Think about you

てらだりょう

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「石倉っ!お前起こせよっ!」

翌朝起きたらとっくに尊さんはいなくて。

後輩の俺が尊さん家泊まってんのに朝見送りしねえなんて。

「いや、よく寝てたからっ」

「礼儀っつうもんがあんだよっ」

「いでっ!ごめんなさいっ!」

こめかみグリグリしてたら。

「まあまあ。そんなん気にしなくていいから」

みのりさんに笑われた。

「石倉、お前店休めよ」

「え!?なんで!?」

ホント、バカ。

「お前、店から帰るのアイツらにつけられてっから居場所バレんだよ」

「な、なるほど…」

バカが初めて気付いた顔した。 
 
「じゃあ、みのりさん。すみません、あのバカがなんかしたらすぐ言って下さい」

出る時、門のとこまできてくれたみのりさんに言った。

「龍二くんは莉緒ちゃんの事、可愛いんだね」

みのりさんが笑った。

「可愛くなんかないですよ、あんなバカ」

「でも心配だからここまでしてあげるんでしょ?」

それは。なんつうか。

「心配で眼が離せなくて放っとけなくて…そう言うのってなんて言う気持ちかな?」

みのりさんは笑うけど。

俺はただ。

ただ。なんなんだろうな。

「莉緒ちゃん、尊さん家なら安心すね。尊さんなら最強じゃないすか」

ユウも少し安心したらしい。

とりあえずは、バカの身は安全だが。

アイツ、ホント大丈夫かな。

余計な事しなきゃ良いが。

「龍二さん」

そろそろ客層が切り替わる時間になる頃、ボーイが呼びに来た。

「すみません、尊さんが…店電に…。恐ろしく怒ってて」

やべえ、やっぱあのバカ。

『てめえっ、龍二っ!!今すぐ来やがれっ!!』

慌てて。尊さん家に。

「石倉っ!お前なにしたっ!?」

玄関出て来石倉が。

「なっ!なにもしてないよっ!」

必死に言う。なにがあったんだ。

「いや、先輩がソファーで寝てて。寝顔綺麗だなあ、と思って覗き込んだら寝返りした先輩の手が当たって…それであたしが倒れて、先輩が起こそうとして。みのりさんがそれ見てなんか怒って…」

バカにしては長いセリフ一気にしゃべった。

そんでみのりさんが誤解して出てったのか。

なんてこった。

「んで、尊さんは?」

「それが…」

リビングの暖炉の側で。

体操座りの尊さん。

なんかぶつぶつ言ってる。

「ずっとフローリングの板の線数えてんだよ、あたし怖いよっ」

「バカっ!滅多な事言うなっ、お前が大体考え無しな事するからだろがっ」

「いでっ!グリグリ止めてっ!」

ふと、妖気が漂う。

「いいなあ、お前ら仲良くてよ」

げ。瞳孔開いてっぞ。

怖すぎる。

尊さんが。なにか俺に投げて寄越した。

拾い上げると。名刺。

「ウチの弁護士だ。借金の事はソイツに相談しろ」

「あ、ありがとうございます…」

尊さんは。また暖炉の側座って。

膝抱えて。

「みのりさん…」

俺とバカはどっちからともなく眼合わせて。

ため息ついた。




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