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第二部罪滅ぼしを願う英雄と巡礼の少女 一章
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しおりを挟むリオンside
「ほんと、こりねえな……」
「そう思われるのでしたら、おとなしく捕まってくださればいいのでは?」
「いや、無理。それに、俺の方が強いのになんで捕まんなきゃいけねえの」
「……少々きたえすぎましたか」
「その点は、まあ、か、感謝してる」
「……素直になられましたね。いえ、元に戻れられた、のでしょうか」
「真面目に驚かれるとちょっとむかつくんだが」
こんな穏やかなやり取りをしていながら、リオンと元騎士団長は激しく剣を交わしていた。
ここの所、不定期に元騎士団長がリオンの事を襲ってくるので、リオンもそれに慣れて会話までするようになっていたのだ。
なお、立ち合い自体は普通にしているので流石元魔王討伐メンバー同士というほかないのだが、本人たちはこんなもんだろ、と気にしていなかった。
今日も適当にやり過ごし、町に逃げ込む。
町や村の中では襲ってこないからだ。リオンが長期滞在でもすればまた別なのだろうが、今のところは他を巻き込む気はないらしい。
リオンは町の中に入るとふう、と息を吐いた。
正直、元騎士団長は強いので相手をするのは疲れるのだ。……殺さないように気を付けていればなおの事だった。
リオンは元騎士団長に対して複雑な思いを抱いていた。
元魔王討伐メンバーの中で、元騎士団長は年が離れている分、兄のような存在であり、面倒見が良く、よく世話になっていた。
それはリオンが変わって、皆が遠巻きにしてからもかわらずで、あのメンバーの中では唯一最近まで頻繁に交流があった。
「そういや、よく諫められたっけ?そのたびにキレてうやむやにしてたけど、ちゃんと聞いときゃ良かった」
元騎士団長とはこじんまりとした酒場で落ち合っていたのだが、その度に遠回しに元国王の命令の理不尽さを詫び、リオンの少女へ対する態度を諫めた。
『国王陛下がリオン殿にされた命につきましては、お諫め出来なかったのは臣としての咎であり、申し開き用もございません。ただ、少女に関しましては、この件に巻き込まれただけです。……以前少しお話いたしましたが、私も若かりし頃自身の欲を優先し、妻を悲しませ、それを取り戻すのにかなりの歳月を費やしました。リオン殿にはそのような後悔を背負ってほしくないのです。どうか、少女と向き合ってはいただけませんか』
個人的な場なので言えたことではあったのだろうが、あの時、リオンはその言葉になんと返しただろうか。
「……結局、後悔してるよ。取り戻せるのかもわからないしな」
リオンは自嘲すると、その日の泊まる場所を探しに歩き出した。
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