帝国の双子 ~凶星の双子星は手を取り合って懸命に生き抜く~

月城 月華

文字の大きさ
上 下
20 / 21
4 悪夢の辺境伯領地観光

3

しおりを挟む

「訂正しろ!!」

いつものチャラチャラ飄々とした雰囲気は消え去り、暗い影を持つ軍人と思しき人がルーズベルトの背後から首筋にナイフをあててすごんでいた。

殺気に当てられたルーズベルトの額から玉のような汗が流れ、膝はがくがくと震えている。

「しつけがなっておりませんね……」

ジェスの冷たい声に、シャロックは冷や汗を流した。この状況はまずい。

「ジェスさん、ロナルドさん、申し訳「俺は悪くない!!」ーーちょっと黙ってくれないかな?」

せっかくフォローしようとした矢先に、ルーズベルト本人の大音量の叫びにより、台無しにされてしまった。

ジェスに止められ、ナイフは降ろしたものの、ルーズベルトの事をロナルドも冷ややかに見下ろしている。

強い殺気に当てられ冷や汗をかきながらも、ルーズベルトはさも当然と言うように自分の言い分を主張していた。

「か、考えたらわかるだろ?忌み子が産まれてすぐ、この地はスタンピードと隣国の侵攻に襲われたんだ、の、呪われてるにきまってる、今の状況はみんな、そいつらのせいなんだ!!」

ロナルドは心底馬鹿らしいと鼻を鳴らした。

「は、馬鹿かお前。もし本当に双子が忌み子なら、双子が生まれたすべての家、全ての土地が壊滅してるわ。つーか、このお二人は曲がりなりにも次期辺境伯様方なんだけど、今の言動、不敬だって分かってる?」

「ふ、不敬だと?先代様がお亡くなりになられてから、この町を守るという使命を放棄してのらりくらりと町医者をしていた腰抜けのいう事なんて、どーでもいいね!!」

ーーいや、その私怨と不敬は一切関係ないと思うんだけど。レリアとコリアは肩をすくめて顔を見合わせた。

「いや、それ不敬行為となんも関係ねえし」

ロナルドが呆れた目でルーズベルトをみる。怒りに顔を真っ赤にしたルーズベルトは、「うるさい、うるさい、俺は間違ってない!!」と叫びながら、ロナルドに襲い掛かった。

「やめろ。敵わない事はさっきので分かっているだろうに……私の部下が失礼した」

シャロックは腹に一発重い一撃を入れてルーズベルトを動けなくすると、様子をうかがっていたらしい周囲の人々に連れて行って牢屋で反省させるように、と言づけた。

その様子を冷ややかに見つめていたジェスは、シャロックにも冷たい視線を向けた。

「シャロック団長、随分と団員の質が落ちましたね。人手不足とはいえ、あんなのを団員にしているのですか」

「……面目ない」

「それに、領主一家への不敬罪が牢屋で一晩、とは軽すぎませんか?」

息を飲むシャロックとジェスの視線が交差する。

シャロックは冷や汗をかきながらも、真っすぐにジェスを見つめた。

「ーー私には、あいつの言い分も一理あるように思える」

ジェスの表情が失望に彩られた。シャロックは慌てて言葉を紡ぐ。

「これも不敬に当たるのだろうが、ここは今や辺境伯一族に見捨てられた土地だ。そもそも見捨てた辺境伯ご一家に不信や反感を抱くものも多い。それに、前辺境伯が倒れられたのはそちらの方々が産まれてすぐだったというのは事実だ。……迷信深いこの地域ではそれを関連づけるものも多い」

