12 / 14
第1章 雪のち晴
第12話 雪のち晴
しおりを挟む
「結論から言おう。雪君は晴と会うことは出来ない」
十六夜はいつものふざけたテンションとは正反対な真剣な顔で言う。
「それは、どういう…」
「晴が戻ってこれない理由は、晴が死神のルールを破ったからだ」
死神が人間に接触した場合、1ヶ月以内にその人間を殺さなければならない、ということは知っていた。
十六夜によると、死神はその殺した人の寿命をもらって、生きていくらしいのだ。十六夜に関しては、上の人に許可を取って、僕と長くいたらしいのだ。
「だけど、晴は少し事情が違った。晴は人を殺せない死神だった」
晴ちゃんは、人を殺せないために、人間の世界に足を踏み入れることは禁止されていた。だが、接触しないという条件で人間の世界に入らせてもらったのだ。
「けど、どうしてそこまで…」
「晴は、下界からいろんな人を見ていたんだ。そこで、雪君を見つけた。事情を知った晴は何とかしたいって思って、わざわざルールを破った」
これを聞いた途端、堪えきれなくなった。しばらくして、
「晴は言ってたよ。頑張って、長生きしてほしいって」
そうか。僕はこんな優しい死神に巡り会えたのか。
「………十六夜。僕を殺してくれ」
だけど、晴ちゃんのお願いは聞いてあげれそうにない。十六夜は一瞬驚いた顔をしていた。
「いいのか?」
いいんだ。もう十分幸せになれた。半年前の死刑囚から比べれば本当にすごいことだ。
悔いはいっぱいある。もう少し早く知っていれば、晴ちゃんともっと遊んでただろう。
ルールを破ってまでした晴ちゃんには申し訳ないけど、本当にもう十分だ。今は最高に幸せだ。この幸せの中で今死ねたら、多分僕は永遠に幸せだと思う。
「僕にとって、晴ちゃんがいない世界以上に不幸なことはないよ」
「そうか…」
十六夜は鎌を取り出す。僕は床に座っている。目を瞑った時に、
「雪君!」
玄関を見ると、晴ちゃんが息を切らして立っている。
「晴ちゃん!」
僕は晴ちゃんの方に近づき、抱擁する。
「どうして…?」
僕は涙声になりながら聞く。
「下界で見てたの。そしたら雪君、死のうするんだもん。無理やり出てきちゃった」
「怒られちゃうよ?」
「いいよ。それに今行かなかったら絶対に後悔してたから」
僕は嗚咽を吐く。晴ちゃんも号泣だった。
「私ね、今お父さんの力借りてて、人を殺せるの」
それは、つまり…
「私に殺させて」
もちろん。大歓迎だ。
僕は晴ちゃんの方を見ながら座っている。晴ちゃんは鎌を持って立っている。僕達の目には涙が溜まっている。
「生まれ変わったらって言っていい?」
晴ちゃんに聞く。
「ふふ。いいよ」
晴ちゃんは笑いながら返してくれる。
「生まれ変わったら、次は絶対に一緒にいようね!次は人間として!」
「うん!」
晴ちゃんは涙を浮かべて満面の笑みで微笑んだ。
十六夜はいつものふざけたテンションとは正反対な真剣な顔で言う。
「それは、どういう…」
「晴が戻ってこれない理由は、晴が死神のルールを破ったからだ」
死神が人間に接触した場合、1ヶ月以内にその人間を殺さなければならない、ということは知っていた。
十六夜によると、死神はその殺した人の寿命をもらって、生きていくらしいのだ。十六夜に関しては、上の人に許可を取って、僕と長くいたらしいのだ。
「だけど、晴は少し事情が違った。晴は人を殺せない死神だった」
晴ちゃんは、人を殺せないために、人間の世界に足を踏み入れることは禁止されていた。だが、接触しないという条件で人間の世界に入らせてもらったのだ。
「けど、どうしてそこまで…」
「晴は、下界からいろんな人を見ていたんだ。そこで、雪君を見つけた。事情を知った晴は何とかしたいって思って、わざわざルールを破った」
これを聞いた途端、堪えきれなくなった。しばらくして、
「晴は言ってたよ。頑張って、長生きしてほしいって」
そうか。僕はこんな優しい死神に巡り会えたのか。
「………十六夜。僕を殺してくれ」
だけど、晴ちゃんのお願いは聞いてあげれそうにない。十六夜は一瞬驚いた顔をしていた。
「いいのか?」
いいんだ。もう十分幸せになれた。半年前の死刑囚から比べれば本当にすごいことだ。
悔いはいっぱいある。もう少し早く知っていれば、晴ちゃんともっと遊んでただろう。
ルールを破ってまでした晴ちゃんには申し訳ないけど、本当にもう十分だ。今は最高に幸せだ。この幸せの中で今死ねたら、多分僕は永遠に幸せだと思う。
「僕にとって、晴ちゃんがいない世界以上に不幸なことはないよ」
「そうか…」
十六夜は鎌を取り出す。僕は床に座っている。目を瞑った時に、
「雪君!」
玄関を見ると、晴ちゃんが息を切らして立っている。
「晴ちゃん!」
僕は晴ちゃんの方に近づき、抱擁する。
「どうして…?」
僕は涙声になりながら聞く。
「下界で見てたの。そしたら雪君、死のうするんだもん。無理やり出てきちゃった」
「怒られちゃうよ?」
「いいよ。それに今行かなかったら絶対に後悔してたから」
僕は嗚咽を吐く。晴ちゃんも号泣だった。
「私ね、今お父さんの力借りてて、人を殺せるの」
それは、つまり…
「私に殺させて」
もちろん。大歓迎だ。
僕は晴ちゃんの方を見ながら座っている。晴ちゃんは鎌を持って立っている。僕達の目には涙が溜まっている。
「生まれ変わったらって言っていい?」
晴ちゃんに聞く。
「ふふ。いいよ」
晴ちゃんは笑いながら返してくれる。
「生まれ変わったら、次は絶対に一緒にいようね!次は人間として!」
「うん!」
晴ちゃんは涙を浮かべて満面の笑みで微笑んだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
形だけの妻ですので
hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。
相手は伯爵令嬢のアリアナ。
栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。
形だけの妻である私は黙認を強制されるが……
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる