Think about you

てらだりょう

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「案外優しいのね、龍二って」

「なにがだよ」

女がため息ついて。

「あの子、かわいそう」

変な事言った。

明け方近くに家帰ると。

クマの布団から。

「ずっ…ぐすっ…」

鼻すする音。

まだ起きてやがる。

ホテル連れ込まれそうになったのがそんな怖かったのか。

初めて俺んとこ来た時。

自分の身体、差し出そうとしたくせに。

女って意味不明だ。

「なに泣いてんだ」

「なっなんでもないっ」

なんでもないなら早く泣き止め。鬱陶しい。

「ごめんね…兵藤くん…」

「なにがだ」

「あたしがいたら彼女呼べないよね…ホテル代もったいないね…」

なに言ってんだ。

「別にあれ彼女じゃねえし。ホテル代お前に心配してもらわなくてもいいし」

「…彼女じゃないの?」

バカが布団から顔出した。

「ただのセフレ。アイツ男いるし、ヤりてえ時会うだけだし」

「そうなんだ…」

ため息ついて。

「あたしも女…ですけど」

なにわかりきった事言ってんだ。

「それよりお前、あのオヤジになんの相談があったんだよ」

「それは、その…兵藤くんには関係ないし…」

なんだと 。ムカつく。

「いっ!いでででっ!」

寝たままのこめかみ。グリグリ。

「てめえ、こんだけ俺に面倒かけといて関係ねえとはなんだ」

「いやっ!ごめっ!言いますっ!!」

手離してやったら。

起き上がって。

「…実は昼間も働こうかなと思って…あのオジサン、人事やってるからウチの会社おいでって言うから…」

だからついてったのか。バカが。

「お前最近ちょっとは稼げる様になったろ。なにも掛け持ちしなくてもいいだろ」

「いや、その…お金いるから」

前から思ってたんだが。

すぐ金もったいないとか言うし。

「お前、借金あんのか」

「えへへ…」

バカが苦笑いした。

コイツはバカだが。

金遣いは荒くねえし。ブランドもんとかも持ってねえし。

生活の仕方は地味だ。

借金て。

「いくらあんだよ」

「えーと…四百万…くらい?」

自分で把握してねえのかよ。

まさか男に貢いだワケじゃねえだろうな。

「お前、男に騙されたクチか?」

「違うよ!お兄ちゃんはそんな事しないよ!」

「は?なんで兄貴が出てくんだよ」

「いや、借金っても。あたしは保証人で…借りたのはお兄ちゃんで」

「なんで兄貴は借金作ったんだ」

「それは…なんか色々…」

いくら兄貴とは言え理由もわかんねえで保証人とかなるか。バカ。

「でもっ、ずっとお兄ちゃんはあたしの為に頑張ってくれたし、困ってるときはあたしが手伝うの当然と思うし」

このブラコン。

「で?保証人のお前がなんで昼夜働く必要があんだよ。借金してんのは兄貴だろが」

「いや、その…」

バカが言葉濁す。

両手グー。

「やっ、言う!言いますっ!」

バカはため息ついて。

「…お兄ちゃんがどっか行っちゃって。連絡取れなくなったからあたしが返済しないといけなくて」

俺の方がため息出る。

そんなんバカの更に上行くバカ兄貴じゃねえか。

てめえの借金妹に押し付けて行方不明かよ。

とんだ兄貴だぜ。

「でもね、お兄ちゃんは働いてあたし学校行かせてくれたし、その分お返しだと思って」

バカ過ぎ。

話聞いたところで。

俺が金都合してやるワケでもねえし。ま、そんな金もねえけどな。

「掛け持ちすんのはお前の勝手だがな。両方ダメんなんのがオチだぞ」

「…けど」

「お前、元々住んでたとこどうしてんだ」

「んー、そのままにしてる。家具とかもあるし」

ったく。しょうがねえな。

「じゃあ、解約しろ。今までの家賃分返済にまわせば少しはいいだろ」

「そしたらあたし、家なくなるよ」

「どうせここに住み着いてんだろが。無駄に家賃払うな。もったいねえ」

バカが。すげえびっくりした顔で。

「いいの!?あたしここにいてもいいの!?」

泣きそうな声で。

「ありがとう…兵藤くん…」

言った。



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