18 / 38
第三章 恋慕の行方
第十七話 意欲
しおりを挟む
刃に依頼の文を送ったのは、地種の領主――狐坂道明。つい二箇月前に前領主を打ち倒した新興勢力である。
勢力を興す時には新たに築城をすることが一般的だが、狐坂軍は乗っ取った城を改修して再利用する方針を取ったようだ。朽ちた城を修繕する者が、城壁沿いに黒山の人集りを形成している。
刃は城門を潜り、応接間へと案内されていた。座敷の中央に欅調の座卓があり、なんだか妙に凝った内装をした部屋である。
畳の上に敷かれた座布団の上に腰を掛けると、刃は大きく息を吸って溢れ出る気勢を昂らせていた。
『契約解除の打診があった際には、次の修羅狩りを見るまでは滞在しよう』――だとか、『如何なる理由であろうとも、領地から遠く離れた遠方への外出はやめさせよう』――だとか、反省を活かして様々な遣りようを考えていた。
神都では色々あったが、修羅狩りの威信に賭けて同じ轍を踏んではならない。
刃が遣る気を漲らせていると、ドタドタと廊下を駆ける音が聞こえてくる。
慌ただしい足音は応接間の前で止まり、向かって右側の戸が乱暴に開かれた。同時に顔を出した若い男は刃を見るなり、宝物を見付けたように目を輝かせている。
「お待たせ! よく来てくれたね、仔猫ちゃん」
「……こ……仔猫!? 何を言うか! わしは刃だ!」
「刃君のような、可愛い修羅狩りと契約ができるなんて嬉しいな!」
「か、可愛い……だと?」
何を言い出すのかと思えば、男は揶揄うように軽口を叩いてきた。
男は刃の向かいに座り、屈託のない笑顔をみせている。
「僕は狐坂道明。この地種の地を統べる者だ。よろしく!」
「よ、よろしくのう……」
彼が影武者である可能性が頭を過っていたが、刃は即座に否定した。
日輪の現状では、影武者を立てることは常套手段だ。影武者を護らせ、修羅狩りが信用を勝ち取った時に本性を明かす――なんてことが屡々行われている。駆け出しの修羅狩りが本物か否かを判断するために、これは妥当な手法だといえよう。
だが刃は歴七年の熟練者であり、その勇名は日輪中に轟いているはずである。
試されているとなると、刃にとっては不愉快極まりないことだ。
しかし目の前の男、影武者にしては我が強すぎる。領主らしからぬ異質な雰囲気を纏い、どう見ても国を背負う者だとは思えない。
しかし逆にそういった特徴が、彼を領主だと決定付ける材料となっていた。
道明は中性的な容姿を持ち、肌艶がよく目鼻立ちが整っている。幼さを醸し出す挙措から察するに、刃とそう変わらない年齢であると思われる。
ここまで若い領主は珍しく、刃はじっと道明を熟視していた。
「刃君……? どうかしたかい?」
「……道明よ、お主、いくつだ?」
「僕は今年で十八になる。刃君は?」
「わしは十六だ」
「十六歳か、いいね。僕と結婚してくれないか?」
「けっ……結婚!? わ、わしに結婚なぞ、まだ早いわ!」
「ははっ、冗談だよ。刃君は可愛いな」
「何だ……こ奴は……」
まだ挨拶を交わして間もないが、刃は既に疲れていた。言葉を掛けると茶化して返ってくるため、道明の巧みな言葉の勢いに刃は圧倒されている。
刃は異性に対しての免疫がない。他人に揶揄われたことさえ経験がない刃にとって、彼はこれまでに関わったことのない種類の人物だった。
初対面でここまで苦手意識を持った人物は目の前の男が初めてであるが、こんなふざけた男を今後は護ることとなるのだ。契約を結ぶ以上は、責務を全うしなければならない。頭が痛いが、これも日輪のためだと刃は己を奮い立たせた。
――少し経って、豪華な料理が運ばれてきた。
二人は食事を楽しみながら歓談し、契約内容を詰めた。
「報酬の話をしようか。月に五十貨鈔でどうかな?」
道明の言葉を聞き、刃は淀みなく動いていた箸を止めた。
「……ん? 五十と言ったのか? それは多いな。報酬は二十貨鈔でよい。こんなご時世に、そんな大金を受け取れぬ」
「これって大金なのかな? 命を預けるんだから、幾ら支払っても足りないぐらいだよ。領主にとって、修羅狩りは神様も同然なのだから!」
「そう言ってもらえるのは有難い。だが、わしには無用だ。その金を領民に還元してやってくれ。わしが言えた柄ではないがのう」
「そうか、わかった。今日は月初めだから、日割りなしで月末に支払うよ!」
「かたじけない」
道明は修羅狩りの仕事を理解し、労ってくれた。播宗と神都の事変で傷心だった刃は、胸の痛みが少し和らいだ気がした。
