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間章 王都では
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しおりを挟む暫くして、国から立て続けに訃報が発表された。
国王の伯父である大司祭、婚約者であり、魔王討伐の立役者の一人、聖女、そして、少し遅れてもう一人の立役者である元宮廷魔法師団長がはやり病にかかりなくなったとの発表だった。
その発表に国民は強い不安を覚えると同時に、国王に対しての不信感が募った。
魔王討伐に選ばれた人々は、神の加護があると信じられていたからだ。
その人達と、神の代弁者である神官、それも王族の血を引き、神殿のでは二位の位である大司祭が立て続けに亡くなったのだ、これは祟りだと考える人も少なくなかった。
国王自身が魔王討伐の立役者の一人であったことでこの騒動が国王が呪われているからだと言い出す人は少なかったが、次に亡くなるのは国王だという事で、裏で画策するものが増え、貴族社会は分裂し、治安は悪化の一途をたどった。
連日持ち込まれる問題ごとに、貴族たちの暗躍、それに早く国王に子供を!!という一派による縁談の数々にキュロスはすっかり疲弊していた。
そもそも、彼自身まだ心の整理は全然ついていなかったし、心の拠り所であった人々を次々と失った事で追い詰められていた。
今日も持ち込まれる問題ごとに宰相と共に頭を悩ませるが、疲れが思考を覆っていてまともに考えられない。
「今日はここまでにしよう。いいかげん休みを入れないと潰れてしまう」
「……そうですね」
個人的な応接間に向かい合わせに座り、過去の野営の時のように手ずからお茶を入れる様子を宰相はじっと見つめていた。
体を投げ出すようにどさっと座り、気だるげにお茶を飲むキュロスを見て、宰相は苦笑した。
「随分と、お疲れのご様子ですね……」
「まあな」
「ーー陛下、私の為にお茶を入れてくださりありがとうございます。……久しぶりですね、魔王討伐に出征なさる前以来ですか」
「そうだな……」
「……お伝えしたいことがございます。……よろしいでしょうか」
心の準備は、とキュロスは聞かれた気がした。
「ーーーーああ。その、袖から覗く黒の紋様の事か?確か、元宮廷魔導士団長の全身にもあったな……お前も私の前からいなくなるのか」
「陛下の御代を末永くお支えしたいと願っていたのですが、かなわぬ願いとなってしまいました。神の思し召しなら仕方ございませんが、どうか陛下は末永くこの国の繁栄と共に歩まれますように祈っております」
「…………この間、元騎士団長の訃報が届いた。反逆者を追うように命令していたが、殉職したようだ」
「さようでございましたか……」
「皆、私の元から去っていくな。いや、去っていくならばまだよい。皆、命もろともこの手から零れ落ちてゆく……。私は、間違えたのだな……」
「不敬を承知で申し上げます。もし、陛下が間違えられていたのなら、その大本を作られた先王陛下、そしてあなた様や先王様を諫められなかった我々側近一同にも咎がございましょう」
「……そうだな。お前のことだ、もう引継ぎは住んでるんだろ?王都の隣の町の外れに、私が個人所有する館がある、そこでゆったりとすごすといい、私からの最期の手向けだ」
「ご恩情に感謝いたします」
「ーー許せ、お前がこれから苦しむことが分かっているのに、何もできない私を」
「いえ、この紋章はセリオス神からの罰ございます。陛下のせいではございません」
「…………」
キュロスは窓から見える憎いくらいの青空を見上げた。
きっとこの国は続いていくのだろう、彼らの犠牲を糧にして。
「私への罰は、全てを奪うこと、か……」
小さな、小さな声で呟いた声は誰にも聞きとがめられずに消えて行った。
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