【挿絵150枚超え】金髪ニーソな生徒会長〔女神〕は恋煩いな異端者〔魔女〕なのか?

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プロローグ

プロローグ(&キャラクター紹介)

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▼金城コミン(ヴァーサー・クーラー)

本作のメインヒロイン。夢見が丘高校1年A組の女子生徒であり、金髪ニーソで学園随一のアイドル生徒会長。学園では滅多に姿を見せず、目撃情報があると学園内は大混乱する。しかし裏の顔は魔女と恐れられる、全世界から指名手配された組織のボスであるヴァーサー卿。武器の呪い仕掛けなヤリはどんな相手でも一撃で倒す。身長163cm。

▼主人公

本作の主人公。夢見が丘高校1年A組の男子生徒。成績上位で入学し将来の夢は教師、無難で平穏な人生を求める。夢や魔法を毛嫌いし、学園や街で起こり始める不可解な七不思議やその話題を不快に感じ全否定するため女子生徒に嫌われている。根は優しいが口が悪いためあだ名がチンピラエリート。

▼マリア

夢見が丘高校1年の女子生徒であり、密かに学園を魔女や魔族から守る騎士。無表情で背が小さいが強くて頼れる先輩騎士。身長155cm。

▼クゥ

マリアと友達の女子生徒であり、同期の騎士。鳴き声のような口調、くぅという語尾が特徴の不思議な女の子。身長153cm。

▼ポポ

マリアと友達の女子生徒であり、同期の騎士。自称最強な姫で、主人公にライバル心をぶつけるわがままな女の子。身長154cm。

▼ガルナビ

学園に留学する生徒魔族で、唯一会話ができる。ヴァーサー卿のために騎士たちを攻撃したり、邪魔する。普通の人間には見えない。身長30cm。

▼魔族

学園や街で密かに生活する魔族。大小さまざまで、騎士に味方する良い魔族と、魔女に加担する敵対魔族がいる。普通の人間には見えない。身長0~500cm程度。



【プロローグ】



 桜の花びらは一瞬にして散り、空を覆おおう分厚い雲は燃えていた。
 いつもの学園の屋上は、地獄のような風景に変わり果てている。

 そこには一人の少女が、悪辣あくらつな笑顔を見せて立っていた。
 スカートの下から〝槍〟を取り出し、なおも顔をほころばせている――――。



 幼い顔立ちと優雅な身体の曲線。
 その身を包むは、濃い赤い鎧と、白いひだが見えるスカート。
 長い金髪の頭には『金色の冠』をのせている。

 曰く少女は、魔女である。


「学園の自由を束縛(そくばく)する結界はアナタのホオズキの毒より醜悪(しゅうあく)な呪文で、身ごもった魔力が消滅し、論破(ろんぱ)されたわ!」
「お前らお化けを悪く言ったことは謝る! 俺がどうかしていた! だから見逃してくれ、頼む!ここから逃がして!」



 そいつは残酷なまでに現実離れした槍を、まるでティースプーンでも扱うように摘(つま)み上げる。
 かわいい笑顔のまま、ひゅん――と振り下ろしてきた。

「ぐあああああッ!」

 命の危機に心臓が警笛(けいてき)を上げる。
 尻もちをついていた俺は、立ち上がり走りだそうとしたが、それもできずに再び脚に槍を突き立てられた。
 躊躇(ちゅうちょ)もなく、魔女は槍をぐりぐりと動かす。

「…うぐっ! 何でッ! どうして突き刺すッ! 俺は何もしちゃいないッ!」
「結界破壊の呪文を唱(とな)えてくれたアナタへの感謝の気持ちよ」
「…これが感謝!? なら今すぐやめてくれッ! 抜いてくれ!」

 槍が俺の脚から、じゅぶぶと引っこ抜かれる。
 耳鳴りと血の唸り声で、脳が焼き切れそうだった。

「…ぐッ! か、神様、助け、誰か…うぐぁっ――ッ!!!!」

 壁に向かってそう漏(も)らしたとき、肉を割くような嫌な軋みが、体の内側から伝播してくる気がした。
 疑問を呈する間もなく、腹から槍の先端らしきモノが突出する。

 痛い。痛い。痛い。イタい。痛い。熱い。死ぬ――!

