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第二部罪滅ぼしを願う英雄と巡礼の少女 一章
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しおりを挟むリオンside
元騎士団長の襲撃や日々起こる出来事に妨害されながらも(目の前で馬車が立ち往生したり、ひったくりに狙われたり等)少女との距離を詰め、次の町で捕まえられそうだとようやく目星がついた。
思えば、最初の町で捕まえられるはずだったのに、とリオンは遠い目になりながらも、少女を捕まえて最初に何を言えばいいか考え始めた。
(騎士団長は最初に『すまなかった』って潔く謝ったらしいんだよな。俺もそうするか?)
つらつらと考えていた時、ちょうどその少女の話だと思われる話が耳に入ってきた。
「おい、聞いたか?何年ぶりか知らねえが、巡礼者がこの村を通っていったらしいぜ」
「へー、巡礼者、ねえ。聞いたことねえな。どうしたんだ?」
「いやさ、村の小神殿の神官様、いるだろ?」
「ああ。あの人のよさそうな高齢の……」
「そうそう、そんで、その人が急に寝込んだ後、朝からずっと神様に祈ってるって話でさ」
「なに、なんでそんな事に?」
こんな村では高齢の神官が寝込んだ、という話でも刺激的なのだろう、とリオンは聞き流していたが、その耳に衝撃的な事実が入ってきた。
「どうやらさ、神官様はお若い時分に巡礼に立ち合った事があったらしくてな、それはそれはむごいものだったと」
「むごい?神様への巡礼だろ?神殿をめぐるだけじゃないのか?」
「俺も詳しいことは知らねえんだけど、寝込んだ神官様のお世話に言ってたのが俺の叔母でさ、そんで、聞いた話だと神様に願いの対価として体の一部を取られるとか何とか」
「へっ!!そんな事あるかよ、神様だぞ、俺らを守ってくれる存在だぞ?」
「だよなー、でも神官様は本気で怯えているらしい。叔母はさ、『神への傲慢なる願いへの対価だ』って神官様が言ってたって」
「……てか、この話、しても良かったのかよ」
「……いや、誰かに話したくてな。神官様があんまりにも怯えてて、叔母もおびえててさ。で俺も怖くなっちゃって。でも、よく考えたら、俺らの神様がそんな事するわけ、ないよな」
「ああ、そうだな……。よし、飲みに行こうぜ!!」
「おう!!」
運命のいたずらか、本当にたまたま、この話を聞いてしまったリオンは早足で村をでると、一気に駆け出した。
「間に合ってくれ!!」
そう呟きながら、少女の元へとリオンは急いだのだった。
少女side
ぽたぽたぽたと滲む血に地面が汚れていく。
流石に道が汚れるのは申し訳ない、と少女は思うのだがすぐに止まるものでもない。
巡礼服を血で汚すと厄介なので、布で押さえながらも少女は下を向いて歩いた。
「なに、あれ……」
「みちゃいけません!!」
「うわっ!!」
少女の様を見た人々は少女を遠巻きにして気味が悪そうに見てくる。
今日は宿をとれそうにないな、と少女は溜息をついた。この体で宿が取れないとなると、色々厳しいかもしれない。
神殿に戻る、という手もない訳ではなかったが、今のこれも含めて神の思し召しだとすると、神殿側が受け入れてくれない可能性も高かった。そもそも、泊めてくれるなら、とっくに引き止められているだろう。
宿が集まる方に行くのは諦めて、少し治安の悪い地域に行くことに決める。
そこならば、少女と同じ、お金のない旅人や、落ちぶれた人々などが寝床にしている一角があるはずだ。
重たい体を必死で動かしながら、少女は前に進むが、痛みとだるさで目の前がぼやけてきた。
ばたん、と一回道に倒れこむ。ーー当然のように誰も助けない。地面の冷たさに体温がこれ以上取られないように、少女は緩慢に立ち上がりまた歩きはじめるが、幾分もしないうちに足がもつれる。
あ、また倒れる。
ふら、と少女の躰が傾き、倒れ伏す寸前に、大きな温かい何かが少女を抱きとめた感覚がした。
夢、かと思って、随分と前に分かれた人の名前を呼ぶ。……夢ならば、呼んでも許される気がした。
「リオン様……」
その人は顔をしかめて泣きそうな顔をしていた。
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