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四章
ー閑話9ー 少女の独白2
しおりを挟む殴られたり、蹴られたりされる日々に私は慣れて行った。
不思議よね。人ってどんな最悪な環境でもそのうち慣れるの。痛いことが起こった時の対処法も身に着けた。簡単なこと、あのタンスの中と同じでぎゅっと目を瞑って数を数えていたらその内終わるって気がついたの。
そうして慣れた孤児院からも、移動することになったの。
せっかく、私の懺悔を聞いてくれる白いローブの人がいたのに、残念だったわ。
他のみんなは疎開で結構大きな町の孤児院に行ったって聞いたのに、私だけ資産がないから?とか何とかで、王都の孤児院に移されたの。
王都の孤児院っていえば聞こえはいいけど、そこで行ってたことは人身売買とさほどかわらなかったわ。
資産を多く持ってたり、可愛かったり、かっこよかったりした子供たちは早々に貰い手が見つかって孤児院を出て行ったけど、そうでない子供は無料で使える雑用係だった。
呪いの子である私はそれよりもひどい扱いだった。
一個良かったことがあるとしたら、呪いの子に触れたい人はいなかったって事。まあ、見た目も悪かったからそれも原因のひとつだけど。
【特別室】にお呼ばれして、壊れて返ってくる、えっと、孤児院の大人たち曰く『できそこない』も沢山いたから、そういった人に嫌がられる呪い子でその時だけは良かったって思ったわ。
やがて、私は成人に近くなったけど、当たり前に貰い手は見つからなかった。
このままここを追い出されて、立ちんぼか、物乞いになるしかないか、と覚悟した時に、王城に呼び出された。
英雄様が返ってきた事は知っていた。けれど、遠目で確認した英雄様は昔の雰囲気とはがらっと変わっていたし、私なんかが近づいて呪いに巻き込むのが怖かった。
だから、できるだけ関わらないように、遠くから英雄様の幸せを願おうとしていた時に、あの王命がくだった。
最初は、焦った。
私が近づくことで、英雄様を呪いに巻き込んでしまうかもっておもって。
でも、ほんの少し、嬉しかった。
あの時のお礼を伝えられるかなって思ったから。
英雄様は今でも、私の唯一の光だった。
あの時の英雄様を時折思い出すことで、私は今まで生きてこられたって自覚してたから。
まあ、当たり前だけど、こんな私を押し付けられて、英雄様はひどく怒った。覚えてないのは分かってたけど、本音を言うと悲しかった。吟遊詩人の歌のように劇的な何かが起こって欲しいって思ってたわけじゃないけど、ちょっとくらい記憶の片隅にあってもいいじゃないって思った。
ーーううん、劇的な何かをきっときたいしてた。英雄様が今度も私を助けてくれるんじゃないかって。こんな人生をあの時みたいに吹き飛ばしてくれるんじゃないかって。
ほんと、卑しくて自分が嫌になる。
だから、英雄様に破瓜を散らされた時、ひどく乱暴に扱われたけど、どこかで卑しい自分には当然だって思った。
それに他の人に触れられるよりも百倍良かった。たとえどんな扱いされたって。
ーーーーだって私、ずっと英雄様に恋してた。
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