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てらだりょう

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大脳皮質

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「あの、さっちゃあん?すんげえ旨そうなんだけど、フライパンじゃなくてせめて皿に盛ろうよ」

「胃に入れば同じでしょ」

「いやいやいや、今日は後輩も来てる事だし、せめて皿に」

なんか、変わった夫婦だな。

結局、でっかい皿にハンバーグのトマトソース煮込みがのっかって。ガラスのボウルに山盛りになった野菜。

まさか、皿から直接ハンバーグ食うのか、と思ったら香田さんが取り皿くれた。料理はするけど、食事を楽しむ事が無いって、なるほど。

「あ、お前なに飲む?俺焼酎のロック作るけど」

香田さんが、奥さんの前にお茶の入ったグラス置きながら言った。

「あっ、じゃあ俺もロックで」

和やか、と言うか。奥さんは黙々とご飯食べて。俺もハンバーグ大好きだから頂きますして。

うわ。めちゃ旨え。

「さっちゃん、毎日弁当作ってくれて俺はホンット嬉しいんだよ。さっちゃんの作るメシはマジで旨いと思ってるよ。けど、今度からキウイはせめて皮剥いてくんねえかな?」

香田さんは、キウイをかぶりついて皮だけ出す、と言う荒技で食べた。

「春人なら食べれると思った」

「いや、そりゃ食ったけどさあ」

香田さんの弁当思い出すと、ちょっと笑える。と、なに?はると?

聞いた事あるような。はると?

「あの…香田さんて昔の源氏名なんだったんですか?」

「あん?あー、如月ハルト」

きさらぎはると。って。俺らの間じゃ。

伝説のホスト。だよっ!!

俺ら、て言うか尊さんの前の世代。

超すげえホストがいたらしい。街にホストクラブはたくさんあるけど。

尊さんも街中で一番くれえに有名なホストだったけど。尊さんがトップ取る前の世代に怖ろしいホストがいた。

伝説じゃ客にSクラスのベンツプレゼントされたとか。

「あー、あれな。ちょっと擦っても修理代がバカみてえに高いから友達にやった」

誕生日の一日の稼ぎでフェラーリ買ったとか。

「買ったのは良いんだけどさあ、やたらとガソリン食うしな。何回か乗って売っぱらった」

客がプレゼントの代わりに、ハワイの最高級ホテルのスウィートルームいつでも使って良い権利買ってくれたとか。

「そんな、言うほどハワイなんて行かねえって。今も使えるからお前行ってみる?」

あとブレゲの超高い時計とか何個も持ってて。なんだ、今もよく見たらフランクミュラーのクレイジーアワーじゃん。

「まあ、時計はなんかあった時に売れるから今も持ってるけど」

そんだけ凄かったんだから、街中の顔役が知り合いでもおかしくねえか。

はあ。なんか気が抜ける。

そんだけ凄かった人が今はサラリーマンしてて、言っちゃ悪いけどぼろいマンションに住んでて。

「ホントは公団で良かったんだけどなあ。俺とさっちゃんの稼ぎ合わせたら収入の上限こえたからなあ。見栄えとかどうでも良いんだよ。俺の稼ぎでそれに見合った暮らしで充分なんだよ」

尊さんはみのりさんに不自由させたくなくて、頑張ってるって言ってたけど。

「俺はさっちゃんがいてくれたら河川敷の掘っ立て小屋でも構わねえけどさ」

「それは困る。電気が無いと仕事が出来ん」

「も、さっちゃあん?そこは嘘でもついてくから、とか言ってくんねえ?」

香田さんが奥さんのほっぺたにキスしようとしたら。

「むっ」

奥さんが手のひらでブロックする。

面白えな、この人達。確かに奥さんは愛想良くねえけど。香田さんは昔の栄光より、奥さんとつつましく暮らしてえんだろうな。

俺はどうなんだろ。

ちいさんとどんな風に生きていきてえんだろ。

漠然とし過ぎてわかんねえな。

「んで、お前さあ。どうすんの、夜続けるのか?」

いきなり香田さんが話過去に戻す。

「ブティックの買い取り営業ってな、相手も殆ど女性だし、信頼関係で営業すんのはホストやって経験あるんだからそれは活かせる」

それはそうだよな。でもなあ、生活費の問題もあるし、店もすぐには辞められねえしなあ。

「辞めるつもりがあるなら、俺が直樹さんに話してやるよ」

あら?俺、追い込まれてるよ?




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