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しおりを挟む俺が家に帰る頃が莉緒の起きる時間。
おはよう。お疲れ様。
寝る。
そんなやり取りのメール。
俺もな、別に。
自分の女だからそんなもんで良いだろ。
とか思ってるワケじゃねえんだがな。
ホントはもっと色々書いてやりゃあ喜ぶのわかってんだが。
それをしねえのが自分の性格なんだよな。
莉緒が三回メールして来て一回返信。
まあ、送ってくる内容にもよるが。
「ダメっすよお!なんでもないさりげないやり取りに気持ち込めなきゃ。返事無いと待ってる方はツラいんすよ」
とかユウが言ってた。
俺は客以外にはマメじゃねえ。
電話は毎日、家出る前にしてる。
「メール、あんま返さねえけど。お前寂しいか?」
面倒くせえから本人に聞いた。
『ん?んー…でもあたしのメールとかどうでも良い事しか書いてないしなあ…いちいち返事するほどの事じゃないの自分でわかってるし』
そうか。
『龍二の性格でマメに返事されたら恐縮するよ』
て、笑うなよ。
『返事は嬉しいけど…気を遣われて返事いっぱいされたら逆に気軽にメール出来なくなるから止めて』
笑う声が可愛いな、お前。
俺はずっとお前の事バカだと思って。
今でも思うけど。
そうやって俺の事理解して好きになってくれてんだよな。
そんなお前だから。
一緒にいてえな。
思わせてくれる。
お前って案外、良い女かもな。
「うーん…」
日曜日。
俺ん家で求人誌睨み付ける莉緒。
土曜の夜に家来て俺が仕事行ってる間寝て。
俺が帰る頃起きて待ってる。
鍵開ける音で気付くのか、玄関で待ってて。
お前は犬か。
「おかえり!」
一週間ぶりに笑う顔。
つい手が伸びて抱き締めてしまう。
で、さっきからなに唸ってんだ。
「仕事見つからねえか」
「うーん…なかなか無いんだよねえ」
別に昼間の仕事で良いだろ。
今は一緒住んでねえし、週末しか会わねえんだし。
俺に合わせる必要はねえ。
「あ、昼間の仕事だよ」
「ならバイトじゃ無くてちゃんと就職しろよ」
兄貴があんななんだから、妹のお前はまっとうに生きろ。
普通に会社員して。
なんか想像出来ねえが。OLのお前が。
まあ、探せば仕事はあるだろ。なんでそんな唸ってんだよ。
まさか、クリエイターだとか到底出来そうにねえ様な仕事したいとかじゃねえよな。
「お前なんの仕事探してんだ」
「ん?仕事て言うか、休みの条件がね」
なんだそれ。普通土日とかだろ。
「えっと、日曜と…月曜が休み、良いかな…と」
「なんで」
「日曜はもちろん休みが良いんだけど…月曜休みだったら一緒にいれる時間が長くなるから…」
赤い顔で上目遣いすんな、バカ。
そこまでして俺といたいとか。
「やっぱバカだな。お前」
「なっ、なんでっ!?」
「ちゃんと就職すんなら俺の事とかじゃなくて自分の事考えろよ」
もしかして俺と別れたら後悔するかも知れねえだろ。
別れるとか。
なったりしたら俺は。どうなるんだろうな。
「あたしにとっては龍二といられるのが一番大事なのっ!」
「…バカが」
どうなるとかは考えたくねえな。
俺は今のこの時間が。
大事に思えるから。
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