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しおりを挟む髪セットしてて服は自前。
仕事終わりのキャバ嬢ってちぐはぐ。
店にも来るけどな。
金離れ良いから客としては好きだ。
個人的には好きじゃねえ。
化粧濃いのがな。
あんま好きじゃねえ。
石倉、昨日はドロドロだったけど。やっぱ化粧濃いな。
ソファーに座る俺の前に。
なんでか正座してやがる。
俺がしろって言ったワケじゃねえんだが。
まあ、理由くらいは聞いとこうと思って。
「それは聞かないで」
の、一点張り。
ため息出る。
面倒くせ。
「もう良い…」
「ごめんなさい…でも」
石倉が顔上げて。
「その代わりなんでもするからっ!」
「別に良い。お前風呂入んだろ。俺寝るし、適当にしてくれ」
「うん…」
バッグの中ごそごそやって。
着替えやらなんやら持ってバスルームに行った。
さて。どうしたもんか。
布団がな。
ねえんだよな。
クローゼットから使ってない毛布出して。
エアコンつけときゃ寒くねえだろ。
寝る場所は。
ソファーかベッドしかねえが。俺はベッドで寝たい。
じゃないと疲れ取れねえし。
俺の身体じゃソファーは寝苦しい。
石倉はソファーでいいだろ。
勝手に押し掛けて来たんだし。
文句言ったら叩き出してやる。
女だからって。
自分の寝床提供してやるほど。
俺は優しくねえからな。
バスルームから石倉が出て来て。
「…兵藤くん」
なんでバスタオル一枚なんだよ。
「着るもんねえのか?」
「…そうじゃなくて」
俺の前で。
タオル落とす。
「あたし…お礼出来る事無いから、他に…」
「……は?」
「代わりに…好きにして良いから…」
セット落とした薄茶色の髪は。
真っ直ぐで。
まだ濡れてて。
胸の膨らみにちょっとかかるくらい。
化粧落ちた素顔は。
昔とあんま変わんねえな。
胸はまあ、昨日揉んだけど。
でかくも無く小さくも無く。
腰細えな。
肉感的じゃねえが。
抱き心地は悪く無さそうだな。
見かけだけじゃわかんねえけどな。
両手を。
石倉の顔に伸ばすと。
石倉がゆっくり眼を閉じる。
キスはまあまあ上手かったな。
けどな。
「いっ!いでででっ!!」
ゲンコツで石倉のこめかみ。
グリグリしてやった。
「いでっ!なっ!なにっ、痛いっ」
「お前は俺をなめてんのか」
「えっ!?いでっ!違うっなめてないですっ!」
グリグリ。
「ぎゃあっやめてっ!いだいっす!!」
「なめてんだろが。謝れ」
「えっ、はっ!?ごっごめんなさいっ!!」
手え離してやったら。
踞ってこめかみに手当てる。
「あのな」
「はい…」
こめかみ揉みながら。
涙ためて俺を見上げる。
「お前、いつもこんな事してんのか」
「え、いや…その。お世話になるならお礼をと。あたしお金無いし…」
「だから身体で払うってか?」
ったく。
「バカか、お前は」
「…へ?」
「泊めてやる代償を払えとか言った覚えはねえぞ」
「…でも」
「置いてやるからさせろ、とか鬼畜じゃねえし」
石倉が涙こぼす。
「ヤりてえんなら他の男んとこ行け」
「兵藤くん…」
「なんか着ろ。風邪ひく」
「うっ…ん」
「泣くな。鬱陶しい!」
「はいっ!」
石倉がパジャマ代わりらしい服着たの見届けて。
電気消して寝た。
「くしゅっ」
くしゃみが聞こえたから。
起きたら布団買いに行くか。
と。思った。
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