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第1章
第3話 スレッド
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「僕と婚約してくれないだろうか?」
スレッドの声が部屋に響き渡る。アリスはスレッドの言葉を理解するのに10数秒はかかった。
「はい?…婚約?」
その言葉を理解したアリスの脳内はパニックになる。
「私と、ですか?」
「そうだ。他に誰がいるんだ?」
アリスは嬉しいかったが、少し冷静になる。何か企みがあるのだろうか。決してスレッドを疑っているわけではないが、今までの経験上、優しくされた記憶がないのでついつい疑ってしまう。
「とても失礼かもしれませんが、どうして私なんかと婚約しようと?私は外見もこの痣でとても悪いですし」
「…見たら分かる。君は親から虐げられてきた。昨日倒れた時、家族で心配している人はほとんどいなかった」
アリスはこれを聞いても「やっぱりか」くらいにしか思わなかった。
「さっきこの家の侍女の人に聞いたよ。君の痣は生まれつきなんだろ?それのせいで姉のアリーナさんと昔から比べられてきたんだろ?」
「はい、そうです」
「僕も優秀な兄と比べられてきたから分かる。アリスは努力してきたんだと思う。同じ境遇で生きてきたアリスと結婚したい。…だめだろうか?」
スレッドの目は真剣だった。アリスにとって、これ程嬉しい事を言ってくれた人は初めてだった。
「分かりました。結婚しましょう!」
こうして、アリスとスレッドは婚約に至ったのだった。
◆ ◆ ◆
後日、正式に婚約するために、両家で集まることになった。そこでは簡単な手続きと、結婚式はいつするのかなどを決めた。
アリスは家族からの祝福の言葉をもらうが、本当に心から喜んでくれている人などいないことを知っている。
しかし、アリスはようやく家を出ていける喜びと、自分を好きでいてくれるスレッドのおかげでそんなことはどうでも良くなっていた。
最終的に結婚式は3ヶ月後となった。少し遅いが、これはアリスの体調を考慮してだった。アリスはその結婚式が待ち遠しくてたまらなかった。
「楽しみですね」
「あぁ、そうだね」
こんな会話だけでもアリスは楽しく思う。この先、これ以上アリスを大切にしてくれる人はいないだろう。そして、2人は幸せな家庭を築く予定だった。
◆ ◆ ◆
アリーナは憂いでいた。妹のアリスがスレッドと仲良くしているのを見ているだけで虫唾が走るほどだった。昔からアリスの幸せそうな顔を見ると腹が立つ。
そして、アリーナは閃いた。スレッドを手に入れる方法を。
スレッドの声が部屋に響き渡る。アリスはスレッドの言葉を理解するのに10数秒はかかった。
「はい?…婚約?」
その言葉を理解したアリスの脳内はパニックになる。
「私と、ですか?」
「そうだ。他に誰がいるんだ?」
アリスは嬉しいかったが、少し冷静になる。何か企みがあるのだろうか。決してスレッドを疑っているわけではないが、今までの経験上、優しくされた記憶がないのでついつい疑ってしまう。
「とても失礼かもしれませんが、どうして私なんかと婚約しようと?私は外見もこの痣でとても悪いですし」
「…見たら分かる。君は親から虐げられてきた。昨日倒れた時、家族で心配している人はほとんどいなかった」
アリスはこれを聞いても「やっぱりか」くらいにしか思わなかった。
「さっきこの家の侍女の人に聞いたよ。君の痣は生まれつきなんだろ?それのせいで姉のアリーナさんと昔から比べられてきたんだろ?」
「はい、そうです」
「僕も優秀な兄と比べられてきたから分かる。アリスは努力してきたんだと思う。同じ境遇で生きてきたアリスと結婚したい。…だめだろうか?」
スレッドの目は真剣だった。アリスにとって、これ程嬉しい事を言ってくれた人は初めてだった。
「分かりました。結婚しましょう!」
こうして、アリスとスレッドは婚約に至ったのだった。
◆ ◆ ◆
後日、正式に婚約するために、両家で集まることになった。そこでは簡単な手続きと、結婚式はいつするのかなどを決めた。
アリスは家族からの祝福の言葉をもらうが、本当に心から喜んでくれている人などいないことを知っている。
しかし、アリスはようやく家を出ていける喜びと、自分を好きでいてくれるスレッドのおかげでそんなことはどうでも良くなっていた。
最終的に結婚式は3ヶ月後となった。少し遅いが、これはアリスの体調を考慮してだった。アリスはその結婚式が待ち遠しくてたまらなかった。
「楽しみですね」
「あぁ、そうだね」
こんな会話だけでもアリスは楽しく思う。この先、これ以上アリスを大切にしてくれる人はいないだろう。そして、2人は幸せな家庭を築く予定だった。
◆ ◆ ◆
アリーナは憂いでいた。妹のアリスがスレッドと仲良くしているのを見ているだけで虫唾が走るほどだった。昔からアリスの幸せそうな顔を見ると腹が立つ。
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