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第1章 雪のち晴
第1話 雪のち晴れ
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「私と脱獄しない?」
死神との初めての会話。
今では、これにどう答えるのが良かったのか分からない。だが、少なくても後悔するほどひどくはなかった。
■ ■ ■
1度きりしかない人生において、幸せとは何なのだろうか。お金があること。恋人がいること。家族がいること。たくさんの幸せの基準がある。
もちろんその逆もあり、不幸の基準というものも存在する。周りに頼れる人がいない。不慮の事故での死亡などだ。前者はまだマシだ。簡単に言ってしまえば、孤独なだけなのだから。後者も辛いが、それは不幸だったで済ませようと思えば済ませることができる。かわいそうだが…
この世には冤罪というものが存在する。その中でも圧倒的不幸は、今自分が置かれている状態の冤罪死刑だ。
■ ■ ■
死刑囚というのは案外何もすることがないのだ。
普通の囚人と違い、働かなくていいからだ。
ご飯を食べるか、たまに運動するか、寝るか。それしかない。ある程度のものは、頼めば貰える。ただ死を待つだけの人間なのだ。
だが、自分は少し事情が違う。自分は絶対に何も犯罪を犯していない。少なくても記憶にない。
20歳の時に、自分の家族を殺された挙げ句、自分がそれの犯人にされたのだ。もちろん裁判をしたが、結局それに負けてしまった。
友達は失うし、付き合っていた恋人とも、面会の時に別れを告げられた。まあそれが当たり前の反応だということは分かっているが、こんなに不幸なことがあるのだろうか。
普通こういう時は、家族だけは信じてくれるものなのだろうが、その家族を失っているのだ。
だが、今ではもうどうでもよくなった。死刑宣告から6年が経って、その間に感情という物を失った。もう今死んでもいいと考えている。
「白糸雪。運動の時間だ。外に出ろ」
言われた通り、外に出た。今は12月。真冬だ。外で少し雪が降っているので、室内の運動ということになった。
その日の夜はなかなか眠ることができなかった。原因は多分雪が降っていて、寒いからだ。だからといって毛布をくれなどと言える立場ではないので、我慢をする。
「コンコン」
自分の部屋の窓が叩かれる音がした。初めは気のせいだと思い、横になっていたが、ずっと叩かれるため、窓を恐る恐る開けてみた。すると、1人女の子がそこに立っていた。
「やあ」
やあと言われても全然知っている顔じゃないし、何よりここは拘置所なのだから、女の子がいるはずがないのだ。
因みに窓はそれなりに大きいが、太い鉄格子があるので脱走もできない。
すると、信じられないことにその女の子は壁をすり抜けて、入ってきた。思わず悲鳴をあげそうになったが我慢をする。
「すごいでしょ」
監視の目があるので、そんなに大声で喋れないので、ゆっくり頷いた。
「突然で悪いんだけどさ、私と脱獄しない?」
死神との初めての会話。
今では、これにどう答えるのが良かったのか分からない。だが、少なくても後悔するほどひどくはなかった。
■ ■ ■
1度きりしかない人生において、幸せとは何なのだろうか。お金があること。恋人がいること。家族がいること。たくさんの幸せの基準がある。
もちろんその逆もあり、不幸の基準というものも存在する。周りに頼れる人がいない。不慮の事故での死亡などだ。前者はまだマシだ。簡単に言ってしまえば、孤独なだけなのだから。後者も辛いが、それは不幸だったで済ませようと思えば済ませることができる。かわいそうだが…
この世には冤罪というものが存在する。その中でも圧倒的不幸は、今自分が置かれている状態の冤罪死刑だ。
■ ■ ■
死刑囚というのは案外何もすることがないのだ。
普通の囚人と違い、働かなくていいからだ。
ご飯を食べるか、たまに運動するか、寝るか。それしかない。ある程度のものは、頼めば貰える。ただ死を待つだけの人間なのだ。
だが、自分は少し事情が違う。自分は絶対に何も犯罪を犯していない。少なくても記憶にない。
20歳の時に、自分の家族を殺された挙げ句、自分がそれの犯人にされたのだ。もちろん裁判をしたが、結局それに負けてしまった。
友達は失うし、付き合っていた恋人とも、面会の時に別れを告げられた。まあそれが当たり前の反応だということは分かっているが、こんなに不幸なことがあるのだろうか。
普通こういう時は、家族だけは信じてくれるものなのだろうが、その家族を失っているのだ。
だが、今ではもうどうでもよくなった。死刑宣告から6年が経って、その間に感情という物を失った。もう今死んでもいいと考えている。
「白糸雪。運動の時間だ。外に出ろ」
言われた通り、外に出た。今は12月。真冬だ。外で少し雪が降っているので、室内の運動ということになった。
その日の夜はなかなか眠ることができなかった。原因は多分雪が降っていて、寒いからだ。だからといって毛布をくれなどと言える立場ではないので、我慢をする。
「コンコン」
自分の部屋の窓が叩かれる音がした。初めは気のせいだと思い、横になっていたが、ずっと叩かれるため、窓を恐る恐る開けてみた。すると、1人女の子がそこに立っていた。
「やあ」
やあと言われても全然知っている顔じゃないし、何よりここは拘置所なのだから、女の子がいるはずがないのだ。
因みに窓はそれなりに大きいが、太い鉄格子があるので脱走もできない。
すると、信じられないことにその女の子は壁をすり抜けて、入ってきた。思わず悲鳴をあげそうになったが我慢をする。
「すごいでしょ」
監視の目があるので、そんなに大声で喋れないので、ゆっくり頷いた。
「突然で悪いんだけどさ、私と脱獄しない?」
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