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第2章 波乱
第20話 爆弾投下
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言いたかったこと、聞きたかったことを、私が手を上げる前に全部裁判長が言ってくれた。きっとこれを以心伝心って言うんだろう。やがて、そんな裁判長の追加質問に、涙を溢し続ける美也子が再び供述を始めた。
「どうしても琢磨君にトップになって欲しくて......だからあたし、あたし、ついつい結衣のブリーフケースからあなたのタブレットを盗み出してしまった。もうどうしよう......あたしったら」
By 被告人 美也子
「な、なんだって?! そんなもん渡す為に今日ここに来たって言うのか? 勘弁してくれ! 営業成績何てもんは自分の実力で勝ち取らなきゃ何の意味も無いだろ。だいたい今日だって、結衣のことで伝えたいことが有るって言うから家に上げたんだ。それも嘘なのか?!」
By 参考人 琢磨
「そっ、それは嘘じゃ無い......」
By 被告人 美也子
「だったら今話せよ。俺と結衣の前でさ」
By 参考人 琢磨
「ちょっと待った。話が完全にズレて来てる。まずはタブレットの話からケリをつけよう。他の話はその後だ。つまり......被告人は琢磨氏の営業成績を上げさせる為に、今日夕方、隙を見て原告のブリーフケースからタブレットを盗み出した。
それを今日ここでデータのコピーを取って琢磨氏に渡そうと思ってた。それで琢磨氏はそんなことまるで知らなかった......そう言うことで間違い無いんだな」
By 裁判長 喜太郎
「間違い......有りません」
By 被告人 美也子
「そうらしいな」
By 参考人 琢磨
「宜しい。それじゃあ、まずはこいつを原告に返しておこう」
喜太郎さんはタブレットを手に取ると、それをそのまま私に手渡してくれた。間違い無い......これは私のタブレットだ。
「結衣さん......美也子さんは自分の犯した罪を認め謝罪した。タブレットも無事戻って来たしな。あとは結衣さん次第ってことになるんだが......どうする?」
つまりそれは、この話を大きくするかどうかってことなんだろう。具体的には、警察に言うとか会社に報告するとか、かな?
もちろんこんな重大な事件を、ごめんの一言で済ませたいとは思わない。かと言って、話を大きくしても、自分が会社に行きづらくなるだけだ。もうこの話は終わりにしたい......そんな気持ちの方が勝っていたことは、紛れも無い事実だった。
今回の一件で、私は間違いなく美也子を親友と呼べなくなるだろう。また今までみたいに2人で飲みに行くことも無くなると思う。彼女は今回の件で大事な親友を一人失った......それだけで十分なんじゃないかな......
「タブレットも無事戻って来たし、この件はもう終わりでいいです」
By 私
敢えて美也子から目を反らし、わざと多くを語らなかった。何となくだけど、私の突き放す気持ちが伝わったんじゃないかな......これくらいはいいでしょう。
「そうか......ならばもう一度確認しておく。タブレット紛失の件に関しては、これで一件落着ってことでいいんだな?」
By 喜太郎さん
「結衣がいいんなら、それでいいんじゃないか?」
By 琢磨君
「結衣が許してくれるんなら......それで」
By 美也子
「私はそれで結構」
By 私
「ならばこれでタブレットの話はOK。裁判形式はここまでにしておこう。それでなんだが......もしかしたらここからが本題なのかも知れんな」
「確かに」私
「美也子には少し聞きたいことが有る」琢磨君
「......」美也子 無言。
因みに......さっきの話の内容だと、どうやら美也子は私のことで話が有るって言って、今日ここへ来たらしい。何だかよくは分からないけど、美也子は私と琢磨君に隠し事をしてるとしか思えない。何か陰謀めいたことを感じるのは私だけなんだろうか......
するとそんな私の想いが伝わったのか、いきなり喜太郎さんが突破口を開いてくれた。
「美也子さん......俺はさっきからあんたと琢磨氏の様子を見てて、ある結論に達してる。それを俺の口から話してもいいんだが、これから先のことを考えると、やっぱあんたが自分の口で話しといた方がいいんじゃないかと思ってる。でもまぁ、その判断はあんたに任せるが......」
「......」
一方、そんな喜太郎さんの提案に、美也子は下を向いてただ身体をブルブル震わせてるだけで、一向に口を動かす様子を見せない。話す気が無いのか、それとも言葉が出て来ないのかは分からない。
ただいつまで待ったところで美也子がその重い口を開くとは思えなかった。やっぱここで話せないような大きな隠し事が有るんだと思うわ。
そんな美也子の沈黙にしびれを切らせたのか、喜太郎さんはここでも飛んでもない爆弾発言を炸裂させたのである。それはもう何と言うか......地球が爆発してしまう程の破壊力だった。一体どんな発言だったのかと言うと......
