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Trust
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しおりを挟む俺、もうなんて言って良いかわかんねえよ。
笑うとこ?これ、笑って良いのか!?
「これをどうやって食え、と」
香田さんは両手で小さいスイカを持って、呆然とした顔で呟いた。
俺は、笑いそうになるから口押さえて下向いた。
「スイカはなあ、いや、皮剥くっつうか。せめて切って欲しいよなあ」
テーブルの上に、スイカをごろん、と転がして。
「まあ、良いわ。弁当食いながら考えよう」
弁当食い始めたから、俺もぼそぼそ食い始めた。俺は口開けると笑い声が出そうになるし、なるべく口開けねえ様に弁当食った。
「ああ、なるほどね。今日は事務所だしな、そう言う事?さすが俺の嫁」
弁当食い終わったらしく、スイカ持って香田さんがどっか行った。
奥さんの顔とか、小さいスイカとか。
あー、我慢出来ねえっ。
会議室で一人爆笑してたら。
「笑ってんじゃねえよ」
香田さんが切ったスイカ二切れ持って帰ってきた。
「ほら、お前の分」
俺に一切れくれた。
「事務のおばちゃんに給湯室で切ってもらったわ。今日事務所だかんな、包丁あることくれえ嫁はわかってたワケだな。ホント、嫁といると飽きねえわ」
奥さん愛想良くねえけど、楽しそう。
「香田さん、子供つくらないんすか?」
俺としてはただ興味あっただけなんだけど。
「あー、俺の嫁はなあ。昔、俺と知り合う前だけど、事故で流産してんだよな。そんで自然に妊娠すんのは難しくなったんだよな」
「え…」
「そりゃあ、俺もすんげえ子供欲しかったけどなあ。まあ、金出せば可能性はあるけど、不妊治療とか嫁の身体に負担かかるし、上手くいかなきゃ精神的にもプレッシャーなったり、辛いだろうしな。俺は嫁がそんな思いすんのは嫌だからな。二人でいて充分幸せだし、それだけで良いんだよ」
俺、なんかいけない事聞いた気がする。
「お前は素直な性格してると思うよ。それが取り得だろうけど、短所にもなるから気をつけろよ」
やっぱ、いけない事聞いたんだな。
「俺は別に構わねえけどさ。子供いない夫婦に、そう言う事軽々しく聞くなよ?好きでつくらねえのかも知れねえけど、事情があって出来ねえ事もあるからな。特に女性には気をつけろ」
「…すいません」
「仕事の相手はほとんど女性だしな。ホストやってて気遣いとかは出来るだろうが、思いやりも覚えねえとなあ。彼女に対しても自分押し付けてばっかじゃなくて、相手を思いやらねえとな」
香田さんの言葉は、結構ずっしり来た。
俺は、まだまだガキんちょだなあ。
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