雪のち晴

トモヒロ69

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第2章 雨のち晴

第1話 雨のち晴れ

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 この話は、雪と晴が出会う少し前の話。十六夜いざよい雨が晴と仲良くなるきっかけとなった話である。

■ ■ ■

 窓の外をふと見ると、小雨がぱらついている。

「じゃあ、この問題を十六夜君」

 俺、十六夜雨は相変わらず退屈な授業を聞いていた。死神にも人間と同じ、学校のような物がある。

「分かりません」

 特に数学に関しては、1番嫌いだ。ほとんどが大人になったら絶対に使わないような公式を覚えなければならない。

「えーじゃあ赤鳥さん」

 隣の席の赤鳥晴。不良が多く行くような内の学校では珍しく、超真面目ちゃんだ。

 因みに俺もどちらかと言えば不良寄りだ。

「√21」

「はい、正解です」

 このように、絶対間違えない。赤鳥が間違えたらその日は槍が降る。そう言われるくらいすごい。

 ただ、それには問題もある。

■ ■ ■

 放課後になり、昼に降っていた小雨は大雨となっていた。真面目な人などいないので、ほとんどの人が家に帰るか寄り道する。俺も帰ろうとしていた時、教室でいつもの事件は起こる。

「よう、赤鳥。相変わらず友達ダチもいねぇし、一匹狼ってやつ?」

 クラスの中心人物の男とその取り巻きが赤鳥に絡む。

「私はあなた達みたいに、バカじゃないもの。友達なんかいらないわ」

 この発言が男達の逆鱗に触れる。

「そりゃあ、どういうことだよ」

 男は赤鳥の胸ぐらを掴み、顔を殴る。

 結局、男達は気が済むまで赤鳥を殴り続け、それを隠れたところで見る。これが普通なのだ。そのくらいこの学校は終わっている。それがある意味俺の日常だった。

「無視してたらいいのにな」

 男達が帰った後、赤鳥に初めて声をかけた。普段は絶対に喋らないものの、その日は何か話してみたい気分だった。

「それを言えるのは助けてくれた人だけよ」

 確かに正論だ。

「けどさ、痛くないの?」

 あれだけ殴られたら、普通はトラウマレベルなのだが、

「痛いよ。ていうかさ、見てたんなら助けてよ」

「…悪いけど、俺はそんなお人好しじゃねぇよ」

 結局、俺も見ていただけなので、男達と同罪だ。

「君さ、そんなんだから友達できないんだよ」

 確かに自覚はあるが、こいつだけには言われたくない。

「ていうかさ、お前めっちゃ頭いいのになんでこの学校に来てんだ?」

 先生は10年に1人の逸材とか言っていたのを聞いたことがある。不良の学校で教えている教師なので、あまり説得力がないが…

「さぁね、そろそろ帰る」

 赤鳥はそのまま鞄を持って家に帰ってしまった。

 その時、外は雨が止み、雲の隙間から微かな明るい光が出ていた。
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