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大脳皮質
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しおりを挟む「…で、なんだよ。相談って」
俺の眼の前には超不機嫌な尊さん。
しかも、こないだは高級料理屋だったのに、今日はファミレスだし。
尊さんが650円の和定食だから、俺はそれ以上高いの頼めねえし同じくらいのグリルチキンセット。
「お前、タバコあるか?」
イラついた顔で尊さんが言う。
「ああ、お前吸わねえんだっけか」
「買ってきましょうか?」
入り口に自販機あるけど。て、あのなんとかってカード無いと買えねえのか。別にコンビニ行っても良いけど。
「…いや、良い。どうせ止めたし」
イラつくくれえなら吸っちゃえば?とか思うけど。
「みのりさんと付き合いだしてから、いつ子供出来ても良い様にみのりさんの前じゃあんま吸わねえ様にしてたんだ。出来てからは完全に止めたけどな」
ホント、みのりさん好きだよなこの人。社長が言うみてえに女で変われるのが幸せなら尊さんは幸せだよな。もちろん、俺もすっごい幸せだけどっ。
運ばれてきた料理食べながら、彼女のためにこのままじゃいけねえと考えた俺の想いをだな。ホントは熱く語りてえとこだけど、尊さんの機嫌が悪いから控えめに言ってみた。
出来れば、ウチの会社来るか?、って言って欲しいんだけど。
「お前の彼女って警察官なのか」
「そっす。ちょっと前に警部さんになりました」
「は?なんだ、それ。若いのに警部、ってずいぶんエリートだな」
「まあ、若いっても俺より十歳上ですけどね。けど、おばさんじゃねえっすよ?すんごい綺麗だから」
尊さんがちょっとびっくりした顔した。そう言えば、こないだはそこまで詳しく話してねえか。
「お前、よくそんなのと付き合えたな」
「そりゃ、俺頑張りましたもん。本気で好きだから。一回諦めようと思ったけどどうしても諦めきれねえで…マジ、大好きですもん」
真面目に将来の事考える様になったくれえに大好き。ちいさんのために自分を変えたいくれえ好き。あ、やっぱ俺って幸せなんだなあ。
ちいさんの事想うとにやけそうになる俺と反対に、尊さんは渋い顔。
「社会的立場もあって年も離れてて、それでよくお前みてえなガキんちょと付き合う気になったもんだな…しかもホストだし」
むう。そこまで言う?確かにガキんちょだけどお。
「そりゃ、彼女もずっと本気で相手してくれなかったすよ?立場とか色々あるし仕事の事とかもあるし、でも俺の事一人の人間として見てくれたんすよ。だから好きって言ってくれたときはもう!俺はホントに」
おっと、つい惚気そうになる。尊さんが嫌な顔してるから止めとこ。
「…別に、彼女は俺の仕事の事とかなんにも言わねえんすけど。先々、俺が水商売やってたらマズい事あるかもしんねえしですね」
だから、なんとかしてくんねえかな。
「まあ、俺もみのりさんの事考えて仕事変えたからお前の気持ちはわかるんだけどな。けどお前、ろくに就職した事ねえだろ。水商売から足洗うのは良いけど、その後どうしてえんだ」
ちょ、だからそれを相談しに来たんですよっ!
「あ…いやその…尊さん顔広いから…その」
「コネ、っつっても、多少はスキルあるとか業界知識あるとかじゃねえと難しいぞ。お前なにが出来んの?」
腕組んでさ。さっきまでと違ってにやついてんだよ。俺が言いてえ事見当ついてんだよ、絶対。
「それに俺のコネで紹介してやってなんかあったら俺も責任問われるしな。俺もなあ、そんなリスクはちょっとなあ」
なんでにやにやすんのっ!このドS王子っ!
「…いや…あの…た、尊さんの会社…とかは…どう…ですかね…?」
そこまで言ったら。俺の勝ち!みたいな顔で見ないでよ。
「お前、前と違ってカジュアル系になってちょっとセンスあるかな、と思ったから、そう言う気になったらウチも営業補充してえのがあるから仕事教えても良いかもとは思ってたんだ」
えっ!?ちょ、それって尊さんに元々その気があったって事!?ひどっ!ドSっ!
遊びに来て良い、ってそう言う意味だったのか。
「やる気あるならいつから来ても良いぞ。ただし、バイトで」
ええっ!?バイトなのっ!?
「当たり前だ。右も左もわかんねえヤツ最初から正社員で雇う余裕なんてねえよ」
高級優遇は、甘かったっ!!
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