「ヒドい世界になったものね。他人(ヒト)を信じなければ、自分の抱えていた夢さえも偽ろうとする」

「…ぐっ!」

 腹から槍がぐじゅぶぶっと抜き取られた。

「自分の理想が現実に反しているとかたくなに邪魔をする潔癖(けっぺき)な心は邪魔ね。どうすれば幸せになれるか、その体に教えてあげるわ」
「…な、何が目的だッ!?」

 魔女は槍を両手で握り直し振り上げ、槍の鈍いどす黒い先端が再び向けられ、今度は俺の顔に狙いを定(さだ)めてくる。

「ちょっと、待ってくれ…よせ!」
「…へへ、ホンット頑固な心ね!」
「な、何でも言うこと聞くから、命だけは!」
「…え? 何…でも?」

 槍の穂先が下がっていく。

「――そ、そうだよ! な、何でも聞く! だから、命だけは…ッ!」
「それよ! なぜ人は不幸よりも、見ず知らずの死をより恐れるのッ?」

 魔女の顔に恐ろしい表情が張り付いた。

「し、知らない! わからない! もうやめてくれ! 俺は人違いだって!」
「なんですって!? エスノセントリズムね! けしからないわッ!」

 魔女は、再び槍を振り上げる。

「やめろ! すまなかったって! なんだか知らないが俺には関係ないって!」
「このイオマンテは残酷な祭りではない、奇抜(きばつ)すぎるだけよ! 受け入れなさい!」
「お化けがいないってみんなの前で叫んだことは謝る! で、出来心だったんだ――ぅぅ!」

 どうしてこんなことに。
 なんで命を狙われるんだ。
 痛いのはもう嫌だ。
 そんな思いの去来と共に、涙目で懇願した。

「……そうなの?」

 魔女はあっけらかんと言い放ち。
 情緒の思うままにという感じで、槍を放り投げてしまう。

 なんでもいい!助かるなら、なんだって……!

「ぅぅ……助けて……!」

 その命乞いに、魔女は薄く笑った。
 細い指先だ。それが俺のほほをゆっくり、じっくりなぞっていく。彼女は何かの呪文をつぶやきはじめた。

「愛の下僕(げぼく)になる?」
「…うぐっ…う、うん! うん!」
「アタシの下僕として一生仕(いっしょうつか)える覚悟はある?」
「なんだってする! 許してッ!」
「よしっ! 決まりね! まずはお腹の奥にしがみついているその本音(ハート)をえぐりだして、教徒入信書にサインさせるわ!」

 下弦の月のように魔女はにたりと笑った。
 急に俺のネクタイを握ると、無理やり立たせ、壁に押し付けてきた。

 太ももが焼けるように痛み、汗がにじみ出てきた。
 痛みは思考を鈍化させる。
 彼女が何をしようとしているのか、その瞬間まで思いもよらなかった。

「ぅぐっ! ……な、なにを!?」

 細い指。
 それが、俺の胸に突き刺さっていた。

「嘘だろッ! 話が違うッ! やめ、―――うげあああぁぁッ!」

 指はほじくり返すように、胸へ沈んでいく。



「い、痛いッ! ――ぅ”、な、――、あがッ――!」
「男のくせにうっさいわね! 静かにッ!」
「――ゥッ、ぐあァァァァ!! やめろおおお!!」

 邪悪な笑みを浮かべたまま、魔女の手が腹の中央をかき混ぜ続ける。

「あ! いたいた! この子よ! 歯を食いしばって、いくわよ!」
「痛ッ! そ、それはよせッ――! 冗談だろ! だ、だのむッ!」
「せーの、……はいッ!!」

 魔女は、まるで抜歯でもするように、スポンっと何かを引っこ抜いた。
 その時の痛みも音も深く焼き付いていく。

「ぐぎゃあああああぁぁぁぁぁあああ!!!!」
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