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しおりを挟む別に。
別れるワケじゃねえんだし。
会えなくなるほど遠くに行くワケでもねえ。
俺達は世間一般と違って。
普通に順序踏んで付き合い出したんじゃねえから。
俺は気付いた時にはもう。
お前はすぐ側の手の届くとこにいて。
当たり前に俺の隣で笑ってた。
毎日一緒に眠る事も。
「…なんで泣くんだ」
泣きながら抱かれんなよ。
俺が泣かせてるみてえじゃねえか。
「龍二がいないと寂しいよ…」
じゃあ行かなきゃいいだろ。
そんな事言ったら、お前混乱するだろうから言わねえがな。
「他の人…好きになったりしないで…お願いだから」
「なるか、バカ」
俺はお前しか好きじゃねえよ。
俺にはお前しかいねえよ、バカ。
莉緒の指の銀細工。
やっぱ安物だし、ちゃんとしたの買ってやろう。
ちゃんとした、っても。
そんな深い意味じゃねえけど。
将来がどうとかな、そんな大層なもんじゃねえ。
アクセサリーだ。
ショップのショーケースを真剣な顔で見詰める。
「早く選べよ」
「うん…待ってよ」
指輪買ってやる。つったら。
「えっ!?なんでっ!嬉しい!!」
こっちがびっくりするくれえ喜んだ。
まあ、指輪じゃなくて他のアクセでも良いんだが。
「決まらねえならネックレスとかにするか?」
「ゆっ、指輪が良い!」
顔赤くしながら言う。
ようやく決まったらしく店員にサイズ出してもらって。
金の輪っかに花びらと小さな宝石。
「これで良いのか?」
「うんっ!」
嬉しそうに笑うなよ。連れて笑っちまうだろうが。
家帰って早速ケースから出して眺める。
はめりゃ良いのに。
「つけねえのか」
「あ、いや…あの」
なんだよ、もじもじしやがって。
俺がはめてやりゃ良いのか?
「貸せ」
取り上げて莉緒の左手。
薬指にはめてやる。
真っ赤なるから。
俺まで顔が熱くなる。
そんな特別なもんかな。なんとなく顔見てたらキスしたくなって。
しながら。指輪って。
俺からしてみれば俺の女だって印みてえなもんだな。
そんな風に思った。
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