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二章
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しおりを挟む少女が露天通りを抜けようとしていると、不意に人気のない通りへと腕を引かれた。
慌てて逃げようとするも、力の差があり、そのまま引きずり込まれてしまった。
「は、離してください!!」
逃げようと暴れている内に、フードが取れて少女の顔が露になった。
少女を捕まえた男達は、ちっと舌打ちした。
「なんだ、傷物かよ。よく見たら骨ばってて売れそうにないな」
少女のことをじろりと上から下まで眺めて男達はニヤリと笑った。
「どうせ傷物で変態思考の奴に端金でしか売れねえんだ、俺らで味見するのも悪くねえ」
ちげえねえ、と周りの男達も頷く。
地面に押し倒された少女は、抵抗を諦めて、晴れた空を見上げた。
結局、どこに行ってもこうなるのか、と。
もうすぐ失くなる命だが、抵抗して巡礼が終わる前に死ぬ事だけは避けなければ、と思い、今からはじまる事をやりすごそうと目を閉じた。
「「「な、なんだ、これ、うわぁ!!」」」
急に男達が少女の上から飛び退き、全身をこする。
驚いてそちらを見ると、全員の体に黒い紋様が刻まれていた。
「の、呪いだ!!こいつ、呪われてやがる!!」
「嘘だろ!?どうしたらいいんだ!?」
「知るかよ、そんなこと……そうだ、こいつを殺せばなくなるかも」
「「そうだな!!殺ろう」」
そういって、三人で少女を取り囲み、ジリジリと近づいてきた。
「っ」
少女は息を飲み、せめてもの抵抗として丸まり、胸の革袋をぎゅっと握りしめた。
ナイフが振り上げられ、今にも殺されそうになった時、急に男達の体から力が抜けた。
「「「う、うわあ、や、やめろ!!!!」」」
喉をかきむしり、空を見上げてもがく男達の顔には見覚えのある呪いの紋様と似た呪いが蔦のようにまきつき、刻み込まれて男達を苛んでいた。
「わ、悪かった、わるかったから、たすけ、ぐはっ!!」
少女の方に必死に手を伸ばし助けを願う男に、少女は恐れを感じて後退る。
首を振って何もできない、と示す少女に、男は絶望の表情をうかべた。その口から鮮血が吹き出し、急に絶命する。
「「う、うわあ!!!!!!」」
残りの男達は這いずりながら逃げようとするが、結局、途中で同じように息絶えた。
その様子を震えながら見ていた少女は、不意にあの神官の言葉を思いだした。
『これから貴女は神の贄となります。その身には見えない神の印が刻まれることでしょう。神は優しくも残酷です。そして、己の物に手を出される事を嫌う』
『お気をつけを。御身を大事になさりなさい。その身を奪ったり汚そうとした不届き者には、貴女が望むと望まざるに関わらず、裁きが下るでしょう』
今になって、少女の頭には神の残酷な哄笑が響いてきた気がしていた。
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