You Could Be Mine ぱーとに【改訂版】

てらだりょう

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そろそろ、バイトさせてるユウをどうにかしたいんだけど。

アイツもな。

電話番頑張ってるのは認めてやるけど、昼から出勤して来て営業の仕事覚えよう、てのは甘えんだよな。

ウチの会社は物流部以外は新卒採らねえ。

営業はほぼ中途。

見た目が良くて、厭味なく喋れて、判断力がいる。

店舗営業も店頭のボディのコーディネートから陳列の見せ方まで、センスがいる。カラーコーディネートの資格は最低持ってる。

ポップの制作やらは事務に一人DTPの担当がいるけど、原案は営業が出す。そこもセンスいる。

売上を上げるためとか、顧客サービスだとか、新規顧客獲得だとか、ショップスタッフの意欲の向上だとかあれこれ企画立てねえといけねえ。

買取営業はまた違う。

色んなブティックにウチの商品を買い取ってもらう。

新規開拓もしなきゃなんねえ。

営業一人の信用商売に近いところがあるから、商品を買ってもらって売れなかった、じゃ話になんねえ。

シーズン毎に開く展示会でブティックの顧客を招待して、買ってもらう商品を見てもらうけど、営業はシーズンの売れ筋とそれぞれのブティックの色を判断して商品を勧める。

自分の顧客と商品と流行を把握してねえと難しい。

商品だけじゃなくて、繊維の特性とかも知識がいるんだけどな。

まあ、この繊維はこう言う感じの肌触り、とかわかってないとな。

俺は今は営業の統括だから、たまに店舗見て回るくらいだけど。

やっぱ、俺も一から営業はやった。俺の場合は会社の仕事把握するためだったけど。ま、事務も物流も全部やったけど。

仕事覚えて正社員なりたいなら、言われた事だけやるんじゃなくて自分から積極的に意欲見せて欲しいとこなんだよな。

ただでさえ、俺の後輩、っつう旗がついてんだから。

仕事出来ないヤツを、簡単に社員には。

してやれねえんだよな。

そんな感じで、俺が直接ユウの面倒見るワケじゃねえし。

けど、少し強引にでもやらねえと、アイツずうっと電話番してそうだし。

んで、まあ。買取部のエースに教育任せようと思ったんだよ。

「俺が面倒見るんすか?新人教育とかやった事ないんすけどねえ」

「香田の仕事ぶりだったら着いて回るだけでも勉強になると思うんだよな。なんつっても、全営業のホープなワケだし」

「いやいやいや、専務。おだててその気にさせるとか、ホストと客じゃねえんだから」

と、香田が笑う。コイツは俺と同じ年で、元ホストだ。母さんには隠してるみてえだけど、俺は顔そのもの知ってたしな。

俺がまだてっぺん目指して頑張ってた頃、一時代築いてた有名なホストだ。

コイツが結婚して街から卒業した後、俺がてっぺんになった。

「んもお、その代わり、使えねえと思ったらその場で破棄っすからね」

「ま、それで良いから頼むよ」

昔はもっと、嫌なヤツだと思ってた。道歩いてても、俺がそこ通るんだからお前退けよ、みたいな感じのヤツだったからな。

「さっちゃん、元気か?」

「あー、もう元気っすよ。また仕事でケンカして携帯壊してましたよ。すぐ携帯投げつけるから困るんすよねえ。床に投げるからもう、俺がダイビングキャッチだけど、俺おかげで瞬発力つきましたね」

香田の奥さんは一回り年上。でも上手くやってる。

昔は派手な暮らししてたのに、今は奥さんと二人で静かに暮らしてる。給料だって歩合制じゃねえし。

「いくら着飾ったって、着てる人間の本質は変わんねえし。他人に羨ましがられる様な生活したって自分に見合ってなきゃ疲れるだけだし。三度のメシがちゃんと食えて、毎日嫁の顔が見られたら俺はそれで充分幸せ」

て、前一緒に飲んだ時に言ってた。なんでそこまで変われたのか、そりゃやっぱ奥さんの存在なんだろうけど、一回ゆっくり話聞いてみてえな。

俺は年も一緒だし、前職も同じだから、他に誰もいない時はタメ口でも構わねえよ、って言ったけど。

「いや、ダメっすよ。上司と部下なんすから。馴れ合った口の聞き方してると、人前でもうっかり出たりするから」

とか、常識もある。

そんなら、普段の言葉遣いもちゃんとしろよ、って思うけどコイツのキャラだから良いかと思っちまう。

俺が会社で一番信用してるヤツ。ユウの事も任せられる。

家に帰ると、俺の愛する家族が待っててくれる。

「お腹がすいた」

俺のご飯を。いや違う。俺の事を。

「みいくんは今日のお昼ご飯残さないで全部食べたんだよ」

みいくん抱っこしてみのりさんが笑う。

「すごいねえ。みいくん、美味しかったあ?」

みいくんに笑いかけたら、みいくんが手振る。

なんで、ばいばい?

「みいくん!ばいばいはパパがお出かけの時にするんだよ。もう帰って来たからばいばいは無いんだよ」

ばいばい。

「みいくん、違うってば」

俺の必死さにみのりさんがけらけら笑う。こんな事も幸せだと思う。

愛する事も、幸せだと感じる事も。

人によって違うから、ずっと会社のために生きてきた母さんも。

自分の幸せの形を作っても。

良いんじゃないか、と思った。




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