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偏桃体
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しおりを挟むあー、ヤバい。かなりヤバい。
ちいさんの気持ちどころか彼女出来たって思われて。
あれから忙しいのか電話に出てくれねえ。
いや、待てよ?ちいさんは俺に彼女いるって誤解してるから、彼女いるんならもう電話してくんなよ、とか思ってるから電話出てくれないとか!?
ちょ、待って!ヤバい!待ってそれヤバい!
このままじゃずっと連絡取れねえままじゃねえかっ!
あー、メールが使えれば。使えるのかな?
送ってみようかな。
彼女なんて誤解だ、って。俺はちいさんが好きだ。って。
それから俺の事、好きですか?
途中まで書いて止めた。
ちいさんに会って聞きたい。
ちゃんとちいさんの顔見て。俺は絶対どんな顔も見逃さねえから。どんな言葉も聞き逃さねえから。
好きだ、って言って嫌な顔されたら今度こそ諦めるよ。
ちいさんが帰って来る日まで、前の俺だったら浮ついて仕事失敗しただろうけど客の前じゃちゃんと仕事。
俺もちょっとはマシな男になったよな。
毎日、毎日ちいさんの事考えて。
俺の望みが叶わなくても、それは多分次に誰かを好きになる時にちゃんと役に立つから。
俺は今までちゃんと誰かを好きになった事無かったけど、ちいさんを好きになって。好き、って事がどんな事かわかった気がするから。
誰かを好きだって思う気持ち、わかった気がするから。
ちいさんの答えがどんなのでも。
聞けば俺は先に進めるから。
俺はもう泣かないから。
そうしてちいさんが帰って来る日。
空港に行こうと思ったけど止めた。
午前の便で空港に着くから、時間見計らってちいさんのマンションに。
もう帰ってるかな、と思ったけどインターフォンの返事は無い。
そのまま外のマンションの出入り口が見えるとこに座って。
前もこんな事あったな。
曇り空は雨粒落としだす。
まるであの時みてえだな。だんだん暗くなってきて。
あの時みてえに腹減ってきたよ。
けど、あの時とは違って俺の気持ちははっきりしてる。
だいぶ時間が経った頃、マンションのエントランスの前にタクシーが一台停まった。
開いたドアから。俺の大好きなひとが。
傘差して降りて来た。
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