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アイデンティティ
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しおりを挟む高校だって。ま、受験勉強はちょっと頑張ったよ。
適当に学校行って、帰りにカラオケとか行って女ばっかのグループいたら声かけまくったりして。
同じ学校にヤンキーもいたけど、俺らとは生息するテリトリーが違ったし。
特に俺は空手の段持ちってのがあるから絡まれねえし。
適当に三年間生きてたら適当すぎて進学も就職も出来なかった。卒業出来ただけで奇跡的状況だった。
卒業してダラダラしてたら父ちゃんから毎日怒られる。
友達と遊びてえ時金くれ、つったら殴られそうになった。まあ、母ちゃんがこっそり金くれたけど。
金無くても服とか欲しいもんはあるから、バイトするべ、と思って。
ピザ屋から始まって、でも寒い時に配達すんのが嫌で辞めて。じゃあ、ずっと屋内で出来る仕事、て思ってカラオケ屋でバイト。
夜の方が時給良いからだんだんシフトが夜中心になってきて。
「ちょ、キミ!ホストに興味無い?」
て声かけられたのがその頃。最初は興味無い、って言ったけど。
保証期間に日給で一万くれるっつうから、そしたらその間だけやるか。
ホストデビューした俺。
実際。
ホストなんて、俺の大嫌いな努力と忍耐の世界だよ。俺お試し期間だから良いけどさ。
他の新人の人達なんてさ。自分より歳が下でも経験長くて売上良い人の方が偉いからさ、なに言われても言う事聞かなきゃなんねえ。
幸いな事に、掃除は業者が入ってるからしなくて良かったけど、そうじゃなかったら間違いなくトイレ掃除させられてるよ。
なんだかんだ、座り方だの酒の造り方だの教わって。
「龍二クン、この子面倒見てあげて」
マネージャーがそう言って。初めて龍二さんと会った時、龍二さんが明らかに俺見て嫌な顔した。
嫌な顔されても。
「よろしくでえす」
笑顔絶やさない温厚な俺。どうせ何日かでブッチするしな。
「…よろしくお願いします、だろ。日本語知らねえのか、お前」
いきなり怖えな、てびびったけど。ま、ちょっとの間だしニコニコしてりゃ良いだろ。くれえに考えて。
龍二さんにくっついて客んとこ行って。
客が帰ると龍二さんがあれこれ俺にダメ出しする。んで、こう言う時はこうしろ、とかなんだとか。耳の穴通り抜けるだけの俺。
店終わって帰る時にマネージャーから金もらうから、んじゃ明日ももらいに来るか。みてえな感じで。
何日かして、龍二さんと一緒にヘルプ付いた時龍二さんに指名が入って客と二人になって。
「なにか飲むの?」
って聞かれて、飲んで良いのかなあ?龍二さんには客ボトル飲めって言われたけど、客が言ってんだから良いのかなあ?って。
「じゃあ、ジンライムう!」
飲みたかったから。そんだけなんだけど。
「悪いね、待ったろ?」
龍二さんが戻って来たのかと思った。
「うん?大丈夫」
客が嬉しそうにする。戻って来たのは龍二さんじゃなくて。
体験入店して何日か観察しててわかってた。この人は。
店で一番か二番とかって言う尊さん、って人だ。さすがの俺もどきどきした。だって尊さんの客とか知らなかったもん。
尊さんがテーブルの上の俺のグラスちらって見て、俺睨んだ。
なんだなんだ?俺なんかしたの?
客と尊さんが話してる横で。さっき俺睨んだ尊さんが怖くて。
俺はすっかり固まったまま時間が過ぎてった。
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