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刹那高校二年夏休み編・後編
第25話・あの日
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「三毛に聞かれた!?」
算学数は、驚いた。算学の弟である算学計が亡くなっていて、母が計を殺した事、自分が人殺しの息子だという事を東城風の一番の親友である三毛弥生に聞かれたからだ。
「ねぇ、この子って、人殺しの息子さんの友達?」
鳴子麻耶が弥生の事を見ながら、算学の方を振り替えず質問した。算学は息を呑んで答えた。
「いや、知らない奴だ」
算学は咄嗟に嘘をついた。何故なら他の人を巻き込みたくなかったからだ。もっと正しく言うと風が一番心を許す弥生を巻き込んだら風にまで影響が出てきて、風と二度と出会えないと思ったからだ。
「そう……失礼するわね。後、くれぐれも広めないでね。秘密ね。そう、ヒ・ミ・ツ」
そう言うと麻耶は墓地を後にした。弥生は麻耶が見えなくなるまでずっと麻耶を見ていた。麻耶が見えなくなると一息つき、算学に目線を移した。
「説明してくれる?」
計の墓石の前にて算学は語り始めた。
「この墓は計、俺の弟の物だ。弟は殺された。……多分」
「多分? どういう事? ……まさか、アンタと直接話すのがこれが初めてなんてね」
算学と弥生はこれまで話した事が無かった。キャンプ場でも話す機会はあったものの、キャンプ場にて風が算学に思いを寄せている事を自白した事もあり、話しづらい関係性になっていた。
「俺が家に帰ってきた時、計は倒れていた。いっつも元気だったあの計が。血を流して。何度も何度も呼び掛けても返事は返って来なかった。母さんがその場にいなかった。それ以降母さんが家に返って来なかった。警察が来て俺を家から追い出した。沢山の警察が家に来て調べ始めた。後日、母が殺人の容疑で逮捕された事を警察から知った。耳を疑った。あんなに優しい母が。人を殺したなんて。我が子を、計を殺したなんて」
算学は泣きそうになるが、涙をぐっと堪えた。
「ごめんね。でも、知りたくってさ、算学の事。過去の事」
弥生も思わず泣きそうになるが、同じく涙を堪えた。
「いや、お前はアイツの友達だから。……本当に母さんなのか。それとも別の犯人がいるのか。俺は知りたい」
算学の言葉を受けて、弥生は手を算学に向けて手を伸ばした。
「私なんかで良ければ協力させてよ。別に警察でも何でもないけど。それに……」
「それに?」
「……風の事よろしく頼むよ」
風は祖母の家を訪れていて、夕食を終えて再び女子トークタイムとなっていた。今度は風、風の妹東城柚、風の祖母隈江美奈子に加えて今度は風の母である東城翔子も混じって始まった。そこでまず口を開いたのは美奈子だった。
「せっかくだし、翔子と小正さんの昔の話をしようかね」
「お母さん恥ずかしい。風と柚も興味無いでしょ?」
翔子は風と柚の方を見るが、翔子の思いも虚しく
「お願いします! おばあちゃん!」
風と柚は声揃って翔子と小正の昔の話を聞きたいらしく、賛同した。
「翔子が高校二年の時、小正さんと出会ったのね」
「高校二年生!? お姉ちゃんと同い年じゃん!」
柚が興奮しているが、風は冷静に考えて今のお母さんの年齢は三十五、お母さんが高校三年生の歳で自分を産んでいる計算になる為、この歳で出会ってるのは可笑しくないと思った。むしろ、それよりも前に出会っても可笑しくないと思った。然し、高校生で自分を産んでいる事は前々から気になっていた。
「あれ? パパ何歳だっけ?」
柚が小正の年齢が分からずにいると翔子が答えた。
「四十八よ。私と出会った時は三十よ」
その返答に柚が驚いて立ち上がった。
「おじさんじゃん! 凄いよママ。おじさんに恋しんたんだよ!」
その柚の反応に皆一斉に笑った。
「まぁそうね。おじさんだね。でも世の中分からないものよね。実は翔子からなんだよね」
美奈子が翔子の方に目線をやると翔子は顔を赤くして、しばらく頭をあげられなかった。
