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古河さかえ

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第十二話 『兄弟』

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登場人物

 カツイ(15・男) 
 トバ(15・男) 
 ゲッカ(13・男) 
 ハナ(13・女) 
 ソウマ(17・男) 
 サクラ(16・女) 
 ヒカル(18・男)

〇近所の公園 
SE(足音) 
トバ「カツイくん……はあっ……待ってよ……」 
SE(風の音) 
トバ「……カツイくん?」 
カツイ「どうしても助けに行きたいなら、お前らだけで行けよ。俺は行かない」 
トバ「ねぇなんでそこまでソウマさんのこと……」 
SE(足音) 
ゲッカ「カツイせんぱーい! はあっ……もうっどこ行っちゃったんだろうカツイ先輩」 
ハナ「(声を潜めて)ゲッカ、こっちこっち」 
ゲッカ「ハナ! 先輩たち見つかったの?」 
ハナ「しっ、おっきな声出さないで」 
SE(ガサガサ 茂みに隠れる音) 
ハナ「サクラさんは?」 
ゲッカ「用事が出来たって言って行っちゃった。今はユエが留守番してミナリくんを見てるよ」 
ハナ「ん、そっか」 
ゲッカ「先輩たちは……」 
SE(ガサッ 草を掻き分ける) 
カツイ「アイツはいつも俺から色んなものを奪う」 
トバ「ソウマさんがカツイくんからなにを奪ったの」 
カツイ「二年前のことだって! アイツが裏切ったからユキは連れ戻されちまったんじゃねーかよ!」 
トバ「カツイくんさ、ユキさんのこと好きだったの?」 
カツイ「それは今関係ねーだろ!」 
トバ「否定しないってことは本当なんだね……二年前のことだって、別にあれはソウマさんのせいじゃないじゃない。そんな逆恨みでいつまでも……」 
カツイ「(遮って)逆恨みなんかじゃねえ!!  アイツはいつも、いつだって……」 
ゲッカ「……あれ?」 
ハナ「どうしたの? ゲッカ」 
ゲッカ「二人の会話、なんかおかしくない?」 
ハナ「どこがおかしいの?」 
ゲッカ「なんていうかこの感じだと……」 
トバ「だからソウマさんが痛い目見ればいいの? それでカツイくんの気が済むの? もしそれでソウマさんが死んじゃったとしても?」 
カツイ「なっ……っつ、そうだよ。アイツがどうなろうが俺には関係ねえ」 
トバ「(怒りを抑えながら小さな声で)なんで……なにひとつ覚えてないんだよっ……あの人の目の事だって……」 
カツイ「じゃーな。そういうことだからよ」 
SE(ザッと歩き出す) 
トバ「っ、もう! ソウマさん……ヨシイさんの事が心配じゃないの!? たった一人のお兄さんでしょ!?」 
ハナ「ええっ!?」 
ゲッカ「ソウマさんが……カツイ先輩のお兄さん!?」 
SE(ガサガサっ) 
トバ「ゲッカくん……ハナちゃんも……」 
カツイ「ちっ」 
SE(ダッと走り去るカツイ) 
ゲッカ「あっ、カツイ先輩!」 
トバ「(すかさず)追わなくてもいいよ、ゲッカくん」 
ハナ「あの、トバ先輩……さっきの話……」 
トバ「ん? ああ、ユキさんからの手紙には書いて無かったのかな。ソウマさんは相馬良衣(ソウマ ヨシイ)さんっていって、カツイくんの実のお兄さんなんだよ。カツイくんも相馬克衣(ソウマ カツイ)だしね」 
ゲッカ「僕ずっと、カツイ先輩の苗字はアイバだと思ってました。表札にも書いてあったし」 
トバ「ああ、『相手の馬』って書いたら普通アイバって読むよねえ。だけど読み方はソウマなんだよ」 
ハナ「私も……『ヨシイさん』ってずっと苗字だと思い込んでた」 
トバ「あはは、紛らわしいよねあの人の名前。ちなみにサクラさんも苗字だよあれ。『櫻の内』で櫻内由華(オウウチ ユカ)さんって名前だからね」 
ハナ「カツイ先輩って、お姉ちゃんのことが好きだったのかな……」 
トバ「それはあったかもしれないけど、今は多分……」 
   ハナに視線が集まる 
ハナ「え、どうしたんですか二人共急に私を見たりして」 
トバ「ああいやごめんねなんでもないよ。それに当時ユキさんはソウマさんと付き合ってたんじゃないかなって僕は思うよ。それもあってカツイくんは余計に、ね」

