You Could Be Mine ぱーとに【改訂版】

そのじゅうはち

そのじゅうはち-14

謎の行事。

餅踏み。

巨大な餅が用意され、我が家の和室に両家の親が揃う。

別の地方では餅を背負わせるかしいが。一升餅だぞ。重かろうに。

尊は何日も前からこの日のための料理を考え、みいくんはまだ食べられないけど素晴らしく凝ったケーキを考え。

一升餅は老舗の和菓子屋さんへ発注し。

みいくんはきらびやかな錦の羽織を着せられ、足には小さな草鞋を履かされた。

なんと、家にカメラあるのに。

「三人でちゃんと写りたいから」

と言う尊が写真屋さんまで呼んだ。

お祝いは身内だけでやるものだから、ウチのおとんとおかん、それから瞳子さん。

今は会社でも普通に会話してるらしき瞳子さんと尊。

「各務も来たいなら来て良い」

尊はそっけなくあたしに言った。

瞳子さんとはあれ以来会ってないらしい。各務先生が忙しくなった、って言うのもあるんやろうけど。

『ありがたいけど、今回は遠慮しとくよ。だってみのりちゃんの御両親がびっくりなさるよ。俺もちょっとヨーロッパに取材の予定あるし』

各務先生は思慮深い。

身内の祝いにいきなり顔出せば瞳子さんが困るし。尊としては、身内の祝い、に来ても良いってつもりだったんだろうけど。

『あ、ねえ知ってる？パンダの生殖器って小さいらしいんだけど、本来生殖器って人間も含めてより妊娠可能な位置に精液が』

ちょっと知らん間に変態話題が復活しとる。

『…って、まあ生殖は本能的な行為だけどね、人間以外にも本能以外の親子の情、って明らかにあるんだよね』

「まあ、そうですね」

『俺は尊クンと違って、ホントに親子の愛情なんて知らないけどね。避妊に失敗して出来ただけで父親に金以外もらった事無いし、家に来ても殆ど顔見たこと無くてテレビで顔覚えたくらいだし』

嫡子でない立場の子供。その気持ちはあたしにはわからないけど。

『母親は父親が離れていかない様に自分磨きに熱中してたし、俺は通いのお手伝いさんに育てられたから』

だから、各務先生は優しいお父さんになりたいんだな。

『ちゃんと愛されてるのにわからないとか、俺からしたら贅沢なの』

各務先生が笑いながら言った。

各務先生は。瞳子さんの気持ちを尊にわかって欲しかったんだな。

各務先生のほうが大人だな。

なにはともあれ。

「ほうら、みいくん。うんしょ、して」

草鞋掃いた息子が餅に蹴り入れる。

蹴り、やなくて餅の上に立つのだ。息子よ。

尊がみいくん持ち上げながら何度も挑戦して。やっと餅の上に両足揃える。

「あ！今だっ！奥さん、にっこりして！行きますよーっ！」

写真屋さんの構えるカメラににっこりして。写真はフォトフレーム用と記念用のでかいサイズで頼んだ。

その後はケーキと尊の料理で宴会して。

水原満、一歳。

の、行事でございました。