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三章
灰色の少女と怒れる英雄1
しおりを挟む少女side
「「おぎゃーおぎゃー」」
ついにリオンとの子供が産まれた。予想通り、双子、しかも男の子と女の子の双子だった。
「ふむ、でかした」
様子を見に来た国王陛下は満足そうに笑った。その後ろを王太子殿下が無表情で付き従っている。
国王陛下は傍にいる侍女と侍従に何やら話しかけると、機嫌よくその場を去っていった。王太子殿下だけがその場に残った。
王太子殿下は子供たちの顔をそっと覗き込み、顔をしかめた。
「哀れな……」
その小さな呟きは他の人にはきっと聞こえなかったが、少女の耳に確かに届いた。
踵を返した王太子殿下のその呟きと、無表情なはずの顔にかすかに浮かんだ憐憫は、少女に嫌な予感を抱かせた。
少女はじっと今しがた産んだ自身の子供たちを見つめた。
ーーなんとしても、この子達を守らなければ。
この時、少女は自身の心に誓いを立てたのだった。
リオンside
「そうか、分かった」
リオンの子供が産まれた、と王宮から知らせる使者がきた。
分かったと答えたものの、リオンは自分が父親になった実感がわかなかった。どこか遠い世界の事のように感じていた。
使者が去った後も暫く『子が産まれた』という知らせを心の中で反芻しては首を傾げていた。
「俺が、父親ねえ……」
暫く考えていたが、結局は実感がわかなくてもいいやという答えにたどり着いた。
この間久方ぶりに王子が会いに来て、子供は王宮で引き取りたいと言ってきたのだ。
自分が育てられる気もしないし、少女とは別れるつもりだったリオンは快諾した。王宮なら、何不自由ない暮らしもさせてやれるとも思ったからだ。
実際、王子はリオンに「大事に育てる」と約束した。
自身に子ができたとの実感はないし、少女の事もどうでもいいが、流石に生まれたばかりの子供に対しては幸せに過ごして欲しいとの情があったのだ。
最も、自身に関係ないところで、という注釈が付くが。
そんな訳で、自分の子供が産まれてからも、リオンは変わらず酒と女に溺れて生活していた。
ーーある晩、少女が傷だらけで駆け込んでくるまでは。
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