「お母さんからお父さんにアタックしたんだぁ。まさかと思うけど一目惚れ?」
風が美奈子に質問するが、美奈子は首を横に振った。
「小正さんの今の仕事何だか分かる?」
意外な美奈子の質問に直ぐに風は答えられなかったが、柚が元気よく答えた。
「絵を描く仕事!」
今度は美奈子は首を縦に振った。
「そうね。イラストレーターね。その当時売れないイラストレーターで小正さんのお父さんやお母さんからも呆れられた始末だったの」
今はそこそこ仕事の依頼が小正にきて、小正の部屋は仕事部屋と化して誰も部屋には入れない様にしていた。小正がいない間も部屋の鍵が閉まっている程徹底的に仕事に対して熱を帯びていた。
「そんな中、翔子が下校中に一枚の紙が道に落ちていた事に気づいたの。紙を拾って見てみたら翔子は衝撃が走ったらしいのよ。今まで見た事ない絵で芸術的な絵だったらしいのよ」
「そうね……実は家にあるのよ。私の部屋に飾ってある」
翔子の反応に柚は目を輝かせた。
「嘘!? 見せて! 見せて!」
「話聞いてた? 家にあるの。母さんの部屋にあるの」
風の冷静のツッコミに柚はため息をすると、少しいじけてしまった。
「いじけてる子には話の続きは聞かせられないねぇ」
美奈子のナイスな言葉に、風は心の中でグッドポーズをした。翔子の方を見ると翔子はグッドポーズをしていた。
「分かった分かった。いじけを止める。気持ちのリセット完了であります!」
ここで風がツッコミを入れず、話を続けるよう促した。
「はいはい。えっと……どこまで話したっけ?」
「私が紙を拾って衝撃が走った所。って、私がここで言うと恥ずかしい……」
またしても翔子は顔を赤くした。美奈子は咳払いをすると話の続きを話し始めた。
「気になった翔子は絵を描いた本人を探る事にしたの。簡単にはいかなかった。けれどその日、日が暮れそうな時に出会ったの。小正さんは探してたの。翔子が持っている絵を。そして、翔子は自信を出して小正さんに話し掛けた」
翔子は話し掛けた。小正に。日が沈み続ける中、大声で。
「あのぉ! これ、貴方の作品ですか?」
その時、風が吹き翔子が持っていた紙は吹き飛ばされてしまった。
算学数は、驚いた。算学の弟である算学計が亡くなっていて、母が計を殺した事、自分が人殺しの息子だという事を東城風の一番の親友である三毛弥生に聞かれたからだ。
「ねぇ、この子って、人殺しの息子さんの友達?」
鳴子麻耶が弥生の事を見ながら、算学の方を振り替えず質問した。算学は息を呑んで答えた。
「いや、知らない奴だ」
算学は咄嗟に嘘をついた。何故なら他の人を巻き込みたくなかったからだ。もっと正しく言うと風が一番心を許す弥生を巻き込んだら風にまで影響が出てきて、風と二度と出会えないと思ったからだ。
「そう……失礼するわね。後、くれぐれも広めないでね。秘密ね。そう、ヒ・ミ・ツ」
そう言うと麻耶は墓地を後にした。弥生は麻耶が見えなくなるまでずっと麻耶を見ていた。麻耶が見えなくなると一息つき、算学に目線を移した。
「説明してくれる?」
計の墓石の前にて算学は語り始めた。
「この墓は計、俺の弟の物だ。弟は殺された。……多分」
「多分? どういう事? ……まさか、アンタと直接話すのがこれが初めてなんてね」
算学と弥生はこれまで話した事が無かった。キャンプ場でも話す機会はあったものの、キャンプ場にて風が算学に思いを寄せている事を自白した事もあり、話しづらい関係性になっていた。
「俺が家に帰ってきた時、計は倒れていた。いっつも元気だったあの計が。血を流して。何度も何度も呼び掛けても返事は返って来なかった。母さんがその場にいなかった。それ以降母さんが家に返って来なかった。警察が来て俺を家から追い出した。沢山の警察が家に来て調べ始めた。後日、母が殺人の容疑で逮捕された事を警察から知った。耳を疑った。あんなに優しい母が。人を殺したなんて。我が子を、計を殺したなんて」
算学は泣きそうになるが、涙をぐっと堪えた。
「ごめんね。でも、知りたくってさ、算学の事。過去の事」
弥生も思わず泣きそうになるが、同じく涙を堪えた。