「琢磨氏を振ったのも、結衣さんを振ったのも、実は君だったんじゃないのか?」
ドッカ~ン! ガタガタガタッ!
「どうしても琢磨君にトップになって欲しくて......だからあたし、あたし、ついつい結衣のブリーフケースからあなたのタブレットを盗み出してしまった。もうどうしよう......あたしったら」
By 被告人 美也子
「な、なんだって?! そんなもん渡す為に今日ここに来たって言うのか? 勘弁してくれ! 営業成績何てもんは自分の実力で勝ち取らなきゃ何の意味も無いだろ。だいたい今日だって、結衣のことで伝えたいことが有るって言うから家に上げたんだ。それも嘘なのか?!」
By 参考人 琢磨
「そっ、それは嘘じゃ無い......」
By 被告人 美也子
「だったら今話せよ。俺と結衣の前でさ」
By 参考人 琢磨
「ちょっと待った。話が完全にズレて来てる。まずはタブレットの話からケリをつけよう。他の話はその後だ。つまり......被告人は琢磨氏の営業成績を上げさせる為に、今日夕方、隙を見て原告のブリーフケースからタブレットを盗み出した。
それを今日ここでデータのコピーを取って琢磨氏に渡そうと思ってた。それで琢磨氏はそんなことまるで知らなかった......そう言うことで間違い無いんだな」
By 裁判長 喜太郎
「間違い......有りません」
By 被告人 美也子
「そうらしいな」
By 参考人 琢磨
「宜しい。それじゃあ、まずはこいつを原告に返しておこう」
喜太郎さんはタブレットを手に取ると、それをそのまま私に手渡してくれた。間違い無い......これは私のタブレットだ。
「結衣さん......美也子さんは自分の犯した罪を認め謝罪した。タブレットも無事戻って来たしな。あとは結衣さん次第ってことになるんだが......どうする?」
つまりそれは、この話を大きくするかどうかってことなんだろう。具体的には、警察に言うとか会社に報告するとか、かな?
もちろんこんな重大な事件を、ごめんの一言で済ませたいとは思わない。かと言って、話を大きくしても、自分が会社に行きづらくなるだけだ。もうこの話は終わりにしたい......そんな気持ちの方が勝っていたことは、紛れも無い事実だった。
今回の一件で、私は間違いなく美也子を親友と呼べなくなるだろう。また今までみたいに2人で飲みに行くことも無くなると思う。彼女は今回の件で大事な親友を一人失った......それだけで十分なんじゃないかな......
「タブレットも無事戻って来たし、この件はもう終わりでいいです」
By 私
敢えて美也子から目を反らし、わざと多くを語らなかった。何となくだけど、私の突き放す気持ちが伝わったんじゃないかな......これくらいはいいでしょう。
「そうか......ならばもう一度確認しておく。タブレット紛失の件に関しては、これで一件落着ってことでいいんだな?」
By 喜太郎さん
「結衣がいいんなら、それでいいんじゃないか?」
By 琢磨君
「結衣が許してくれるんなら......それで」
By 美也子
「私はそれで結構」
By 私
「ならばこれでタブレットの話はOK。裁判形式はここまでにしておこう。それでなんだが......もしかしたらここからが本題なのかも知れんな」
「確かに」私
「美也子には少し聞きたいことが有る」琢磨君
「......」美也子 無言。
因みに......さっきの話の内容だと、どうやら美也子は私のことで話が有るって言って、今日ここへ来たらしい。何だかよくは分からないけど、美也子は私と琢磨君に隠し事をしてるとしか思えない。何か陰謀めいたことを感じるのは私だけなんだろうか......
するとそんな私の想いが伝わったのか、いきなり喜太郎さんが突破口を開いてくれた。
「美也子さん......俺はさっきからあんたと琢磨氏の様子を見てて、ある結論に達してる。それを俺の口から話してもいいんだが、これから先のことを考えると、やっぱあんたが自分の口で話しといた方がいいんじゃないかと思ってる。でもまぁ、その判断はあんたに任せるが......」
「......」
一方、そんな喜太郎さんの提案に、美也子は下を向いてただ身体をブルブル震わせてるだけで、一向に口を動かす様子を見せない。話す気が無いのか、それとも言葉が出て来ないのかは分からない。
ただいつまで待ったところで美也子がその重い口を開くとは思えなかった。やっぱここで話せないような大きな隠し事が有るんだと思うわ。
そんな美也子の沈黙にしびれを切らせたのか、喜太郎さんはここでも飛んでもない爆弾発言を炸裂させたのである。それはもう何と言うか......地球が爆発してしまう程の破壊力だった。一体どんな発言だったのかと言うと......
「琢磨氏を振ったのも、結衣さんを振ったのも、実は君だったんじゃないのか?」
ドッカ~ン! ガタガタガタッ!
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