やさぐれ英雄と名もなき孤児の少女

月城 月華

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三章

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少女side

産まれた双子の女の子と男の子は、産まれてから一か月後に王室に引き取られることになった。

一緒に過ごせる期間はわずかだが、その短い期間に精一杯愛情を伝えられたらいいなと、少女は思った。

そうしてある昼日中、うたたねしていた少女はふと目を覚ました。それは何かの予感だったのかも知れない。

ふらふらと引き寄せられるように、少女は双子が眠る部屋へと足を進めた。

「*********」

「*********」

聞いたことのない人の声が中からした。

思わず少女手じかにあるクローゼットの中に隠れた。そしてそっと耳を澄ます。

「ーーーーは、やはり」

「はい、男児は生贄になる事に決まりました」

「女児の方は?」

「隣国に引き渡す予定になっております」

「……分かった。これで我が国も安泰だな」

「ああ、魔王が倒され、魔物たちが激減した今、英雄を有する我が国は諸外国にとっては悩みの種になっていたからな」

「英雄の血筋を引き渡せばかの国も一先ずは落ち着くでしょう」

「結界の方は?」

「こちらも、英雄の血筋であれば代用が可能かと」

「では、明朝に決行しよう。ーーああ、例の呪われた少女は始末しておけ」

「かしこまりました」




男たちが去った後も、少女は一人クローゼットの中で震えていた。

自分が死ぬのは怖いが、もういい。でも、子供たちは幸せになれると信じていたのに……。

「ああ、私が呪われているから、か」

絶望しながらも、自身の運命に巻き込まれたのなら、なんとしても子供たちだけでも助けないとと、少女は動き出した。

「助けるからね……」

誰も居なくなった事を確認して、少女は双子を抱き上げ、そっと抱きしめた。




リオンside

真夜中、浅い眠りの中でまどろんでいた最中、不意に激しく家の扉が叩かれる音がした。

「ああ?なんなんだよ、こんな時間に……」

せっかく眠れたのに、と眉間に皺を寄せて、扉に向かう。念のため、そこらに立てかけてあった剣を片手に取った。

ドンドンドン!!!

「あー、もううっせえ、誰だよ!?」

いらだちと共に勢いよく扉を開ける。外は季節外れの雪がふぶいていた。

「リオン様!!」

頭まで布を被った小柄な女。

「あ?あれか?おまえ、あの少女か?」

「お久しぶりでございます。夜半に申し訳ございません」

そう言った灰色の少女、自身の妻は冷たい夜道にひれ伏した。

「は?え?」

状況に付いていけず、目を瞬く。そんなリオンに矢継ぎ早に少女は畳みかけた。

「全て終わったら、私の事はどのようにしていただいても構いません。どうか、子供を、子供を助けてください!!」

「子供?」

追い払っても良かったが、今までおとなしかった少女のあまりにも必死な形相にリオンはどうしてか話を聞かなけば、という気になった。

「子供って、お前が産んだっている俺との子供の事か?」

「はい」

「子供は王宮で大事に育てられるんだろ?何を助ければいいんだ?何か、お前の手元で育てたいとかいう事か?」

はっと馬鹿にしたように言うリオンを気にも留めず、真剣な顔で少女は続けた。

「いえ、私もそう聞いていました。それならば問題なかったのです。ですが……」

「???」

「子供たちは、双子でした」

「双子?そうなのか……」

(聞いてねえぞ、王子様)

いぶかしむリオンに少女は特大の爆弾と投下した。

「どうか、助けてください、リオン様!!このままでは子供たちは殺されます!!」

「はあ!?」


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