「いや、お前はアイツの友達だから。……本当に母さんなのか。それとも別の犯人がいるのか。俺は知りたい」
算学の言葉を受けて、弥生は手を算学に向けて手を伸ばした。
「私なんかで良ければ協力させてよ。別に警察でも何でもないけど。それに……」
「それに?」
「……風の事よろしく頼むよ」
風は祖母の家を訪れていて、夕食を終えて再び女子トークタイムとなっていた。今度は風、風の妹東城柚、風の祖母隈江美奈子に加えて今度は風の母である東城翔子も混じって始まった。そこでまず口を開いたのは美奈子だった。
「せっかくだし、翔子と小正さんの昔の話をしようかね」
「お母さん恥ずかしい。風と柚も興味無いでしょ?」
翔子は風と柚の方を見るが、翔子の思いも虚しく
「お願いします! おばあちゃん!」
風と柚は声揃って翔子と小正の昔の話を聞きたいらしく、賛同した。
「翔子が高校二年の時、小正さんと出会ったのね」
「高校二年生!? お姉ちゃんと同い年じゃん!」
柚が興奮しているが、風は冷静に考えて今のお母さんの年齢は三十五、お母さんが高校三年生の歳で自分を産んでいる計算になる為、この歳で出会ってるのは可笑しくないと思った。むしろ、それよりも前に出会っても可笑しくないと思った。然し、高校生で自分を産んでいる事は前々から気になっていた。
「あれ? パパ何歳だっけ?」
柚が小正の年齢が分からずにいると翔子が答えた。
「四十八よ。私と出会った時は三十よ」
その返答に柚が驚いて立ち上がった。
「おじさんじゃん! 凄いよママ。おじさんに恋しんたんだよ!」
その柚の反応に皆一斉に笑った。
「まぁそうね。おじさんだね。でも世の中分からないものよね。実は翔子からなんだよね」
美奈子が翔子の方に目線をやると翔子は顔を赤くして、しばらく頭をあげられなかった。
「お母さんからお父さんにアタックしたんだぁ。まさかと思うけど一目惚れ?」
風が美奈子に質問するが、美奈子は首を横に振った。
「小正さんの今の仕事何だか分かる?」
意外な美奈子の質問に直ぐに風は答えられなかったが、柚が元気よく答えた。
「絵を描く仕事!」
今度は美奈子は首を縦に振った。
「そうね。イラストレーターね。その当時売れないイラストレーターで小正さんのお父さんやお母さんからも呆れられた始末だったの」
今はそこそこ仕事の依頼が小正にきて、小正の部屋は仕事部屋と化して誰も部屋には入れない様にしていた。小正がいない間も部屋の鍵が閉まっている程徹底的に仕事に対して熱を帯びていた。
「そんな中、翔子が下校中に一枚の紙が道に落ちていた事に気づいたの。紙を拾って見てみたら翔子は衝撃が走ったらしいのよ。今まで見た事ない絵で芸術的な絵だったらしいのよ」
「そうね……実は家にあるのよ。私の部屋に飾ってある」
翔子の反応に柚は目を輝かせた。
「嘘!? 見せて! 見せて!」
「話聞いてた? 家にあるの。母さんの部屋にあるの」
風の冷静のツッコミに柚はため息をすると、少しいじけてしまった。
「いじけてる子には話の続きは聞かせられないねぇ」
美奈子のナイスな言葉に、風は心の中でグッドポーズをした。翔子の方を見ると翔子はグッドポーズをしていた。
「分かった分かった。いじけを止める。気持ちのリセット完了であります!」
ここで風がツッコミを入れず、話を続けるよう促した。
「はいはい。えっと……どこまで話したっけ?」
「私が紙を拾って衝撃が走った所。って、私がここで言うと恥ずかしい……」
またしても翔子は顔を赤くした。美奈子は咳払いをすると話の続きを話し始めた。
「気になった翔子は絵を描いた本人を探る事にしたの。簡単にはいかなかった。けれどその日、日が暮れそうな時に出会ったの。小正さんは探してたの。翔子が持っている絵を。そして、翔子は自信を出して小正さんに話し掛けた」
翔子は話し掛けた。小正に。日が沈み続ける中、大声で。
「あのぉ! これ、貴方の作品ですか?」
その時、風が吹き翔子が持っていた紙は吹き飛ばされてしまった。
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