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そのじゅうろく
そのじゅうろく
しおりを挟む「みいくん、頑張ったねえ。パパもみいくんの一番良いお顔見たかったなあ」
飛行機の中、膝にみいくん抱っこする尊。
「あーうっ」
「ん?あれはCAさんだよお」
CAのお姉さんが通るたびにいちいち反応する息子。
飛行機乗る前、二人隣の席と残り一人ずつの席で。
「えー、俺瞳子さんとお話したい」
「ふざけんな。俺とみのりさんとみいくん一緒で母さんとお前はばらばらで良いだろ」
とか、取り合いしてたが。瞳子さんの。
「大人気ない…」
呟きで尊が勝った。
みいくんあやしながらも時折暗い顔する。
搭乗前に聞いたところだと、最近取引始めたイタリアのブランドはいざ入荷してみると粗悪品が多かったらしい。
入荷すると、検品するんだが検品したほとんどが縫い目が粗かったりレースが破れてたり小さい穴が開いてたり。
これじゃ売り物にならん、と返品したところ相手方から契約違反であり訴える、云々。てなってるらしい。
内容がよくわからんので瞳子さんも尊も困ってる。
こう言う時、ってどうしたら言いかわからんからあたしも困ってる。
みいくんつれたまま飛行機降りたその足で会社へ。
1階のショップの看板も落ち、ほとんど人の気配も無くなった社屋。
社長室の瞳子さんのPC起動して。
問題の文書と契約書開いて各務先生がぶつぶつ。
「…つまり、完全買取の契約なんですね…向こうからすると返品とそれによる返金の義務も無い。なのでいきなり商品を返品してくる事は何事だ、これは契約違反である、と。返品時になにか文書つけました?」
「あ、ちょっと待って…このメールを送ってるはずよ」
普段の変態さの欠片も無く真剣にパソコンの画面見る各務先生。
「うーん、商品を新しいものと交換してくれ、となってますが…この契約には商品の交換と言う条項は無いですね。買取のみの契約になってます」
「えっ!?交換はあったはずよ!?」
「契約の時、瞳子さんが直接相手方と交渉しました?」
「いいえ…英語の出来るイタリア人のデザイナーに通訳してもらったわ」
各務先生が腕組んでため息つく。なにが起こってるんだ、一体。
「二重に通訳すると言葉の言い回しなんかで間違いが起こる事もあります。そのデザイナーの英語のレベルにもよりますが。せめて英語の出来るイタリア人の弁護士に頼むべきでしたね」
瞳子さんが頭抱える。
「うー?」
重苦しい雰囲気の中、みいくんの笑顔が場違いに見えてしまう。
「…尊、あなたしばらく私の仕事代行しなさい」
「え?」
ちょうどみいくん抱っこしようと手伸ばしてた尊がびっくりする。
「訴えられる前に今の契約撤廃して新しく契約しなおす。すぐにイタリアに行くわ」
「僕もご一緒させて下さい」
各務先生が瞳子さんの前に立つ。
「でも」
困った顔する瞳子さん。
「僕は法律用語も多少はわかるし、現地で信頼出来る弁護士探すのもお手伝い出来ます」
各務先生と二人きりなんぞ任せていいものかどうか。
でもこの場で一番頼りになるのは各務先生しかいないし。
自分の仕事ほったらかしてまで瞳子さんのお手伝いなんて、ホントに本気で瞳子さんの事が好きなんだろなあ。
とか。あたしはまだまだのん気に思ったり。
応援ありがとうございます!
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