「それが免罪符になるとでも?」

「ーーいや、ただ」

そういって言葉に詰まり視線を下に落としたシャロックを見て、ジェスは隣で黙って成り行きを眺めている双子たちを見ました。

シャロックはもともとはこんな性格ではなかったはずです。ああ、きっと奥様と子供を亡くしたあの時から、少しずつ歪んでしまったのでしょう。

どうしようか、と悩んでいるジェスの袖をちょいちょいと引いたのは、コリアでした。

「どうされましたか?コリア様」

「ねえ、ジェス、リズの罰って本来ならどういう罰を受けるべきなの?」

「そうですね……初犯ですし、お二人には手を挙げていないので上官への暴力未遂という事で棒打ち五十回あたりでしょうか?」

「ロナルド、その罰は受けた相手はそのあとどうなる?」

「人によりますが、まず一か月はまともに動けないでしょうね。執行官によっては後遺症が残る場合もあるでしょう」

ふむとレリアとコリアが考え込みます。ややあって、今度はレリアがジェスにたずねました。

「じゃあ、貴族が自身の名誉を傷つけられたらどうするものなの?」

「ふむ、そうですね……一般的にはその領地の騎士団に捉えられれ領地法で裁かれます。内容によっては帝都で裁判ですね。それか、決闘により自身の名誉を回復される方もいらっしゃいます」

その瞬間、レリアとコリアは顔を見合わせて頷きあいました。

「「ジェス、ロナルド、私達リズと決闘する」」

意気揚々と告げた二人に、ジェスとロナルド、それにシャロックの顔までもが驚愕の色に染まりました。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元チート大賢者の転生幼女物語

こずえ
ファンタジー
(※不定期更新なので、毎回忘れた頃に更新すると思います。) とある孤児院で私は暮らしていた。 ある日、いつものように孤児院の畑に水を撒き、孤児院の中で掃除をしていた。 そして、そんないつも通りの日々を過ごすはずだった私は目が覚めると前世の記憶を思い出していた。 「あれ?私って…」 そんな前世で最強だった小さな少女の気ままな冒険のお話である。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……

こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。

元捨て子の新米王子様、今日もお仕事頑張ります!

藤なごみ
ファンタジー
簡易説明 転生前も転生後も捨て子として育てられた少年が、大きく成長する物語です 詳細説明 生まれた直後に病院に遺棄されるという運命を背負った少年は、様々な境遇の子どもが集まった孤児院で成長していった。 そして孤児院を退寮後に働いていたのだが、本人が気が付かないうちに就寝中に病気で亡くなってしまいす。 そして再び少年が目を覚ますと、前世の記憶を持ったまま全く別の世界で新たな生を受ける事に。 しかし、ここでも再び少年は生後直ぐに遺棄される運命を辿って行く事になります。 赤ん坊となった少年は、果たして家族と再会する事が出来るのか。 色々な視点が出てきて読みにくいと思いますがご了承ください。 家族の絆、血のつながりのある絆、血のつながらない絆とかを書いて行く予定です。 ※小説家になろう様でも投稿しております

女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)

土岡太郎
ファンタジー
 自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。 死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。 *10/17  第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。 *R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。  あと少しパロディもあります。  小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。 YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。 良ければ、視聴してみてください。 【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮) https://youtu.be/cWCv2HSzbgU それに伴って、プロローグから修正をはじめました。 ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo

ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない

兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。

二つの異世界物語 ~時空の迷子とアルタミルの娘

サクラ近衛将監
ファンタジー
一つは幼い子供が時空の迷子になって数奇な運命に導かれながら育む恋と冒険の異世界での物語、今一つは宇宙船で出会った男女の異世界での物語。 地球では無いそれぞれ異なる二つの世界での物語の主人公たちがいずれ出あうことになる。 チートはあるけれど神様から与えられたものではありません。 *月曜日と木曜日の0時に投稿したいと考えています。

魔王と呼ばれた勇者、或いは勇者と呼ばれた魔王 〜最強の魔剣で自由に生きる! 金も女も、国さえも思いのまま!! …でも何かが違うみたいです

ちありや
ファンタジー
クラスメートからのイジメが元で死んでしまった主人公は、その報われぬ魂を見かねた女神によって掬い上げられ異世界で転生する。 女神から授けられた不思議な剣を持つことで、彼はあらゆる敵に打ち勝ちあらゆる難問を解き明かし、あらゆる女性を虜にする力を手に入れる。 無敵の力を手に入れた男が次に望む物は果たして…? 不定期連載(7〜10日間隔で出していく予定)

処理中です...