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偏桃体
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しおりを挟む俺のほっぺた触る白い手。
その手首を軽く握る。
ついさっき、もう良いよって。
これ以上悲しくなるのは嫌だって。
思ったばっかなのに。
俺を見上げるちいさんの顔は優しくて。
泣いてる子供あやしてるみてえな顔で。俺が泣いてるからか。
そんな風に優しくされたらホントもうわかんねえよ。
俺どうしたら良いんだよ。
優しくされたら俺きっぱりできねえじゃん。
まだ期待してる自分がいて、ホントにバカなヤツだなと思う。
こんなにバカで諦め悪くてもう死んじまえよ。
「うっ…く…」
まだ涙出るよ。恥ずかしいヤツだな。
もういっそのことしつこくして嫌われて顔見たくねえ、って言われた方がすっきりするかもな。
「祐輔…なんでそんなに泣いてるのよ。どこか痛いの?」
子供じゃねえってば。
「ちいさん…ちいさんっ」
ちいさんの首に抱きついて涙止まりゃしねえ。
俺はどうしてえのかもうわかんなくなってきて。諦めたいからなのか、まだ期待したいのか。
「ちいさん…俺の事、好き?」
って。ちゃんとそんな事聞いたの初めてだ。
ちいさん抱き締めてぐずぐず泣く俺。
俺の胸の辺りでため息つく気配。
聞かなきゃ良かった。また涙出てきた。
「…嫌いじゃないわよ」
嫌われてねえなら良かったて思うけど、じゃあ好きなの?どっちなの?
この先俺の事好きになってくれるの?
「祐輔は素直で良い子だから、私にとっては警戒しないでも良い人間の一人よ」
「うん…」
ちいさんの頭にほっぺた押し当てて。
ああ、俺の涙でちいさんの髪が汚れちまうな。
「私はずっとこの仕事してるせいかいつも他人を警戒してる。信用してないワケじゃない。だけど自分のパーソナルスペースに対して無遠慮に踏み込まれるのは嫌い」
難しいよ。それは俺の事言ってんの?
「祐輔は…初めからそんなもの無視して。踏み込んできてそれを許してしまった自分の甘さに腹が立った事もある」
「わかんないよ…俺はちいさんが好きなだけだよ…」
ただちいさんが好きで。一緒にいたくて。側にいたかったんだもん。
「…祐輔。私は祐輔よりもずいぶん年上よ」
だからなに。
「今まで生きてきた時間も環境も違う。だから私の事をちょっと物珍しく思ってるだけよ。そのうち可愛らしい彼女出来るわよ」
違うよ。違う。
「俺はちいさんが良いっ!ちいさんじゃないとやだっ。他の女とかいらないもんっ」
「…祐輔…」
なんで困った顔するんだよ。ダメならはっきり言って。
「ちいさん…歳とか関係無い。俺はちいさんがちいさんだから好きなの」
だから聞かせてよ。
「俺の事、好き?嫌い?」
ちいさんがもっかいため息ついた。
「…シンプルね。私は立場だとか状況だとか、そんなものを考えてしまう。祐輔の事だってちょっと珍しいから一生懸命になってるだけでそのうち飽きるだろうと思って」
「違う…俺ホントに本気で…」
ちいさんが顔上げて俺見る。
「シンプルに言ったら」
好きよ。
て、ちいさんが言った。
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