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しおりを挟む風呂でも入ろ。
ってもシャワーだけだけどな。
バスタブ掃除すんの面倒だし。
「…なんだ。こりゃ」
バスタブに乳白色のお湯。
石倉の仕業か。
面倒くせえ事しやがるな。
俺は掃除すんのは嫌だ。
石倉にやらせよう。
でも、まあ。
せっかくだから。
「…ふう」
なんでお湯に浸かると声出るかな。
久しぶりに浸かると。
気持ち良いな。
実家出て以来じゃねえかな。
今の仕事始めて。
親は俺の事さすがに諦めた。
高校も大学も、親が泣きつくから行ったようなもんだし。
大した学校じゃねえけど。
それでもまあ、一応大卒の学歴は取れて。
地場の会社就職した時は親も喜んだ。
バカ息子がやっと一人前なった。ってな。
けど。
半年で会社辞めた。
仕事面白く無かったし。
そこいら辺で親は諦めてたな。
俺が家出る時はもう。
なんも言わなかった。
それから実家には帰ってねえ。
向こうからも別になんも言ってこねえ。
どうでも。いいけどな。
「どうだった?登別の湯!コンビニでついでに買ってみたの」
風呂から出ると待ち構えてたような石倉。
「うん、まあ。良いんだけど」
「なに?」
「俺は風呂掃除はしたくねえ」
「…やらせて頂きます」
石倉がうなだれてバスルーム行った。
アイツが勝手にやった事なんだから。
アイツが掃除すんのが正しい。
さて。
仕事しないとな。
仕事用の携帯でまず営業メール。
一日三人は指名確保したい。
今日遊びに来て。
とかそんな直球のメールはバカのやる事だ。
客の方から会いたいと思わせねえとな。
だから下らねえ内容でも客からのメールは小まめに返す。
ソファーでメール打ちながら視界の隅。
ソファーの端っこに畳んである毛布。
ああ。そうだったな。
布団。
買いに行かなきゃな。
けど石倉どうすっかな。
一人で部屋置いといて変にいじられんのも嫌だな。
一緒につれていくしかねえか。
「石倉、出かけるぞ」
「えっ!?」
携帯弄ってた石倉がびっくりした顔上げる。
「出かけるぞ」
俺の言葉にバネが急に動いたみたいに。
慌てて化粧道具漁り出す。
「化粧とかいい。行くぞ」
「えっ、だってデートに素っぴんとかっ」
誰がデートだ。
両手グーでこめかみ。
「いでっ!!」
グリグリ。
「誰がお前とデートって言いましたか。このやろう」
「いでっ!言ってないですっ!間違えましたっ」
「買い物行くだけだ。さっさとしろ」
「はいぃっ」
マンションから通りに出てタクシー拾って。
「どこ行くの?タクシーで買い物!?お金もったいないっ」
煩えな。
黙ってろ。
バスとか乗るのだりぃんだよ。
タクシー降りて。
ドンキーがびっくりすんだかびっくりしたドンキーがいるんだか。
どっちでもいい。
店ん中入って寝具のコーナーに直行。
「石倉、よそ見すんなっ!ちゃんとついて来いっ」
ちゃちい加湿器を眺めてた石倉が慌てて走って来る。
「なに買うの?」
「布団。ほら、選べ。お前が使うんだし」
すげえびっくりした顔で。
「あたしのっ!?」
「毛布だけじゃ寒いだろが」
「いや、いいよっ!お金無いし!!」
別にお前に買えとは言ってねえだろ。
「買ってやるから好きなん選べ」
「いいのっ!?嬉しいっ!」
石倉がいきなり抱きつくから。
よろけた。
別に。そんくらいで。
喜ぶ事ねえだろ。
石倉はハチミツ抱えたクマの絵がプリントしてある布団選んだ。
会計して帰ろうと。
後ろ見たら石倉がいねえ。
どこに行きやがったんだ。
あのバカ。
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