◇
食事が終わると、刃は領内を案内された。
城下町を含め、ほとんどの箇所が修繕中であった。まさにこれから、国を機能させる準備を整えていくところだろう。領地を取り囲む防塁は無残にも破壊されており、修繕の手が回っていない。このような状態では隣国にとって格好の餌食であり、修羅狩りがいなくては容易に滅ぼされてしまう危険な状態である。
修羅狩りとしての力量が試される。刃の不用意な優しさ、詰めの甘さが命取りとなり、播宗、神都は酷い目に遭ってきたのだ。侵入者を無傷で帰すなど、生易しいことをしている場合ではないのかもしれない。
佐越の領主から聞いた話だが、彼の地ではここのところ五年以上は殺し屋の襲撃がないそうだ。担当の修羅狩りがあまりに残虐非道で、誰にも手出しができなくなっているという。これこそが理想の形であり、修羅狩りの目指すところなのだ。
刃自身も己の枷を外し、敵を殺める必要が出てくるかもしれない。自分はどこまで残酷になれるだろうかと、自問自答してみたが答えは出なかった。
殺生のない世界を目指すために敵を殺めなければならないなんて、どこか間違っている気がしてならない。しかし幾度となく殺し屋と対峙してきたが、話し合いで解決できそうな輩はほとんどいなかった。
『殺し屋殺し』――それこそが修羅狩りたる所以である。
だが殺しを推奨するなど、殺し屋とどこが違うのだろうか。
もう幕府は存在しないのだから、かつての信条に縛られる必要はないだろう。しかし殺し屋を殺生せず、痛めつけて帰す行為にどれだけの効果があるだろうか。
誰よりも強い実力を持ちながら、刃は無力さを実感することがある。
『あくまで契約対象は個人だから』、『契約が切れたから』、『領主の指示に従ったから』――など、失態に対して規約に真っ当な言い訳は幾らでも思いつく。
だが稼業と言いつつも、修羅狩りは金を目当てにやっていることではない。
国を護り切れないなんて、修羅狩りとしての技量不足に他ならない。修羅狩り契約国が攻撃を受けるなど、そもそも絶対にあってはならないことなのだ。
勢力を興す時には新たに築城をすることが一般的だが、狐坂軍は乗っ取った城を改修して再利用する方針を取ったようだ。朽ちた城を修繕する者が、城壁沿いに黒山の人集りを形成している。
刃は城門を潜り、応接間へと案内されていた。座敷の中央に欅調の座卓があり、なんだか妙に凝った内装をした部屋である。
畳の上に敷かれた座布団の上に腰を掛けると、刃は大きく息を吸って溢れ出る気勢を昂らせていた。
『契約解除の打診があった際には、次の修羅狩りを見るまでは滞在しよう』――だとか、『如何なる理由であろうとも、領地から遠く離れた遠方への外出はやめさせよう』――だとか、反省を活かして様々な遣りようを考えていた。
神都では色々あったが、修羅狩りの威信に賭けて同じ轍を踏んではならない。
刃が遣る気を漲らせていると、ドタドタと廊下を駆ける音が聞こえてくる。
慌ただしい足音は応接間の前で止まり、向かって右側の戸が乱暴に開かれた。同時に顔を出した若い男は刃を見るなり、宝物を見付けたように目を輝かせている。
「お待たせ! よく来てくれたね、仔猫ちゃん」
「……こ……仔猫!? 何を言うか! わしは刃だ!」
「刃君のような、可愛い修羅狩りと契約ができるなんて嬉しいな!」
「か、可愛い……だと?」
何を言い出すのかと思えば、男は揶揄うように軽口を叩いてきた。
男は刃の向かいに座り、屈託のない笑顔をみせている。
「僕は狐坂道明。この地種の地を統べる者だ。よろしく!」
「よ、よろしくのう……」
彼が影武者である可能性が頭を過っていたが、刃は即座に否定した。
日輪の現状では、影武者を立てることは常套手段だ。影武者を護らせ、修羅狩りが信用を勝ち取った時に本性を明かす――なんてことが屡々行われている。駆け出しの修羅狩りが本物か否かを判断するために、これは妥当な手法だといえよう。
だが刃は歴七年の熟練者であり、その勇名は日輪中に轟いているはずである。
試されているとなると、刃にとっては不愉快極まりないことだ。
しかし目の前の男、影武者にしては我が強すぎる。領主らしからぬ異質な雰囲気を纏い、どう見ても国を背負う者だとは思えない。
しかし逆にそういった特徴が、彼を領主だと決定付ける材料となっていた。
