やさぐれ英雄と名もなき孤児の少女

月城 月華

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番外編※本編終了後のものを含みます

わんにゃんの日1

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「なあ、今日が何の日か知ってる?」

リオンはどこか含みを持たせたように少女に尋ねました。若干嫌な予感が少女を襲います。

「……今日、ですか?何か祝祭でしたでしょうか?」

おそるおそる返す少女に、リオンは満面の笑みで紙袋を少女に投げ渡しました。

「いいや、俺の故郷の暦で、今日はわんにゃんの日なんだ。」

「わん?にゃん?の日……わんにゃん???」

小首をかしげてわんにゃんと言う少女をリオンは思わず抱きしめた。

「リ、リオン様!?」

真っ赤になった少女の手から、先ほど渡された紙袋が落ちて、中身が敷布の上に広がりました。

リオンはそれを拾い上げて、ひょいと少女の頭に付けました。

「リ、リオン様?これは……」

少女は一度頭に手をやって、今しがたリオンにつけられたそれをはずし、まじまじと見つめました。

「こ、これは……ドゥンの耳、ですか?ケットシーではありませんよね?あ、ルーナの耳でしょうか」

ルーナとは小さな小型魔獣で、地球の猫に一番近い姿をしている。

「あー、そうそう」

そういや、ここには猫、居ないんだったとリオンは適当に頷き、もう一度少女の頭にそれを付けました。

「リ、リオン様、良くわからないのですが恥ずかしいです……」

顔から首まで真っ赤になって猫耳をつける少女をリオンは満足げに見つめ、落ちた紙袋からもう一つの耳を取り出しました。

「こ、コボルトの耳ですか……」

頷きながら、猫耳と犬耳を付け替えてどちらが似合うか選ぼうとしますが、どちらも似合うので選べません。これは両方別々に使うという事でいいでしょう。

リオンはとりあえず猫耳を少女に付けると、それなりに肉付きが良くなってもやっぱり小さなその体をひょいと抱え上げ、寝室に急ぎました。

「リ、リオン様!!子供たちを迎えにいかないと!!」

あわてて少女はリオンを止めますが、リオンは何食わぬ顔でつげます。

「あー、あいつらなら、神殿に泊まるってさ。おじじが馬鹿可愛がりしててな、ちょうどよかったから頼んできた」

準備周到です。

「あ、あと、仕事も明日は休みだからな、何も気にしなくていいぞ」

とても、とても楽し気に言うリオンに、少女は退路をふさがれた事を理解しました。……明日はきっと動けないでしょう。

「……お手柔らかにお願いいたします」

小さな声でお願いする少女に、リオンは悪い笑みを浮かべて「無理だな」と返しました。

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