You Could Be Mine ぱーとに【改訂版】

てらだりょう

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そのじゅうろく

そのじゅうろく-10

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朝。

「…じゃあ、行ってくるからね」

涙のお別れもいつもなら鬱陶しくて蹴り出すところであるが。

心ゆくまで付き合う。

大事な大黒柱やからな。やはりココロの支えとならねばな。

尊送り出して。朝ご飯の後片付け。

一晩、隣で眠る尊見ながら考えた。尊のためにあたしが出来る事は無いものか。

会社の事はよくわからんし、だいたいがアパレルの業界の事なんかわからん。

どうすれば良いものか考えて出した結論。

後片付け終えて、他の事する気にもなれずじりじりと時間が過ぎるのを待つ。

そして。

時計の針が時刻打つと同時に携帯の発信ボタン押す。

コール音聞きながら心なしか緊張するあたし。

出ない。まだ寝てるか?いや、彼に限ってそれは無いはず。普通の業界人は昼前に出社して夜中に帰るけど、この人は性格ゆえか朝出勤して夜、もしくは夜中に帰る。

彼のおかげで夜型から昼型になった方々も多数。

『…お疲れ様です』

しつこく鳴らすコール音が途切れ。

朝からトーン低いな、相変わらず。

「あっ、どうもおはようございますっ」

『…どうなさいましたか?朝からお電話頂くとは珍しい』

それは遠まわしに、ちゃんと朝起きてるんですね、と聞こえますが。

「すみません、松本さん。ちょっとお話が…」

あたしが出した結論、それは。

『執筆を再開なさるんですか?大丈夫ですか?』

あたしも仕事すればいいやん。ってな。

もし最悪会社が潰れるような事があっても、多少の蓄えはある。今まで尊の収入だけで生活してるからあたしの稼いだ金はほとんど手つけて無いし。

でも、今後のもしもに備えてあたしも仕事して稼げば尊の負担も軽くなるはず。

ただ、ホントはみいくんがもう少し大きくなるまで産休するつもりやったんやけどな。

いつまで、とははっきり決めてなかったけど。一年くらいかな、とはぼんやり思ってたんやけど。

ちょっと予定より早まっただけさ。

『僕の一存ですぐ掲載枠取れるワケでは無いですが…満くんは大丈夫なんですか?お仕事中どなたか面倒見て下さるとか?』

「あ、いや…その辺はなんとかなります」

どなたも面倒見て下さらんが。他の作家さんの中にはご結婚、ご出産ときてなにごとも無かった様に休む事無く連載続けていらっしゃる方もおられる事だし。

それならあたしだってやれるはず。

みいくんだって四六時中抱っこしてるワケや無いし。

『先生の復帰は読者に望まれてるところでもありますし、早期に連載再開して頂けるのはありがたいですが』

「はあ…」

『会議かけないと決められないので』

むう。やはり単純に、んじゃ来月号からで、とかはいかんか。原稿料が欲しいんだが。金の亡者みたいやな、あたし。

とある大先生が昔ご家族の借金返済のために書きまくった、て話聞いたことあるけど。気分的には同じ感じ。借金は無いけどな、今んとこ。

『とりあえず執筆頂いて、原稿送って頂ける状態でスタンバイなさっておいて下さい』

「わっ、わかりました!よろしくお願いしますっ」

返事は保留だがしかし。

原稿を、書くのだっ!




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