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しおりを挟む「龍二さんも案外ヤキモチやき」
「どう言う意味だよ」
「だってえ。彼女がお水してんの嫌だなんてえ」
ユウが変な事言いやがる。
「別にそう言うワケじゃねえ。アイツが向いてねえからだ」
向いてねえから辞めろっつっただけだ。
「またまたあ。莉緒ちゃんだから嫌なんしょ?」
意味わかんねえな。
「向いてる女だったら好きになったんすかあ?」
ユウのヤツ、時々ワケわかんねえ事言う。
家帰って。寝顔見てほっとして。
俺が水商売やらせたくねえのは。
危なくて。
俺がいねえところでなにがあるかわかんねえし。
別に好きな女だからとか。
そんなんじゃねえし。
莉緒がもうちょっと上手くやれるんならな。
上手くやれる女なら。
俺はこんな風に心配しねえし。
上手くやれる様な女なら。
自分で考えながらおかしくなる。
もし莉緒がそうだったら俺は心配しねえし、そもそも大事だとか思ったりしねえな。
だとしたら。
ユウが言う通り、莉緒だからなのかな。
自分の女だから。
嫌だなんてな。
俺は我が儘かな。
「お帰りなさい」
仕事辞めてから。俺が帰る頃にはもう起きてて。
俺は、行ってらっしゃいとお帰りなさい、を言われる様になって。
俺は寝顔見ながら寝るのに慣れてたから。
ちょっと違和感。
起きたら相変わらずメシの用意してある。
テーブルの隅に置いてある求人雑誌。
何気無く見たら。
居酒屋とか料理店とかばっかチェックしてある。
「莉緒、お前普通に仕事する気あんのか?」
なんで夜の仕事ばっか選んでんだよ。
「いや、ほら、あたし料理とか好きだし。そう言う系が良いかなあと」
「バイトばっかじゃねえかよ。ちゃんと就職しろよ」
ちゃんと昼間の仕事しろ。なんの為に辞めたんだ。
「やっ、そうなんだけど。でも」
「なんだ」
なんかもじもじしやがって。俺に言えねえ様な事考えてんのか。
久々に両手握る。
「いっ、いでっ!やだっ!言うっ、言いますっ」
俺から眼逸らして赤くなる。なに考えてやがる。
「その…昼間の仕事したら…龍二と一緒いる時間が無くなる…」
生活時間帯が違うと。
すれ違いの生活。
「莉緒、こっち来い」
「うん?」
膝に座らせて抱き締める。
「なに?」
なにじゃねえ。
俺の事考えて仕事選んでんじゃねえよ。
お前がそんなだから。
俺はお前を。
抱き締めたくなるんだよ。
女抱くのは。
男として、生理的欲求。
前はそうだった。
でも。
お前を可愛いと思ってしまうと。
お前の事を自分の身体で確認したくなる。
キスしたらいつも。
照れた様に笑う。
もう何度もしてるのにな。
最初にあんな事しやがったくせに。
俺に抱かれる時は恥じらう。
俺はまたお前が可愛く思えて。
お前が俺を怖がらねえ様に、そんな抱き方してしまう。
お前を他の男に触らせたくねえ。
やっぱ俺は我が儘かな。
向いてねえ、てのは大きいんだが。
自分の事棚に上げた。
「莉緒…」
「…ん?」
腕の中、俺を見上げる。
「男がホストしてんの、嫌か?」
ちょっとびっくりした顔する。
「んー…わかんない」
わかんないてなんだよ。
「だって…それが龍二の仕事だし…」
意外とあっさりしてんな。
「そうか」
「……」
黙って俺の顔見る。
「なんだよ」
「いやっ…なんでもないっ」
なんか言いたそうな顔しやがって。
「なんかあんならちゃんと言え」
「あ、や…その…」
両手グーの用意。
「やっ、あっ、あの…ね?」
「なんだ」
「…ホントは龍二が他の女の人と一緒いるの…やだ」
消え入りそうな声で恥ずかしそうに言う。
「でもっ、仕事だし…や、やきもちとかじゃなくてっ…いや、仕事だから」
頭抱え出す。
「他の女の人と…しちゃうのは仕事だからしょうがないよね…」
「バカか、お前」
「へっ?」
「客と寝るワケねえだろ」
ホストがみんな枕営業すると思ってんのか。
「俺はそんなやり方はしねえ」
「あ、そ…そなんだ…なんだ、ははは」
ホントにバカだな。お前は。
「俺は他の女と寝ないし」
「…うん」
「俺の事信じろよ」
「うん…」
お前しかいねえから。ちゃんと。
俺を信じろ。
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