道明は中性的な容姿を持ち、肌艶がよく目鼻立ちが整っている。幼さを醸し出す挙措から察するに、刃とそう変わらない年齢であると思われる。
ここまで若い領主は珍しく、刃はじっと道明を熟視していた。
「刃君……? どうかしたかい?」
「……道明よ、お主、いくつだ?」
「僕は今年で十八になる。刃君は?」
「わしは十六だ」
「十六歳か、いいね。僕と結婚してくれないか?」
「けっ……結婚!? わ、わしに結婚なぞ、まだ早いわ!」
「ははっ、冗談だよ。刃君は可愛いな」
「何だ……こ奴は……」
まだ挨拶を交わして間もないが、刃は既に疲れていた。言葉を掛けると茶化して返ってくるため、道明の巧みな言葉の勢いに刃は圧倒されている。
刃は異性に対しての免疫がない。他人に揶揄われたことさえ経験がない刃にとって、彼はこれまでに関わったことのない種類の人物だった。
初対面でここまで苦手意識を持った人物は目の前の男が初めてであるが、こんなふざけた男を今後は護ることとなるのだ。契約を結ぶ以上は、責務を全うしなければならない。頭が痛いが、これも日輪のためだと刃は己を奮い立たせた。
――少し経って、豪華な料理が運ばれてきた。
二人は食事を楽しみながら歓談し、契約内容を詰めた。
「報酬の話をしようか。月に五十貨鈔でどうかな?」
道明の言葉を聞き、刃は淀みなく動いていた箸を止めた。
「……ん? 五十と言ったのか? それは多いな。報酬は二十貨鈔でよい。こんなご時世に、そんな大金を受け取れぬ」
「これって大金なのかな? 命を預けるんだから、幾ら支払っても足りないぐらいだよ。領主にとって、修羅狩りは神様も同然なのだから!」
「そう言ってもらえるのは有難い。だが、わしには無用だ。その金を領民に還元してやってくれ。わしが言えた柄ではないがのう」
「そうか、わかった。今日は月初めだから、日割りなしで月末に支払うよ!」
「かたじけない」
道明は修羅狩りの仕事を理解し、労ってくれた。播宗と神都の事変で傷心だった刃は、胸の痛みが少し和らいだ気がした。
◇
食事が終わると、刃は領内を案内された。
城下町を含め、ほとんどの箇所が修繕中であった。まさにこれから、国を機能させる準備を整えていくところだろう。領地を取り囲む防塁は無残にも破壊されており、修繕の手が回っていない。このような状態では隣国にとって格好の餌食であり、修羅狩りがいなくては容易に滅ぼされてしまう危険な状態である。
修羅狩りとしての力量が試される。刃の不用意な優しさ、詰めの甘さが命取りとなり、播宗、神都は酷い目に遭ってきたのだ。侵入者を無傷で帰すなど、生易しいことをしている場合ではないのかもしれない。
佐越の領主から聞いた話だが、彼の地ではここのところ五年以上は殺し屋の襲撃がないそうだ。担当の修羅狩りがあまりに残虐非道で、誰にも手出しができなくなっているという。これこそが理想の形であり、修羅狩りの目指すところなのだ。
刃自身も己の枷を外し、敵を殺める必要が出てくるかもしれない。自分はどこまで残酷になれるだろうかと、自問自答してみたが答えは出なかった。
殺生のない世界を目指すために敵を殺めなければならないなんて、どこか間違っている気がしてならない。しかし幾度となく殺し屋と対峙してきたが、話し合いで解決できそうな輩はほとんどいなかった。
『殺し屋殺し』――それこそが修羅狩りたる所以である。
だが殺しを推奨するなど、殺し屋とどこが違うのだろうか。
もう幕府は存在しないのだから、かつての信条に縛られる必要はないだろう。しかし殺し屋を殺生せず、痛めつけて帰す行為にどれだけの効果があるだろうか。
誰よりも強い実力を持ちながら、刃は無力さを実感することがある。
『あくまで契約対象は個人だから』、『契約が切れたから』、『領主の指示に従ったから』――など、失態に対して規約に真っ当な言い訳は幾らでも思いつく。
だが稼業と言いつつも、修羅狩りは金を目当てにやっていることではない。
国を護り切れないなんて、修羅狩りとしての技量不足に他ならない。修羅狩り契約国が攻撃を受けるなど、そもそも絶対にあってはならないことなのだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ぬらりひょんのぼんくら嫁〜虐げられし少女はハイカラ料理で福をよぶ〜
蒼真まこ
キャラ文芸
生贄の花嫁は、あやかしの総大将と出会い、本当の愛と生きていく喜びを知る─。
時は大正。
