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2 魔の森
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「おや?アルータをされているんですか」
ほかほかと暖かい湯気と爽やかな香りを立ち昇らせたお茶が三人の前に置かれた。それとお皿に盛られた、シンプルなスコーンだ。
「わーい!!」
いち早く反応してジェスの方を大きな目で見つめたのはコリアだった。
「ね、食べていい?」
「はい、もちろん。お茶と交互にお食べください」
そういわれるが否や、コリアはスコーンにかぶりついた。お腹がすいていたのだろう。
ジェスはレリアにも進めようとしたが、コリアがそれをすっと止めた。
「ジェス、だめだよ。レリアは負けず嫌いなんだ、それに一度集中するとそれを邪魔されるのを極端に嫌う。久しぶりに楽しそうなんだ、邪魔しちゃだめだよ」
しーっと人差し指を唇に当てて静かに告げるコリアにジェスはほう、と頷いた。
「コリア様にはアルータは合いませんでしたか?」
「うーん、面白いとは思うけど、レリアほど夢中にはなれないかな」
ジェスはもう一度レリアとそれに対峙するロナルドを見た。アルータをしている最中なのにロナルドの口角が珍しく上がっている。
(これは、レリア様にはアルータの才能があるかもしれませんね)
ジェスは一人ごちた。
アルータは戦術ゲームの一種だ。二人が盤上の領地を奪い合う。ただ、そこに状況カードというものの作用でかなり複雑にもなるゲームだ。
例えば、領地戦最中に状況カードの影響でスタンピート、魔物たちの暴走が起こったり、疫病が起こったりといった様子だ。対人、対魔物など多角的に領地を守るゲームなのだった。
その複雑なゲームを若干つ六つで理解するのは天才と言うほかない。たとえこの国の貴族が魔力的な要因か遺伝的、もしくは加護的な要因により早熟だとしてもだ。
レリアがアルータをプレイするのを楽しそうに見物しているコリアを見て、ジェスはコリアをディプロアムビデ、ディアムに誘うことにした。
「それではコリア様、お手すきでしたら私のお相手をお願いいたしましても?」
コリアの瞳に興味の色が浮かんだ。
「ーーうん、いいよ。何をする?」
「では、こちらに」
展開しているアルータと少し距離を置いて、ジェスは対面で椅子を二つ用意した。
「これは?」
「ディプロアムビデ、ディアムと呼ばれているゲームです。ルールはプレイしながらということでいかがでしょう?」
「分かった、お手柔らかにね、ジェス」
にこにこ笑うコリアにジェスも綺麗な笑顔で答えた。
いつの間にか窓から差し込む光が赤く染まり、暖炉の炎が鮮やかに浮かび上がる時間になるころ、レリアは大声を上げた。
「あーー、か、て、な、い、勝てない!!」
両手を天に持ち上げ心底悔しそうに叫ぶレリアに、冷めたお茶を飲みほしたロナルドが頷いた。
「そりゃ、始めたばっかのレリア様に負けるわけにはいかんからな」
「ぐるーー、うーー」
唸っているレリアの少し離れた隣では、コリアがこちらも冷めたお茶をゆっくりと飲んでいた。
「では、今回も私の勝ちでございますね、コリア様」
「……そうだね、ねぇ、ジェスって実は性格が悪いって言われない?」
「さて、どうでしょう。由緒ある辺境伯家の筆頭執事ともあればこれくらいは普通かと」
にこにこ笑いながら冷めたお茶を飲んでいるジェスの隣で、ロナルドがぼそっと呟いた。
「いや、爺さんは性格悪いだろ……」
「何か?」
「うげっ、聞こえたのかよ……、いえ、何でもありませんジェスさん」
キラキラしい笑顔を向けられたロナルドは即座に視線をそらし、首を振った。
ジェスはティーカップをコトンと置くと、口の端を吊り上げてロナルドに言った。
「かつて辺境伯軍でアルータ負けなしだったあなたに言われたくありませんね。少しは手加減でもしたらどうです?大人げない」
