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第1章 雪のち晴
第8話 父親
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死神に出会って約3ヶ月。世間では、僕のことはすっかり忘れられていると思う。ニュースも別の話ばかり。
だが、警察も忘れてくれている訳ではない。今でも、近隣住民へ注意を促している。
「ねぇねぇ。なんか食べるもの作ってくれない?」
僕の横では、晴ちゃんが女子力の欠片もない体制でテレビを見ていた。死神に女子力を求めるのもどうかと思うが…
最近までは、スーパーのお弁当を食べていたのだが、今では料理は僕の担当になっている。
「ピンポーン」
インターホンがなった。恐らくネットで頼んでいた物が届いたのだろう。
「晴ちゃん。悪いけど出てくれない?」
「えー」とは言いながら、玄関に向かっていく。
直後、ドーンっという大きな音がした。
見てみると、晴ちゃんがベランダの入り口まで吹き飛ばされていた。玄関を見てみると、黒い服を着た大柄な男の人が立っている。
「何の真似だ。晴」
「いっった!まじでキレてんじゃん」
相変わらず呑気な声で晴ちゃんが立ち上がる。
「私が来た理由は分かるな?」
男が鎌を出したのを見て、晴ちゃんも同じように鎌を出す。
「いや、わかるわけねーだろ」
「なら教えやる」
男は姿を消して、いつの間にか僕の背後に立っていた。そして、首元に鎌を近づけて、
「今すぐ戻ってくるか、この男を殺されるか選べ」
戻るってどこに戻るんだろう。そんなことを考えている僕もかなり呑気だと思う。
「なんであんたに指図されなきゃなんねーんだ?それよりその子は死にたがってるだよ」
「なら好都合だ。今から殺してやる。どうせお前には出来ないしな」
お前には出来ないとはどういうことだろう。だが、どうやら殺されるらしい。やっと楽になれる。この3ヶ月間、夢のような時間だったな。
「悪いな青年。君に罪はないけど」
そう言って鎌を振り下ろそうとした時、カーンっという金属の音が聞こえた。
目を開けると、晴ちゃんが僕を守ってくれたらしい。
「何してるの?晴ちゃん。僕はやっと死ねるんだよ。邪魔しないで」
晴ちゃんの顔は見えなかった。だが代わりに怒ってるというオーラは伝わってきた。
「まだ契約は残ってるだよ?後9ヶ月も。勝手に放棄しないでよ!」
この言葉で、心のどこかでホッとしてしまった自分がいた。
「面白いなお前」
男は鎌をしまい、床にあぐらをかいた。
「さっきは殺そうとして悪かったな」
「ほんとに迷惑だわ!」
晴ちゃんもツッコみながらあぐらをかく。
「ごめんね、雪君。うちの父親が迷惑かけて」
…父親!?
だが、警察も忘れてくれている訳ではない。今でも、近隣住民へ注意を促している。
「ねぇねぇ。なんか食べるもの作ってくれない?」
僕の横では、晴ちゃんが女子力の欠片もない体制でテレビを見ていた。死神に女子力を求めるのもどうかと思うが…
最近までは、スーパーのお弁当を食べていたのだが、今では料理は僕の担当になっている。
「ピンポーン」
インターホンがなった。恐らくネットで頼んでいた物が届いたのだろう。
「晴ちゃん。悪いけど出てくれない?」
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直後、ドーンっという大きな音がした。
見てみると、晴ちゃんがベランダの入り口まで吹き飛ばされていた。玄関を見てみると、黒い服を着た大柄な男の人が立っている。
「何の真似だ。晴」
「いっった!まじでキレてんじゃん」
相変わらず呑気な声で晴ちゃんが立ち上がる。
「私が来た理由は分かるな?」
男が鎌を出したのを見て、晴ちゃんも同じように鎌を出す。
「いや、わかるわけねーだろ」
「なら教えやる」
男は姿を消して、いつの間にか僕の背後に立っていた。そして、首元に鎌を近づけて、
「今すぐ戻ってくるか、この男を殺されるか選べ」
戻るってどこに戻るんだろう。そんなことを考えている僕もかなり呑気だと思う。
「なんであんたに指図されなきゃなんねーんだ?それよりその子は死にたがってるだよ」
「なら好都合だ。今から殺してやる。どうせお前には出来ないしな」
お前には出来ないとはどういうことだろう。だが、どうやら殺されるらしい。やっと楽になれる。この3ヶ月間、夢のような時間だったな。
「悪いな青年。君に罪はないけど」
そう言って鎌を振り下ろそうとした時、カーンっという金属の音が聞こえた。
目を開けると、晴ちゃんが僕を守ってくれたらしい。
「何してるの?晴ちゃん。僕はやっと死ねるんだよ。邪魔しないで」
晴ちゃんの顔は見えなかった。だが代わりに怒ってるというオーラは伝わってきた。
「まだ契約は残ってるだよ?後9ヶ月も。勝手に放棄しないでよ!」
この言葉で、心のどこかでホッとしてしまった自分がいた。
「面白いなお前」
男は鎌をしまい、床にあぐらをかいた。
「さっきは殺そうとして悪かったな」
「ほんとに迷惑だわ!」
晴ちゃんもツッコみながらあぐらをかく。
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…父親!?
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