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ドーパミン
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しおりを挟む「なんで連れて来たの」
ちいさんの冷静な声。
「んー。彼があんまり必死だったんで。会わせてあげようかな、と」
「悟らしくないね。柄にも無い」
俺は子供みてえにちいさんに抱き付いたままぐすぐすやって。
「まあ、そう判断したのは彼が自分の身は自分で守るくらいは出来そうなんで。君、なんか武道やってるでしょ?」
「…空手。黒帯」
ちいさんがちょっと息吐いた。
「そんなワケで、少しなら良いかと。俺また本部に戻りますから鬱陶しいなら連れて行きますよ」
やだっ!せっかく会えたのにっ!
「しょうがないわね」
「じゃ、また後で」
悟が出てったからちいさんと二人きりになった。
アイツ嫌いだけど、ここに連れて来てくれたから良いヤツなのかも。
「…もう、いいから座りなさい」
ちいさんが言うから。
離れてベッドに座った。
「…ホントにもう」
ため息つかないでよ。呆れないでよ。
「顔ぐしゃぐしゃじゃないの」
ティッシュで俺の顔拭いてくれる。その手首、握った。
「…ちいさんは俺が嫌い?もう会いたくないくらい嫌なの?」
ちいさんはちょっと困った顔。
俺のほっぺたに手当てて指で俺の涙拭って。
「直樹くんに伝言したでしょう」
「あんなの意味わかんねえよっ!」
ちいさんの手引っ張ってベッドに倒す。
「わかんねえよ…」
また泣きそうなって。手で眼ごしごししたら。
「ホント…バカな子ほど可愛いって困ったもんだわ」
苦笑いしながらちいさんが言った。
それからちいさんは。
「んっ……」
キスしてくれた。
優しくて唇離したくねえくれえ甘くて。
脳ミソ溶けそう。
「私は今任務上安全じゃない状況にあるのよ」
あのガラ悪いのとかに狙われてんの?
「私の近くにいてキミになにかあったら困るの。一般人のキミを巻き込むワケにはいかないのよ」
「だから近付くなって言ったの?」
「直樹くんに言われれば大人しく言う事聞くかと思ったのに」
ちいさんがくすくす笑った。
「俺…なんでなのかわかんないし、ちいさんに訳聞きたくて…」
「そうね…ちゃんと私が話してあげれば良かったね」
ちいさんが俺のほっぺた撫でる。
ホントは怒ったかもしれねえけど。こんなとこまで追っかけて来て。
「だからしばらくは我慢して」
それは仕事落ち着いたらまた会えるって事?
俺ちいさんの事好きでいても良いの?
でもちいさん。
「俺…今我慢出来ない…」
だって会えたのが嬉しくてっ!
キスしちゃったからあっ!
またちいさんが苦笑い。
「悟がそろそろ戻ってくるから」
えええ!?そんなあっ!俺、コレどうしたら良いのっ!?
ちいさんは肩すくめて。
「我慢しなさい」
て、あうう。九九唱えるしかねえか。
けど口に出したらな、間違った時恥ずかしいからな。
頭の中でににんがし、にさんがろく。
てやってたら。
「ちいさん、総務課の記録に不正アクセスがありました。ここ割れた可能性ある」
悟が戻って来た。なんか焦ってるし。
「総務課通してホテル取るからだよ」
「俺じゃないですよ、ホテル用意したの課長ですよ」
ちいさんがバタバタ荷物まとめて。
「って、どこに行くのよ。誰にもバレない場所なんてある?」
悟が俺見た。なんだよ。
「君、独り暮らしだったよね」
「悟、なに言ってる。この子を巻き込むワケにはいかないよ」
「いや、彼ならなにかあっても身は守れるし。本来ならすべき事じゃないけど状況が切羽詰まってる」
悟が俺の肩掴む。
「君、ちいさんを守ってくれるかな」
そりゃもちろん、俺は。
「なにがあっても守るっ」
「少しの間、ちいさんを匿ってくれないかな」
それはつまり。ちいさんと。
ど。同棲っ!?
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