「……」
(((お前がいうな)))
くしくも三人の心の声が一致した瞬間だった。
ほかほかと暖かい湯気と爽やかな香りを立ち昇らせたお茶が三人の前に置かれた。それとお皿に盛られた、シンプルなスコーンだ。
「わーい!!」
いち早く反応してジェスの方を大きな目で見つめたのはコリアだった。
「ね、食べていい?」
「はい、もちろん。お茶と交互にお食べください」
そういわれるが否や、コリアはスコーンにかぶりついた。お腹がすいていたのだろう。
ジェスはレリアにも進めようとしたが、コリアがそれをすっと止めた。
「ジェス、だめだよ。レリアは負けず嫌いなんだ、それに一度集中するとそれを邪魔されるのを極端に嫌う。久しぶりに楽しそうなんだ、邪魔しちゃだめだよ」
しーっと人差し指を唇に当てて静かに告げるコリアにジェスはほう、と頷いた。
「コリア様にはアルータは合いませんでしたか?」
「うーん、面白いとは思うけど、レリアほど夢中にはなれないかな」
ジェスはもう一度レリアとそれに対峙するロナルドを見た。アルータをしている最中なのにロナルドの口角が珍しく上がっている。
(これは、レリア様にはアルータの才能があるかもしれませんね)
ジェスは一人ごちた。
アルータは戦術ゲームの一種だ。二人が盤上の領地を奪い合う。ただ、そこに状況カードというものの作用でかなり複雑にもなるゲームだ。
例えば、領地戦最中に状況カードの影響でスタンピート、魔物たちの暴走が起こったり、疫病が起こったりといった様子だ。対人、対魔物など多角的に領地を守るゲームなのだった。
その複雑なゲームを若干つ六つで理解するのは天才と言うほかない。たとえこの国の貴族が魔力的な要因か遺伝的、もしくは加護的な要因により早熟だとしてもだ。
レリアがアルータをプレイするのを楽しそうに見物しているコリアを見て、ジェスはコリアをディプロアムビデ、ディアムに誘うことにした。
「それではコリア様、お手すきでしたら私のお相手をお願いいたしましても?」
コリアの瞳に興味の色が浮かんだ。
「ーーうん、いいよ。何をする?」
「では、こちらに」
展開しているアルータと少し距離を置いて、ジェスは対面で椅子を二つ用意した。
「これは?」
「ディプロアムビデ、ディアムと呼ばれているゲームです。ルールはプレイしながらということでいかがでしょう?」
「分かった、お手柔らかにね、ジェス」
にこにこ笑うコリアにジェスも綺麗な笑顔で答えた。
いつの間にか窓から差し込む光が赤く染まり、暖炉の炎が鮮やかに浮かび上がる時間になるころ、レリアは大声を上げた。
「あーー、か、て、な、い、勝てない!!」
両手を天に持ち上げ心底悔しそうに叫ぶレリアに、冷めたお茶を飲みほしたロナルドが頷いた。
「そりゃ、始めたばっかのレリア様に負けるわけにはいかんからな」
「ぐるーー、うーー」
唸っているレリアの少し離れた隣では、コリアがこちらも冷めたお茶をゆっくりと飲んでいた。
「では、今回も私の勝ちでございますね、コリア様」
「……そうだね、ねぇ、ジェスって実は性格が悪いって言われない?」
「さて、どうでしょう。由緒ある辺境伯家の筆頭執事ともあればこれくらいは普通かと」
にこにこ笑いながら冷めたお茶を飲んでいるジェスの隣で、ロナルドがぼそっと呟いた。
「いや、爺さんは性格悪いだろ……」
「何か?」
「うげっ、聞こえたのかよ……、いえ、何でもありませんジェスさん」
キラキラしい笑顔を向けられたロナルドは即座に視線をそらし、首を振った。
ジェスはティーカップをコトンと置くと、口の端を吊り上げてロナルドに言った。
「かつて辺境伯軍でアルータ負けなしだったあなたに言われたくありませんね。少しは手加減でもしたらどうです?大人げない」
「……」
(((お前がいうな)))
くしくも三人の心の声が一致した瞬間だった。
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