やさぐれ英雄と名もなき孤児の少女

月城 月華

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プロローグ

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「大丈夫か?」

差しのべられた、大きく暖かな手に、今死ぬかと、絶望に染まっていた少女は、安堵の涙をこぼした。



「えーゆー様のご帰還だー!
 魔王が討伐されたぞ!これで平和がもどるぞ!」

 聞き耳屋の少年が、あちこちを駆け回り、号外をばらまいていく。
 人々は、ようやくか。と言いながら待ち望んでいた知らせに、皆顔を明るくしていた。

 しばらくして、英雄御一考が町を凱旋した。

 人々は町の大通りまで出向き、思い思いに感謝の言葉をかけ、花びらを蒔いて出迎えた。

 

 魔王討伐の報告に、町はお祭り状態になった。
 英雄一行も町に降りて、日々どんちゃん騒ぎをくりひろげた。
 戦いの傷を癒すために。

 そうして、一行のメンバーは、それぞれの日常に一人、また一人と戻っていった。

 ‥たった一人、英雄をのぞいて。

 最初は歓迎されていた英雄だったが、一月、また一月たつ頃には、遠巻きにされるようになっていた。
 粗野な態度で、日々酒にひたり、日暮には女を抱え、毎日享楽にふける英雄をみな、疎んじるようになったのだ。

 この日、英雄は女を捕まえようとしたが、どの女も捕まらず、悪態をつきながら千鳥足で、王に与えられた自身の屋敷に向かって、帰路についていた。

 屋敷の前でちょこんと頭をさげる、人影に、英雄は目を見開いた。

 「お待ちしておりました、英雄リオン様。私は、今日から貴方の妻になりました。
 どうぞ宜しくお願いします」

 それは年端もいかない、若い、みすぼらしい少女であった。
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