10 / 86
02
2
しおりを挟む目覚ましは滅多にかけねえが。
大体決まった時間に眼が覚める。
「……」
なんか違和感。
空気が違う。
コーヒーと食いもんの匂い。
なんだ?
「あ。起きた?」
石倉の笑う顔。
昔と変わんねえな。
俺はなんで石倉の笑う顔覚えてんだろう。
しゃべった事無かったのに。
3年間、同じ教室にいた。それだけなのに。
「おはよっ!って昼過ぎてるし」
「ああ…おはよ」
起きたら。
テーブルの上にコーヒーとなんか入った皿。
「ご飯、食べて!」
俺は朝メシは食わねえんだが。
同伴でメシ食うし。
アフターも飲み食いすっから。太る。
「いや、俺メシは…」
「なに言ってんのよ。朝ご飯食べないと脳が働かないんだよ!食べて!」
面倒くせえ。
旨そうな匂いはすっけど。
「なんでため息つくのよ」
石倉なりに。礼のつもりなんだろうが。
正直、面倒くせえ。
「食べないの…?」
困った様な顔する。
マジ。面倒くせえな。
「なにこれ」
テーブルの前でスプーンで皿の中身つつく。
「卵のリゾット。胃に優しいよ」
「ふうん。ウチ、卵とかあったっけ?」
「コンビニで買ってきた。スーパー近くにあれば良いのに。コンビニって高い!」
おばちゃんか、お前は。
スプーンで掬って一口。
石倉の期待に満ちた顔。
「…旨えな」
うん。期待してなかったけど。旨い。
「やったあ!」
ガッツポーズの石倉。
「お前、料理上手いんだな」
「えへへー」
ニタニタすんな。
「自炊は中学校の頃からしてるからね」
へえ。そうですか。
「お兄ちゃんに美味しいもの食べさせてあげたかったから、頑張ったんだ」
「お兄ちゃん?」
「10歳上なんだけど。優しくて、いっつもあたしの事考えてくれて。そんで…」
コイツ。
ブラコンだ。
「お兄ちゃんはね、あたしの事凄い可愛がってるから。莉緒が幸せになるまで見届けるとか言って、彼女も作んないで」
お前の兄ちゃんとかどうでも良い。
「お兄ちゃんが頑張って高校行かせてくれたから、あたしも頑張ってお兄ちゃんにお返ししなきゃなんないの」
高校、って。
「お前。親は」
「いないよ。中一の時二人共死んじゃったから」
そうか。それは。
「悪い事聞いたな…」
「でもね、お兄ちゃんが仕事頑張って短大まで行かせてくれて。それでね」
いや、もう良いって。
そんな兄貴がいるんなら。なんで。
「お前、兄貴んとこ行けば良いじゃねえか」
「……」
兄貴のハナシではしゃいでた顔が。
暗くなる。
「今…連絡取れなくて」
なんでだ。
「時々電話くれるけど…仕事であちこち行ってるから」
「携帯ぐれえ持ってるだろ」
「わかんない…」
なんだそれ。
可愛い妹なら連絡先くれえ教えるだろ。
「おま…」
おっと。
客から電話だ。
「黙ってろよ」
石倉がぶんぶん縦に首振った。
「はい、龍二です。どうしたの?」
『あのね、今日の約束の時間ずらせるかしら?残業なりそうなの』
「良いよ。仕事大変だね。頑張ってる人好きだけど頑張り過ぎないでね」
『龍二優しい!じゃ何時にする?』
「そうだな、俺は何時でも…」
いきなり。
けたたましい着信音。
石倉が自分の携帯お手玉する。
『…なに?』
「ああ、今外なんだよ。隣いる人がさっきから携帯煩くてさ」
どうにか誤魔化して電話切った。
「…石倉あ」
「やっ、ごめんなさい!鳴ると思わなくてっ」
「てめえも水商売してんだろが。マナーにしとけよ」
「やっ、ホントすいません!なんで三白眼なんすかっ!なんで手グーなのっ」
石倉のこめかみ。
「ぎゃあっ!いでででっ!!」
グリグリしてやった。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

Play With Me
てらだりょう
恋愛
彼女欲しい。
別に、やれる相手になんかとある不自由してない。恋、してえんだけど、恋ってどうやったら始まるんだ?好きな女ってどうやったら出来るんだ?
適当に生きてきて適当に夜の世界で生きるユウ、生まれて初めて本気で好きになった人は年上のミステリアスな美女。彼女のために成長するとある男の子のお話。
You Could Be Mineのサブキャラ、ユウのお話です。
※本作は10年ほど前が初出の作品です。当時の改訂版となりますが、設定などは初出当時のまま使用しておりますのでご理解、ご容赦のほどお願いいたします。

隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる