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第二部罪滅ぼしを願う英雄と巡礼の少女 一章
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しおりを挟むリオンside
巡礼の旅について神官から聞いたリオンは、手早く荷物をまとめると、少女を追いかけて町を後にした。
先に出発したと言っても、リオンは英雄であり、戦闘経験もある元軍人といってもいい。今から追いかければすぐに追いつくはずだった。
ただ一つ気になることは、神官が言っていた「神の干渉にお気を付けを」との一言だった。
この世界には神が居るというのはリオンは知りすぎるほど知っていた。そしてその存在は決して優しいばかりの存在ではない事も。
リオンは探索魔法を使用し、眉をひそめた。
探索魔法が何者かに妨害されている。リオンは英雄であり、そのおかげか完璧に使えないわけではなかったが、精度が非常に低く、距離が離れれば困った事になりそうだった。
「急がないとな」
このままの速さで追いかければ次の目的地で早々に追い付けるはずだと、リオンは足を速めた。
「!!!」
街道の途中、ちょうど町と町の間の一番ひとけが少ない場所で黒い人影がリオンに襲い掛かった。
「誰だ!!」
襲撃者は気配を消す魔道具を身にまとっていた。探索魔法を常時展開していなければ気がつかなかったかもしれない。
「てめえ、今俺は忙しいんだよ!!邪魔するな!!!」
大柄な人影の身に合わぬ俊敏さに翻弄されながらも、リオンは剣を抜き、応戦した。
一合、二合と切りあうが相手もなかなか強く、すぐには倒されてくれない。
この街道はひとけが無いとはいっても、完璧に人通りがない訳ではなく、この状況を人に見られると厄介な事になる可能性もあった。リオンに王宮から手配がかかっている確率は非常に高い。
「ちっ」
襲われているのは自分だと言うのに、周囲を気にしなければいけないこの状況は非常に不本意だったが、リオンは襲撃者を街道からそれた平原の方に誘導した。
襲撃者の方もその方が都合がいいのか、無理にに街道沿いで戦おうとはしなかった。
平原でも、幾度か切り結び、リオンが襲撃者を蹴り飛ばした時、その反動で襲撃者が付けていた仮面が外れた。
「やっぱり、あんただったのか、騎士団長!!」
騎士団長はリオンから一度距離をとり、そこから飛び込んで思いっきり切り込んできた。
自分よりも大柄な騎士団長からの切り込みに一歩後ずさりながらも、リオンはそれを受け止める。
「王宮からの追手か?あんた一人か。舐められたもんだな!!」
「……お久しぶりです、リオン殿。このような再開はしたくなかったのですが……仕方がありません」
「王子の命か?昔俺を鍛えたあんたが俺を殺しに来るとは皮肉なもんだな」
「リオン殿を逃したのは私の責です。……他の者に負わせるのは酷でしょう。それと、副団長に席を譲ったので、私は元騎士団長です」
「ーー難儀な性格してるなっ!!」
暫く戦うが、リオンの剣に陰りがあるのも手伝って、なかなか決着がつかない。
流石に、街道からそれなりに離れたとはいっても元魔王討伐メンバー同士で大規模魔法も使ってやりあうのはお互いに避けたいのもあった。
暫くすると元騎士団長はリオンから離れ剣を収めた。仕切りなおすつもりだろう。
「てめぇ、どこ行く!!」
リオンが怒鳴るのも構わず、背を向けて元騎士団長は走り去っていった。
「……まじか」
元騎士団長が去った後、リオンは天を仰いだ。
この様子だと、また襲撃してくるだろうし、そのうち手配書が配られてリオンを狙う人は増えていくだろう。
早いところ少女と合流しなければ、色々な妨害のせいでどんどん距離が離れそうだ。
「くそっ!!」
リオンは今日はもう少女の向かった町にたどり着かないと分かりながらも走り出した。
神官の言っていた「神の干渉にお気を付けを」という言葉がまた頭の中に鳴り響いていた。
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