〇地下牢 
SE(ガァンッ と鉄と鉄がぶつかる音) 
ソウマ「はあっ……はあっ……」 
SE(カランッと鉄パイプを床に落とす) 
ソウマ「早く……ここから出なければ……二人の身に危険が……」 
ソウマ(M)「ユキのような目には!!」 
SE(ガンッ 両手で檻を掴む) 
SE(コツコツコツ 足音) 
ソウマ(M)「足音……会長か?」 
サクラ「あーいたいた。ヨシイさん、無事か?」 
ソウマ「サクラさん!? どうして此処に……それに、その格好は一体……」 
サクラ「似合うだろ? メイド服。この屋敷のメイドとして潜り込んだんだよ。どう?」 
SE(シャラララン) 
ソウマ「ええ、とても良くお似合いですよ」 
SE(その場に座り込む音) 
サクラ「今、トバ達がアンタの救出作戦を立ててる」 
ソウマ「トバさん達が……? いけない、無謀です。何より此処に来させてはいけない」 
サクラ「まあそう言うと思ってたけどさ。何よりゲッカ達もアンタの救出にノリノリだ」 
ソウマ「飛んで火に入る夏の虫じゃないですか……」 
サクラ「ヨシイさんに言われたから、様子見にあの家戻ったけど。ヨシイさん最近カツイと何かあった? ヨシイさんに対する刺々しさが前より増してんだけど」 
ソウマ「調子に乗って乗り込んできたので適当にあしらって沈めました」 
サクラ「あははっ、ヨシイさんらしいや!」 
サクラ「ヨシイさんそういえば眼鏡は?」 
ソウマ「会長に奪われました」 
SE(シャラン 金属の鎖の音) 
ソウマ「サクラさん、これを」 
サクラ「懐中時計? 随分古そうなものだけど……」 
ソウマ「中に両親の写真と、弁護士の連絡先が入っています」 
サクラ「弁護士?」 
ソウマ「彼が望むなら、弁護士が両親に会わせてくれるでしょう」 
サクラ「両親って……生きてんの? ソウマさんもカツイも施設育ちだろ?」 
ソウマ「生きています。ただ、一緒に暮らす事が出来なかったんです。彼が連絡を取れば、その理由も自ずと分かるでしょう」 
サクラ「これをあたしからカツイに渡せって?」 
SE(シャラン 金属の鎖の音) 
ソウマ「私が兄として彼にしてやれる事はもうこの位しか残っていませんから……」 
〇回想 
カツイ「もう俺の前から消えてくれ!」 
   回想終わり 
ソウマ「それに……私は『彼』を見捨てる事が出来ない……」 
サクラ「『彼』、って……」 
SE(カツカツカツ 足音) 
ソウマ「誰か来た。サクラさん、そこの奥に隠れてください」 
サクラ「え、ええ!?」 
SE(パタパタパタッ 隠れる足音) 
SE(カツカツ 足音) 
ヒカル「やあ、調子はどう?」 
サクラ(M)「あいつ……」 
ソウマ「ええ、お陰様で」 
ヒカル「そろそろ気が変わった頃じゃないかなと思ってね」 
ソウマ「ああ、その件ですか……」 
ヒカル「それじゃあ答えを聞かせてくれる? 今まで通り僕に付き従うのか、ここで飼い殺されるか」 
ソウマ「会長、私は……」 
SE(ピチャン 水音)
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