九桜院さちは、あやかしの総大将ぬらりひょんの元へ嫁ぐために生まれた。生贄の花嫁となるために。
幼い頃より実父と使用人に虐げられ、笑って耐えることしか知らぬさち。唯一の心のよりどころは姉の蓉子が優しくしてくれることだった。
「わたくしの代わりに、ぬらりひょん様に嫁いでくれるわね?」
疑うことを知らない無垢な娘は、ぬらりひょんの元へ嫁ぎ、驚きの言葉を発する。そのひとことが美しくも気難しい、ぬらりひょんの心をとらえてしまう。
ぬらりひょんに気に入られたさちは、得意の洋食を作り、ぬらりひょんやあやかしたちに喜ばれることとなっていく。
「こんなわたしでも、幸せを望んでも良いのですか?」
やがて生家である九桜院家に大きな秘密があることがわかり──。
不遇な少女が運命に立ち向い幸せになっていく、大正あやかし嫁入りファンタジー。
☆表紙絵は紗倉様に描いていただきました。作中に出てくる場面を元にした主人公のイメージイラストです。
※エブリスタと小説家になろうにも掲載しておりますが、こちらは改稿版となります。
AGAIN
ゆー
キャラ文芸
一話完結の日常系ショートショート
キャラデザ→りんさん 挿し絵→二号さん
中学生の頃から細々続けているもの。永遠に完結しない。
どこから読んでも大丈夫なはず。
現在整理中
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あけぬ帳の、アヤカシ帖
ツムギ
キャラ文芸
ここは人間と妖が存在する世界。
俺は高槻朔夜(たかつきさくや)。多くの妖が跋扈する龍藍帝国の帝都、楓樂都(ふうがくと)の軍に呼び付けられた。
俺は妖研究をしていたから妖討伐を任務とする妖討伐軍の手伝いだろうと思ったいた。
しかし、蓋を開ければ妖討伐軍の零番隊と言う聞いたこともない部隊の隊長になり、隊員である狂人男、千羽織鶴(せんばおりづる)と共に妖関係の事件を追う羽目になった。
なぁ、神様がいるなら教えてくれ…。俺が一体何をしたと言うのだ?
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
訛り雀がチュンと鳴く
福山陽士
キャラ文芸
高校一年生の少年の前に雀の妖怪が現れる。それは昔、少年が拾って育てていた雀だった――。
少年が妖怪や幽霊と触れ合う、ひと夏の物語。
※「アルファポリス第7回ドリーム小説大賞」にて大賞受賞作
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
郷土料理女子は蝦夷神様をつなぎたい
松藤かるり
キャラ文芸
お客様は蝦夷の神様!?
北海道ならではマニアック郷土料理で、人と蝦夷神様の想いをつなぐご飯。
北の大地に、神様がいるとして。
自然のあらゆるものに魂が存在すると伝えられ、想いの力から誕生した蝦夷神様。その足跡は北海道の各地に残っている。
だが伝承を知る者は減り、蝦夷神様を想う人々は減っていた。
北海道オホーツク沿岸の町で生まれ育った鈴野原咲空は札幌にいた。上京資金を貯めるためバイトを探すも、なかなか見つからない。
そんな矢先『ソラヤ』の求人広告を見つけ、なんとか店まで辿り着くも、その店にやってくるお客様はイケメンの皮をかぶった蝦夷神様だった。
理解を超える蝦夷神様に満足してもらうため咲空が選んだ手段は――郷土料理だった。
さらには店主アオイに振り回され、札幌を飛び出してオホーツク紋別市や道南せたな町に出張。
田舎嫌いの原因となった父とのわだかまりや、今にも人間を滅ぼしたい過激派蝦夷神様。さらには海の異変も起きていて――様々な問題起こる中、咲空のご飯は想いをつなぐことができるのか。
・一日3回更新(9時、15時、21時)
・1月20日21時更新分で完結予定
***
*鈴野原 咲空(すずのはら さくら)
本作の主人公。20歳。北海道紋別市出身
*アオイ
ソラヤの店主。変わり者
*白楽 玖琉(はくら くる)
咲空の友人
*山田(やまだ)
Ep1にて登場。蝦夷神様
*鈴木(すずき)
Ep2にて登場。蝦夷……?
*井上(いのうえ)
Ep3にて登場。蝦夷神様の使い
*磯野(いその)
Ep3にて登場。蝦夷神様
*鈴野原 ミサキ(すずのはら みさき)
咲空の母。北海道せたな町出身
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる