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しおりを挟む「いいなあ、らぶらぶ」
ユウのヤツが唇尖らせる。
「いいなあ、莉緒ちゃん可愛くて。声とかも可愛いんだろなあ」
「は?お前何回もしゃべってるじゃねえかよ」
「そうじゃなくてえ。してる時の声っすよお」
なにを言ってんだ。お前は。
「えっ!?まだヤってないんすかっ!?」
「煩せえな、お前は」
ヤるとか言うんじゃねえ。そこら辺の女と一緒にすんじゃねえよ。
俺は。
「あーあ。俺も好きな女抱きてえなあ」
ヤるとかヤんねえとか。
そんなんは。
仕事終わって帰ったら。
ソファーでクマの布団被って。
ちゃんと帰って来てる事に安心する。
寝顔見ながら笑ってる自分に気が付いておかしくなる。
なんだろうな。
こう言う気分、なったことねえしな。
安心しきってる眠る顔。
俺は誰かの前でこんな無防備な顔なんかしたこと、多分無いだろうな。
俺自身、初めてかもしれない感情、少し持て余す。
寝顔このまま見てたいし、けど俺も寝たいし。
「ん…なに?」
眼覚ましたか。
じゃあ、ついでに。
抱き上げた身体、ベッドに降ろす。
キスしたら。ちょっと照れた顔で笑う。
そんな顔したら止まらなくなんだろ。
しょうがねえなあ。
女抱くなんて特別な事じゃねえのに。
いちいち反応が可愛いとか思ってしまう。
ただヤるのと抱きたくて抱くのは違うんだな。
尊さんが言うみてえに。
他の男に触らせたくねえ。
自分のもんだと思って、初めて。
その気持ちがわかる気がする。
お前を誰にも触らせたくねえよ。
持て余し気味の感情はそういうことだとオチつける。
女抱くのに、例えば愉しいとか。
身体が気に入ったからまたヤりてえとか。
ガキの頃なんかはまあ、なんでもいいからヤりてえだけだったり。
今までそんな感じで。
特にこの女が良いとか、そんなんは無かった。
俺のもんにしたくて抱くのか。
抱くと俺のもんになるのか。
わかんねえけど。
俺の腕ん中には。
俺を好きだって言う女がいて。
俺はそれを心地良いと思える。
「…あの特ノート拾ってくれて、あたしがありがとうって言ったら笑ってくれたんだよ」
小さい声で昔話を呟く。
俺はお前がありがとうって笑ったから。
思い出してみても俺は同じクラスのやつとかほとんどしゃべんなかったし。
普通にお前が俺に笑いかけた。そんだけで。
「それだけだけど、怖そうに見えるけど多分、本当は優しい人なんだろうなって…もう一回笑ってる顔見たかったけどそんなこと無くて」
そんだけのことが頭に残って。
いつの間にかお前を見る様になったんだろうな。
「ずっと兵藤くんとしゃべってみたかったけど出来なくて…兵藤くんクラス行事なんかいたことなかったし、話す機会なんか無かったけど、兵藤くんが好きだなあ、って思ってた。兵藤くんがあたしの事覚えてくれてて凄い嬉しかった」
見てたから。覚えてたんだな。
「やっぱり兵藤くん優しい人だったから…もう一回、やっぱり好きになっちゃったよ」
誤解すんなよ。俺は優しくねえからな。
ただお前がバカだから。
危なくねえように俺が見ててやるから。
俺の側から。
離れんじゃねえぞ。
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