは、炎天下の中、数学部の活動の為、登校していた。今日は珍しく算学数さんがくすうより先に来ていた。風は算学を見返す為先に数学の問題を取り組み始めた。今日は特別で態々本屋で難問の数学問題を用意して来た。難問の為、中々風の手は動かず苦戦している中、声を掛けられた。

「中々ハードな物に挑戦してんな」
風は顔を上げると、何時も以上に髪の毛がボソボソの算学がいた。それに加えて今日は眼鏡をかけていた。そして算学は座るとカミングアウトした。  
「俺、弟を殺してないからな」
「そうなんだ…… えっ!!」
風は驚きの余りその場に立ち上がり、ペンや消しゴムが飛び散り、教室の奥まで転がっていった。
「本気にしてたのか。まぁ、警察呼ばずに済んだのは幸いだったか」
風はいつの間にか涙を流しながらも笑っていた。そんな風の様子を見た算学の頭の上にははてなマークが浮かんでいた。



「俺は風の事…… 友達だと思ってる」
それが算学の答えだった。それに納得したのか、瑠璃は公園を出て別れ際に言った。
「だったら後で文句言うなよ。俺が風に告るかんな」
算学は嘘をついた。風の事を友達と思っている事。弟を殺したという事。
「嘘ついて逃げてるだけなのかな。こんなやり方はだったかな」
ふと算学は公園にラムネタブレットの様な物を落ちていたのに気づくと強く足で踏みつけた。



この日の数学部も活動終了となり、二人は帰る準備をしていた。ここで風は一つ提案を算学に持ちかけた。
「ねぇ、夏祭り一緒に行かない?」
その夏祭りというのは、風達が住む町のそこそこ古くからやっている夏祭りで、毎年夏休みの終わり頃開催する夏の風物詩となっており、海岸沿いに打ち上がる花火で人気を集めていた。
「二人でか?」
算学は息を呑んだ。
「えっ? いいの?」
「えっ? いいの?」
「オウム返ししないでよ。 ダメなら瑠璃とか……」
「分かった! 俺達二人っきりで行こう!」
算学は豊海瑠璃とようみるりに対して敏感になっていて、風が言い終える前に算学が声を大きくして言った。



「やっぱり恥ずいよ……」
算学は家に帰り、後悔していた。数学部という面目ならば二人っきりの状態を維持出来るが、それ以外で二人っきりとなると気持ちが耐えられるか算学は不安になっていた。夏祭りは後五日で数学部の活動も間にある為、その日の数学部の活動さえも不安になってきていた。



「成程ね。……算学数。そいつを使えば豊海瑠璃と東城風を離す事が出来ると」
一人悪巧みを企む者がいた。
「でもそれじゃあ、東城風を不幸に出来るんですか?」
その協力者は少し不安を首謀者に聞いた。
「確かにそうね。算数数に捨てられる必要があると。……策は後で考える事にしましょう」



「俺は風といたい。でも、俺は人殺しの子かもしれない……一緒にいるとアイツまで巻き込んでしまう。でも、豊海の野郎に取られてしまう。取られてしまう。取られてしまう」
算学の肩に手が振れる者がいると思い、算学はその方へ振り向いた。そこには算学が知っている、宿命のある者がいた。
「お久しぶりね数君」

「何でお前がいるんだ!! お前は……お前は……」
算学は息が荒くなる。過去の出来事が連続して頭の中でかき巡った。いつの間にか隣には彼女がいた。
「お前って酷いよぉ。昔みたいにミルって呼んで?」
「誰……だ……誰が呼ぶか! お前は俺を……俺を……」
さらに彼女は算学に近づく。
「俺を? どうしたの? 続き教えてぇ?」
彼女は算学の鼻をつつき、頬をつつき、腹パンを決めた。算学は腹を抱えて地面にくるまり、体が震えていた。
「続きは今度ねぇ。その前に彼女さんにお仕置しないとねぇ」
算学は声を振り絞った。
「アイツに手を出すな。からのお願いだ」
彼女は笑い、舌打ちをした。
「あいよ~」
彼女八乙女胡桃やおとめくるみはメモを算学に向けて投げ飛ばした。そのメモには胡桃の連絡先と住所、女の子の心臓にナイフの様な物が刺さった絵が描かれていた。



この日の数学部には腹ばっかりゆすっている算学と何処か上の空の風がいた。その影響からかほぼ数学の問題に手をつけない状態だった。
「夏祭りや~夏祭りやな~」
風は今頭の中では既に夏祭りに行っており、算学が隣にいて手を繋いで片手にりんご飴や、頭にはお面を付けている風と、少し照れ臭そうにしていて風とお揃いのお面を付けている算学がいた。
「そうそう。次はあっち~ そう、あっち~」
ふと風の脳に衝撃が走った。算学が算学のノートで風の頭を叩いたのだ。
「最近主人公なのにキャラ薄くね? 一学期結構アホだったのに、頭良くなってね? だからここでキャラ調整致しましょうタイムに走るな」
「どんなタイムよ! 主人公ははしゃいだらいけないルール誰が決めたのよ! 隣のおばちゃん? どっかの市長? 今日仕事行こうと思ったけどやっぱり止めて近くのコンビニに寄ってマンガを立ち読みして時間を潰す五十半ばのおじさん?」

「何面白い話してんの?」
風と算学が数学部の活動とはズレて口論をしている中、教室内に瑠璃とちょっと困り顔の西尾染杏にしおそあんが入ってきた。
「えっ!? 何で2人来てんの!?」
すると風の頬を瑠璃が突っついた。
「主人公はわざとオーバーリアクションしないといけないから大変だな……」
「そんなんじゃなくて、何で二人が私達が此処で何かしてるって知ってるの?」
瑠璃と染杏はお互いを見つめあった後、瑠璃が声高々に暴露した。
「跡をつけてきました! 裁判長!」
風の顔は真顔になり、瑠璃の肩を叩くとこっちに来るよう促して、教室を出た。

「ちゃんと説明しなさいよ! 遊びに来てるんじゃないからね! 」
風の説明を受けて瑠璃の頭の上にはてなマークが浮かび上がった。
「遊びじゃないの? 楽しそうに盛り上がってたけど……態々制服を着て大量にハンバーガー買ってきたのに……」
瑠璃は廊下に座り込み、風が思った以上にガッカリしてしまい、ハンバーガーを一人で貪り出した。
「分かった分かった。今日だけ遊びの時間にするから」
すると瑠璃は立ち上がり、大量のハンバーガーを持って教室の中へと入っていった。
「たまにはこんなにふざけていいでしょ」
瑠璃はカメラ目線?に、ウインクを決めた。

そんな瑠璃と風の様子を担任の教師鳴子遠なることおいが見ていた。
「いっちょ、働きますか」
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