You Could Be Mine ぱーとに【改訂版】

てらだりょう

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そのじゅうはち

そのじゅうはち-8

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ふわり、と。視界の端っこで。

白いレースのカーテンが風に煽られて揺れる。

そろそろ窓閉めようかな。

みいくん抱っこして、揺れるカーテンに近付く。

あたしはただ、その場にいたくなかっただけかもしれない。

「瞳子さんは自分の人生賭けて会社を作り上げたんだ。わかってくれ」

そのまま、窓のそば。背中で会話聞くあたし。

「そんな事わかってる。息子犠牲にして作った会社だからな」

尊の投げやりな声。

「わかってないよ…今の時代と比べて、女性が若くして一人で起業するなんて、どれだけのものか」

「会社をここまでにしたのは凄いと思ってるさ。だけど自分が好きで始めた事だろ」

庭の芝生は、尊がこまめに手入れしてるから青々として。

柔らかな陽の光が降り注ぐ。

「それでも、男社会の当時でどれだけの苦労があったか、キミはわかってない」

「………」

「瞳子さんは笑い話で俺に聞かせてくれたけど、ホントは笑えるような話じゃないよ」

「準一郎くん……」

瞳子さんの声は震えていて、泣いてるかもしれないと思った。

「今みたいにネットで販売実績なんか作れる時代じゃない。販売実績の無い会社はブランド側が信用しない。信用力つけるために、ブランドが商品おろしてくれるまで仕入れだってそれなりの金額がかかる。それを小さなお店で手売りするところから始めて人脈作って業界の地位昇る…それは努力なんて、生易しいものじゃないんだよ」

「……俺には関係無い」

「女性だからと言うだけで下に見られる。下心で取引を持ちかけられる。そんな中で頑張ってきたんだよ」

女性企業家なんて、その当時は女性の管理職もまだ少ない時代に、言うに耐えないご苦労があったんだろうと想像に難くない。

「最初は全部買い取りから始めて…仕入れの資金や維持費確保する為に食事さえままならない事も、あったそうだよ」

身体半分壁にもたれて片目の端でリビングを振り返れば。

床に座ったままの各務先生。

泣いているのか、泣き出しそうなのか両手で口元覆う瞳子さん。

そして、立ち上がった時のまま各務先生見下ろす尊。

各務先生が少し、顔上げて。

「仕入れの資金は手を付けるワケにいかない、維持費やスタッフの給料は出さないといけない。瞳子さん自身の生活もままならない。そのままじゃキミに満足な食事もさせてあげられなくなるから…キミを実家に託したんだよ」

とても、大事な事を静かな、静かな声で言った。




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