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しおりを挟む店ハネてから。
今日はアフターは無し。
「あれえ?帰るんすか、龍二さん」
「帰るっつうか、まあ」
「なに?女?」
ユウがニヤける。
「そんなとこ」
まあ、俺も正常な男子だからな。
それなりに生理的なもんがな。
「つか、家に女いるのに。なんでいつまでもヤんねえかな」
「ヤらねえし。ヤる気なんねえし」
「わかんねえなあ。女は女っしょ?よっぽど見た目悪いんならともかく」
言われてもな。バカを抱いてる俺なんか想像出来ねえし。
「あの人来てからもう二ヶ月近いじゃん」
もうそんななるかな。
道理で慣れる筈だ。
「俺にヤらせてくんねえかなあ」
コイツ恋愛脳おさまったからな。ただのヤりたがりだ。
「ヤりてえなら相手いくらでもいるだろが」
「そうっすけどお。龍二さんがヤんないのもったいないんすもん」
だからってお前にヤらせるか。
ちゃんと付き合うなら別だが。
そう言えば。好きなヤツいるっつってたな。
ソイツとはどうなのかな。良いヤツならな。
安心だが。
バカだから変な男にひっかかんねえと良いけどな。
って、俺は親かなんかか。
「こんだけ一緒にいて食わねえとかあ。マジ女に見えねえのか」
「あ?」
「大事なのか」
変な事言いやがんな。
「どっちすかね?」
別に俺は。
興味がねえ。
それだけだ。
「龍二、お待たせ」
上品なスーツと上品な化粧。
ただヤるだけの女。客じゃねえ。
コイツもクラブに勤めてるがお互い仕事は関係ねえ。
他に男いるしまったく身体のみの関係。気楽で良い。
待ち合わせたバーで軽く飲んで、後はお互い聞かなくてもいつものお決まりのコース。
「いや、ちょっと!違うって!あたしそんなつもりないしっ!!」
ラブホの前。
「いいじゃん、次指名してあげるし」
「いやいやいや!無理だし!」
男に腕掴まれて引きずり込まれそうになってる。
バカ。
なにをしてんだ。
このバカ。
必死の形相で。
入口の自動ドアにしがみついて。
「いやっ、ホント無理っ!!」
「そんな事言って、ここまでついて来てんじゃん」
「それはそっちが相談のってくれるって言ったからでしょっ!」
「だから中でゆっくり聞いてやるからさあ」
なんの相談だ。バカ。
「いやいやいや!無理無理っ!」
男は中年のリーマンらしきくたびれたスーツ。
ここまで嫌がってる女をヤろうってのも。みっともねえな。
俺に面倒かけんなって。
いつも言ってんのに。
「ちょっと待っててくれ」
女に声かけて。
「いい加減にしろよっ」
男が手振り上げる。
「きゃあっ」
落ちて来た平手を。
靴の裏で止める。
そのまま蹴りでも入れてやろうかと思ったが。
警察沙汰になると面倒くさい。
「な、なんだよ…」
男が怯えた顔する。
「…兵藤くん…?」
俺とバカを交互に見て。眼見開く。
「俺のダチになんか用すかね、オジサン」
「いやっ!違うっ、その娘が誘ってきたんだっ!相談あるって!」
「誘ってないしっ!!」
「別に合意の上なら俺もなんも言わねえけど」
「違うし!合意してないしっ!」
バカが半泣きの顔で俺に言う。
「そう言ってるけど? 俺も傷害とかで警察呼ばれんのは面倒くさいんだけど?」
中年リーマンは。
「いや、悪かった!なにもしてないからっ」
転びそうな勢いで逃げてった。
「……」
バカは泣き出す。なんの相談か知らねえが。
ホイホイついてくからこんな目に合うんだ。
バカ。
「ほら、立て。なにしてんだ、お前は」
「兵藤くん…」
しりもちついてんのを、腕掴んで立たせた。
泣くな。バカ。
「兵藤くん…」
バカが泣き止まねえから。
「あー、わかったから。泣くな、鬱陶しい」
腕で頭抱いた。
コイツは。なんでこう、俺に面倒かけんだ。
バカが泣き止むのを待って。
「もう帰れ。変なのに掴まんじゃねえぞ」
「えっ!?」
「一人で帰れんだろ。俺は用がある」
バカが。
俺の後ろの女、初めて気づいた顔した。
「あっ!あははっ…ご、ごめんね邪魔してっ、ありがとう!じゃあねっ」
そう言うと。後ろも見ずに。
走っていった。
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