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二章
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リオンside
「はあ?あいつが王宮に連れていかれた?」
「そうみたいなの、立ちんぼみたいな恰好して男に襲われたらしくてね」
「なんでそんな恰好……」
「さあ、あなたに相手にされなくって寂しかったんじゃないかしら……」
「はっ、俺に相手にされたいなら、あの貧相な見た目をまずどうにかしろっての」
「そんなこと言ったら可哀そうよ。ねえ、私なら大丈夫だから、彼女の様子を見に少し帰ったら?」
「お前は優しいな。だけど、大丈夫だ。あいつとは王命で結婚しただけで、子供さえ産ませればそれで切れる関係だからな」
「まあ……」
ぎゅっと腰を抱くリオンに見られないようにおんなはニタリと笑った。
「でも、本当に寂しくって他の男を誘ったんだとしたら、そんな人を娶ったリオンが可哀そうだわ……」
「は、もしそうなら軽蔑するね……、まあ、傷心中の俺のことはお前が慰めてくれるんだろ?」
「ええ、もちろんよ……」
これで、リオンは私のものだ、と女は満足そうにリオンを抱きしめた。
少女side
「出来損ないだとは聞いていたが、満足に子を孕むこともできんとは……」
「ーー申し訳ございません」
「まあ、良い。腹にいる子を出産するまで第五離宮にとどまるが良い。これ以上騎士たちの手を煩わせてくれるなよ」
少女を呼び出した国王はそれだけ告げると、早々に少女を謁見の間から追いやった。
「こちらにどうぞ、ご案内いたします」
謁見の間から出ると、少女を無表情な侍女が出迎えた。そのまま侍女を先頭に騎士たちに囲まれて第五離宮まで案内された。
第五離宮は王宮の外れにあり、徒歩ではかなりの距離があった。外観は寂れており、王宮外郭の中の森の中にポツンと一つ立っていた。
「こちらにどうぞ」
離宮の入り口手前で、騎士たちは踵を返して帰って行った。残った侍女はギシギシ鳴る重そうな扉を開けて、少女を離宮の中へといざなった。
離宮の中は長年使われていなかったのか、少し埃っぽかったが、リオンの家の自分の部屋の石畳よりは温く、少女はほっと息を吐いた。
侍女はその様子を怪訝そうに見やったが何も言わずに、少女に最低限必要な場所を案内した。
最期に案内された少女の部屋は、一応は掃除がされていて、ベットもあり少女は好待遇に侍女に何度も頭を下げた。
侍女からしたら寂れた嫌がらせのような部屋を紹介したのに、喜んで頭を下げる少女が気味悪く、必要事項を告げると早々に本殿へと返っていった。
一つ、離宮の外に出てはいけない。
一つ、お世話をするメイドは朝と夕方のみ来るので、何かあればその時に申し付けること。
一つ、必要事項以外を王宮の人と話してはいけない。
一つ、出産後は速やかに王宮を去る事。
これらの事を言われたが、少女にはなんてことなかった。離宮には中庭があり、外の空気が吸いたければそこで過ごせばよかったし、自身のお世話をしてくれる人が朝と夕に二度も来てくれるとは思ってもみなかった。
リオンと暮らしていても一日誰とも話さない事はざらにあったし、出産後の事は元から承知していたことだった。
きっと貴族などの娘であったらこの待遇に対して怒り狂ったのだろうが、幸か不幸か少女は今までがひどすぎたので王宮側の嫌がらせに気が付かなかった。
むしろ生まれて初めて持つ自由で快適な生活に感謝をささげたのだった。
「はあ?あいつが王宮に連れていかれた?」
「そうみたいなの、立ちんぼみたいな恰好して男に襲われたらしくてね」
「なんでそんな恰好……」
「さあ、あなたに相手にされなくって寂しかったんじゃないかしら……」
「はっ、俺に相手にされたいなら、あの貧相な見た目をまずどうにかしろっての」
「そんなこと言ったら可哀そうよ。ねえ、私なら大丈夫だから、彼女の様子を見に少し帰ったら?」
「お前は優しいな。だけど、大丈夫だ。あいつとは王命で結婚しただけで、子供さえ産ませればそれで切れる関係だからな」
「まあ……」
ぎゅっと腰を抱くリオンに見られないようにおんなはニタリと笑った。
「でも、本当に寂しくって他の男を誘ったんだとしたら、そんな人を娶ったリオンが可哀そうだわ……」
「は、もしそうなら軽蔑するね……、まあ、傷心中の俺のことはお前が慰めてくれるんだろ?」
「ええ、もちろんよ……」
これで、リオンは私のものだ、と女は満足そうにリオンを抱きしめた。
少女side
「出来損ないだとは聞いていたが、満足に子を孕むこともできんとは……」
「ーー申し訳ございません」
「まあ、良い。腹にいる子を出産するまで第五離宮にとどまるが良い。これ以上騎士たちの手を煩わせてくれるなよ」
少女を呼び出した国王はそれだけ告げると、早々に少女を謁見の間から追いやった。
「こちらにどうぞ、ご案内いたします」
謁見の間から出ると、少女を無表情な侍女が出迎えた。そのまま侍女を先頭に騎士たちに囲まれて第五離宮まで案内された。
第五離宮は王宮の外れにあり、徒歩ではかなりの距離があった。外観は寂れており、王宮外郭の中の森の中にポツンと一つ立っていた。
「こちらにどうぞ」
離宮の入り口手前で、騎士たちは踵を返して帰って行った。残った侍女はギシギシ鳴る重そうな扉を開けて、少女を離宮の中へといざなった。
離宮の中は長年使われていなかったのか、少し埃っぽかったが、リオンの家の自分の部屋の石畳よりは温く、少女はほっと息を吐いた。
侍女はその様子を怪訝そうに見やったが何も言わずに、少女に最低限必要な場所を案内した。
最期に案内された少女の部屋は、一応は掃除がされていて、ベットもあり少女は好待遇に侍女に何度も頭を下げた。
侍女からしたら寂れた嫌がらせのような部屋を紹介したのに、喜んで頭を下げる少女が気味悪く、必要事項を告げると早々に本殿へと返っていった。
一つ、離宮の外に出てはいけない。
一つ、お世話をするメイドは朝と夕方のみ来るので、何かあればその時に申し付けること。
一つ、必要事項以外を王宮の人と話してはいけない。
一つ、出産後は速やかに王宮を去る事。
これらの事を言われたが、少女にはなんてことなかった。離宮には中庭があり、外の空気が吸いたければそこで過ごせばよかったし、自身のお世話をしてくれる人が朝と夕に二度も来てくれるとは思ってもみなかった。
リオンと暮らしていても一日誰とも話さない事はざらにあったし、出産後の事は元から承知していたことだった。
きっと貴族などの娘であったらこの待遇に対して怒り狂ったのだろうが、幸か不幸か少女は今までがひどすぎたので王宮側の嫌がらせに気が付かなかった。
むしろ生まれて初めて持つ自由で快適な生活に感謝をささげたのだった。
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