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そのじゅうろく

そのじゅうろく-13

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「あうーばうっ?」

ラックのテーブルに突っ伏して。

「うわあんっ」

なぜか、声上げて泣きたくなり。泣きながら自分の無力さを思いながら改めて泣けてくる。

「うー?」

ラトル持った小さな手であたしの頭ぽんぽんするみいくん。ラトルの鈴がちりちり鳴る。

あたしはなにも出来ないから。こんなあたしが母親でみいくんがかわいそうになる。

そう思ったら、また泣けてくる。

「うーあんっ、ばぶっ!」

激励するかの様な息子の声。ママはダメなんだよ、みいくん。

「うえええんっ」

既に人間としてもダメな気がして涙が止まらない。

「ただいまあっ…みのりさんっ!?どうしたのっ!?」

びっくりする尊の声。なんだ、今日は早いな。

「ぶっ、うーっ!」

「うん?どうした、満?」

もうあたしはダメやから、父と息子二人強く生きて下さい。

「どうしたの?みいくんが心配してるよ?みのりさん」

顔上げたら尊が心配そうにしてて。しゃがんであたしのほっぺたの涙、両手で拭って。

「…あたしダメ人間やから。家事も仕事も出来んから。ダメ人間に育てられたらみいくんがかわいそうやから」

「もう、どうしたのかな?俺の可愛い奥さんは。誰がなんて言ったって、みのりさんは世界中で一番の俺のお嫁さんだよ。それから、世界中でたった一人の満のママだよ」

誰もなにも言ってないけど。

自分のダメさをダンナにぶちまける。

「ごめんね、みのりさん」

なぜに謝る。

「俺のためにそんな風に考えさせちゃって、ごめんね。みのりさんは自分の出来る事、出来る分だけしてくれたら良いんだよ」

「でも。あたしなにも出来んもん」

「満のママ、って世の中で一番大変な事してるじゃないの。満の事優先してるから仕事が手につかなくてストレスなって自分がダメな気になってるんだよ。満を一番に考えるのはちゃんとママやってる証拠だよ」

でも、でも。仕事と両立も出来んし、家事もほったらかしやし。

「みのりさんがそんな風に落ち込むくらいなら今まで通り俺がやるし。みのりさんはなにも出来なくないよ?いてくれるだけで俺の事幸せにしてくれるのに」

どこまでもあたし甘やかすダンナ。

「いっぺんに色んな事やろうとしちゃダメって言ったでしょ。ストレス抱えて育児するのは良くないよ?仕事ももうちょっと先で良いんじゃない?焦ってなんでもやろうとしないで」

でも、今あたしが仕事しないとさ。尊の負担がさ。

「会社の方は、落ち着いたから大丈夫だよ」

なにっ!?

「ほ、ホントにっ!?」

「うん。こっちから送った粗悪品の現物出して交渉したら向こうが返金する、って形で話がついた」

思わず尊にしがみつく。良かった、会社も家もこのままで。

「なんかせっかくだからちょっと観光して帰るってさ。母さんと各務」

ご飯食べながら。久しぶりの家族揃っての夕食。

「今度、二宮のお母さんにみいくん見てもらって二人でどっか行こうか。ウチの母さんじゃみいくんの面倒多分見れないからさ」

とか。

「みいくんの離乳食、今度の休みから初めてみようかな」

とか。和やかに過ごしてたのですよ。

ワタクシ達を揺るがす大事件がまだ控えてるとも知らず。




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