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二十三話
しおりを挟む「レイ気をつけてね」
「はい、ベルティア様。ルミ、ベルティア様を頼んだよ」
「ええ、もちろんよ」
今日はレイが城に向かう日。
王家からの依頼ということ私たちは王都にある別邸に移っていたので城まですぐだ。
母様も付いて来てくれたので安心である。
そうしてレイは馬車に乗り込み城へと向かっていった。
レイを見送るとルミが話しかけて来た。
「レイも頑張っていますし私も頑張ろうと思います!」
「え、何を?」
私は鋭くないのでそれじゃあ何もわからないのだ。そんな微妙そうな顔をしないでおくれよ。
「魔法ですよ。それ以外にも色々と」
「たしかに魔法は私も頑張りたい」
そう言うと他にも頑張ってくださいよと笑われた。笑われたというより苦笑いだ。
「私には傷を癒すという魔法があります。でもちゃんと練習をしておかなければいざという時に使えないと思うんです」
たしかにそうだろう。しかし別に学園に入ってから学ぶでも遅くはない気がするが。
レイの場合は少しでも早く使えるようになって周りを認めさせる事が必要だったから必死に特訓した。しかしルミはその必要がないので今すぐ使えないといけないということはない。
そう言うとルミはいいえと首を横にふる。
「レイには負けていられません」
「負けず嫌いなのね」
「そ、それもありますけど」
あるのか…いや、負けず嫌いってのは大事だよね。うん。
「いつ何が起こるのかわからないじゃないですか、何が起こってもいいように出来ることは増やした方がいいと思うんです」
まあ、たしかに。正論である。
だから特訓したいんですと意気込むルミを見て私もやる気が出てきた。
「じゃあ私も一緒に頑張るわ!」
「そうしましょう」
ということで、特訓しようとした私たちは気がついた。
「怪我の治癒って言っても怪我してる人いなくない?」
「あっ…」
私たちは初っ端から躓いた。
どうしようと話し合った結果とりあえず魔力の扱いの練習をしようということになった。
魔導具を使う。指定された魔力量を魔導具に流すことで魔力の調節を上手くするというものだ。
魔法を発動させるには的確な魔力量を使わなくてはならない。多すぎても少なすぎても発動しない。つまり魔法を使うにあたって大事なものだ。
一応前からやっていたが今日は速さも重視してみよう。指定されたらどれだけ早く流せるのか、早いほど魔法の発動もすぐに出来る。
私は不器用なので少し考えてからじゃないとできない。
それを克服するのだ。
ちなみにレイもルミも私より断然早い。うん、知ってた。
「では始めましょうか」
「ですね」
そう言って私たちはさらなる高みを目指してひたすらに魔力を流すのだ。
そして私は魔力不足で倒れた。
ルミは大丈夫なのになぜ?と思ったら私とルミは持っている魔力量が違うという事を思い出した。
忘れていた…不覚。
ルミのベルティア様~と焦った声が聞こえるが起き上がる事など不可能。
…無念。
でも安心してほしい。眠れば自然回復するんで。
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