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そのじゅうはち

そのじゅうはち-12

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ホントは。

声上げて泣きたかったのかもしれない。でも。

枕に顔押し付けて、ハナ啜る音が聞こえる。

腕が重くなったな、と思ったらみくんがすやすや寝てた。

「どこ行くの」

立ち上がろうとしたあたしの腰を尊が押さえる。

「みいくんベッドに寝かせてくる」

尊が起き上がって、眼こすりながらあたしの腕の中覗き込む。

まだ泣きながらも手伸ばしてみいくんのほっぺたを撫でた。

みいくんベビーベッドに寝かせて、またベッドに座ったら。

手の甲で涙抑える尊の姿は子供みたいに見える。

「うわ!」

泣いてたかと思ったら両手でベッドに押し倒された。コ、コイツは。

心ゆくまでキスしたら。

「みのりさん、大好き。愛してる」

唇を移動させながら何度も繰り返す。

全く、コイツはこれしかないのかと思いつつ、付き合いの良いあたし。

「みのりさん、母親、ってどんな気持ち?」

聞かれてもあたしは、母親歴数ヶ月で満足に母親業出来てないし。母親の気持ち語るなんぞおこがましい。

でも、尊が聞きたいのはそんな事やないね。

「みいくんがいて幸せだと思うよ」

「うん」

「みいくんの事、とても大事だよ」

「うん」

「みいくんともし離れ離れになっても、いつもみいくんの事考えると思うよ。ずっと、ずうっとみいくんの事愛してるよ」

「仕事してても?」

仕事中はあたしはかなりの集中力がいる方やから、そこは自信は無いが。

「うん。いつでも」

尊が真っ赤になった眼から、またぽたぽた涙零して。

「…うん」

あたしの頭の横に突っ伏して泣くから。

あたしは尊をぎゅう、っと抱き締めて。

「尊は愛されてきたんやから…わかってあげようよ」

頭撫で撫でしてやった。

「…うん…」

尊の声は枕に吸収されて小さくなる。

瞳子さんは瞳子さんなりの愛。自分が作った会社を息子に遺すために、大きくするために頑張って、それは瞳子さんにしか出来ない想いのカタチ。

あたしは四六時中みいくんと一緒にいるけど、だからと言ってそれが正解だと決められるワケやない。

正解なんてわからない。

愛することに正解なんて無いから。

想うカタチはたくさんあるから。




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