雪のち晴

トモヒロ69

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第1章 雪のち晴

第8話 父親

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 死神に出会って約3ヶ月。世間では、僕のことはすっかり忘れられていると思う。ニュースも別の話ばかり。
 
 だが、警察も忘れてくれている訳ではない。今でも、近隣住民へ注意を促している。

「ねぇねぇ。なんか食べるもの作ってくれない?」

 僕の横では、晴ちゃんが女子力の欠片もない体制でテレビを見ていた。死神に女子力を求めるのもどうかと思うが…
 
 最近までは、スーパーのお弁当を食べていたのだが、今では料理は僕の担当になっている。

「ピンポーン」 

 インターホンがなった。恐らくネットで頼んでいた物が届いたのだろう。

「晴ちゃん。悪いけど出てくれない?」

「えー」とは言いながら、玄関に向かっていく。

 直後、ドーンっという大きな音がした。

 見てみると、晴ちゃんがベランダの入り口まで吹き飛ばされていた。玄関を見てみると、黒い服を着た大柄な男の人が立っている。

「何の真似だ。晴」

「いっった!まじでキレてんじゃん」

 相変わらず呑気な声で晴ちゃんが立ち上がる。

「私が来た理由は分かるな?」

 男が鎌を出したのを見て、晴ちゃんも同じように鎌を出す。

「いや、わかるわけねーだろ」
 
「なら教えやる」

 男は姿を消して、いつの間にか僕の背後に立っていた。そして、首元に鎌を近づけて、

「今すぐ戻ってくるか、この男を殺されるか選べ」

 戻るってどこに戻るんだろう。そんなことを考えている僕もかなり呑気だと思う。

「なんであんたに指図されなきゃなんねーんだ?それよりその子は死にたがってるだよ」

「なら好都合だ。今から殺してやる。どうせお前には出来ないしな」

 お前には出来ないとはどういうことだろう。だが、どうやら殺されるらしい。やっと楽になれる。この3ヶ月間、夢のような時間だったな。

「悪いな青年。君に罪はないけど」

 そう言って鎌を振り下ろそうとした時、カーンっという金属の音が聞こえた。

 目を開けると、晴ちゃんが僕を守ってくれたらしい。

「何してるの?晴ちゃん。僕はやっと死ねるんだよ。邪魔しないで」

 晴ちゃんの顔は見えなかった。だが代わりに怒ってるというオーラは伝わってきた。

「まだ契約は残ってるだよ?後9ヶ月も。勝手に放棄しないでよ!」

 この言葉で、心のどこかでホッとしてしまった自分がいた。

「面白いなお前」

 男は鎌をしまい、床にあぐらをかいた。

「さっきは殺そうとして悪かったな」  
 
「ほんとに迷惑だわ!」

 晴ちゃんもツッコみながらあぐらをかく。

「ごめんね、雪君。うちの父親が迷惑かけて」

 …父親!?
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